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High Tide – Sea Shanties (1969)

 Curved Airをはじめ、1960年代終わりの英国からはヴァイオリンをフィーチャーしたバンドが多くデビューしたが、High Tideはその中でも最も硬派で複雑なジャムを信条とした存在である。中心となったのはブリティッシュ・ビートの土壌で育ったギタリストTony Hillで、ベーシストSimon HouseらとともにHigh Tideを結成する。ほどなくしてHouseにクラシックの素養とヴァイオリンの才能が備わっていると知ったHillは、ベースの座をPeter Pavliに譲らせ、バンドはギターとヴァイオリンの緊張感あふれるツイン・リードのスタイルを確立した。
 ガレージ風の激しいギターで始まる「Futilist's Lament」は実に印象に残りやすいイントロダクションである。Houseはサイケデリックな感覚と悲壮に満ちたムードをもたらしていて、続く「Death Warmed Up」ではHillと息をのむように壮大なユニゾンを展開する。
 アルバムで最も長い「Missing Out」も同じく必聴で、重量級のアンサンブルをヴァイオリンの神秘的なメロディが効果的に彩っている。注目すべきは、69年という時代において他のヘヴィ・ロック・バンドが脱却しきれずにいたブルースの型枠から、High Tideは見事に抜け出していたという事実だ。『Sea Shanties』は、70年代のプログレを示唆する一枚であると同時に、プロト・メタルの一角をなす先んじた作品とみることもできる、ただならぬアルバムである。