Johnny Rivers – Realization (1968)
1968年。無邪気なロックンロールがクラブを沸かしていた時代は過ぎ去り、かつて伝説の〈ウイスキー・ア・ゴーゴー〉で鳴らしたJohnny Riversの作風にも明確な変化が訪れるようになった。『Realization』はBob Dylan、Jimi Hendrixといったフォーク・ロックやサイケデリックの名曲を取り込みつつも、Riversの渋いボーカルと凄腕のミュージシャンたちのタッグが完璧な形で活きた真の傑作だ。
ソウルと英国ポップの融合した「A Whiter Shade Of Pale」などは見事な選曲で、ソウル映えするRiversの歌声とよくマッチしている。「The Way We Live」はAl Kooperっぽいオルガンの雰囲気からしてDylanのカバーのように聴こえる。しかしこれはれっきとしたRiversのオリジナルだ。
多彩なカバー曲に彩られているが、特に本作を名盤たらしめているのはJames Hendricksの書いたヒット・シングル「Summer Rain」だ。この五感が研ぎすまされたサマー・オブ・ラブの名曲は、歌詞にもあるようにThe Beatlesの「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」に触発されたものだ。オーケストラの名手Marty Paichの実に気の利いたストリングスとHal Blaineの稲妻のようなドラムは、この曲のアイデアを見事に現実化している。根っからのビートルマニアなら〈ジューク・ボックスからシングル・カットされていないはずの「Sgt. Pepper's~」が聴こえてくる〉という描写に一瞬戸惑いを覚える人もいるだろうが、そんなことはこの見事なサウンド・メイキングの前では些細な問題である。
Riversの新たな一面を見せつけたこのアルバムは、アメリカのチャートでで5位となった。粗削りなサウンドがもてはやされる60年代のサイケ・ロックの中で、この洗練された雰囲気は却って異彩を放っている。