Furry Lewis – Furry Lewis (1960)
伝統的なボトルネック・スタイルのギターと豊富なレパートリー。ストリートとメディスンショウたたき上げのブルースマンFurry Lewisの演奏はカントリー・ブルースの歴史そのものだ。フォークウェイズ・レーベルに残された彼の戦後キャリアを代表するこの名盤は、音楽におけるフォークロア回帰運動において貴重な資料の役目を果たしている。しかし、それと同時にLewisが長い活動期間を経て常に進化を遂げていたことも確かだ。
特に有名なレパートリーとして挙げられるのが「Casey Jones」と「John Henry」であり、いずれもアメリカの悲劇的英雄の物語を伝えるブルースのスタンダードだ。Lewisのとくとくと語るような歌声が印象的な、いわゆるトーキングブルースで、特に後者の伝統的スタイルのギターは多くのミュージシャンの模範となっている。
「I Will Turn Your Money Green」における戦前版からの歌詞解釈の変化、Jim Jacksonの歌った「My Monday Woman Blues」からの歌詞引用などを指摘しているのは、ブルース学者のSamuel B. Chartersだ。また彼は「John Henry」における奏法の変遷に、Blind Lemon JeffersonやRobert Johnsonらの影響を見出している。ブルース・スタイルが生涯をかけて変化していった理由には、路上演奏や興行の旅回りで得た数多くのブルースマンたちとの出会いが影響していた。
Lewisは82歳で亡くなるまでブルースの伝道に尽くした。1972年にはDon NixやJeanie Greeneといったスワンプ系のシンガーとともに、『The Alabama State Troupers Road Show』を発表するなど、若いアーティストとの交流も盛んに行った。