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ムラージュ|蝋細工の人体標本

札幌の学会のついでに立ち寄った、どっしりとした石の重みを感じる建物。古びた木の床の階段。歴史を感じるその博物館はは一般に開放されており、入場料無料!札幌駅から徒歩圏。

歴史を感じる、北大キャンパスの総合博物館

コンテンツが充実しており、各々の学部の研究の内容、北海道大学の歴史などをダイジェストで見られます。一般向けで子供にもおすすめ。私が子供の頃にここにきたら北海道大学を目指しただろうなあ・・( ^∀^)農学とか獣医学とか興味深々です。

いろんな学部の研究を感心しながら閲覧していたその時、「ムラージュの部屋」が忽然と現れたのです。

北海道大学博物館のムラージュ

医学部のコーナー。皮膚病をロウ細工で再現したモデル。その昔写真も満足になかった時代の医学生のための作品です。
北海道大学のホームページ

絶滅宣言された痘瘡(天然痘:small pox)膿疱期のリアルな臨床像が上座に居座っています。畏怖の念すら覚えます。ブルブル…

ムラージュの歴史

16世紀にはイタリアでロウ製の解剖模型が作られていたようです。医学用に普及しました。皮膚病に関するものが主。医学に関連した技術とされ、ロンドンのマダムタッソー(ロウ人形館を作った)に教えたのはスイスの医師。

日本には明治30年に伝わりました。

ムラージュの作成方法

患部から直接石膏で雛型を造り、これにパラフィンとロウの混合物を流し込んで原型を得て、彩色します。

(1)皮膚に薄く油を塗る。眼は覆う。鼻にはガラスの管。
(2)ギプスを厚く塗り、固める。
(3)鋳型内面を消毒して乾燥する。
(4)内面に薄く油を塗り、パラフィンとロウと色素の混合物を入れる。
(5)鋳型内面に薄い膜が張ったところで彩色する。
(6)大量にロウを入れて裏打ちする。
(7)固まったところで鋳型から外し、細部を修正する。

手の鋳型の石膏。何の疾患を表現したのだろうか?

しかし本当の作り方は職人の秘伝によるところが大きく、現代ではその技術を継ぐものはいません。ムラージュ技術保存の危機らしい。

それにしても実にリアルなモデルが目の前にある。

思わず想像してしまう…病気によっては、デリケートな部位にもなるその場所を型取る姿を。患者や医師たちの苦労がしのばれてやみません。

パリ大学、サンルイ病院のムラージュ博物館(Le musee des moulage)

ホームページ
ちなみに私、2006年にパリ大学のサンルイ病院、ムラージュ博物館を訪れたていました。この博物館で国際的な皮膚科の学会が開催され、各国へムラージュ技術が広まることとなりました。(以下写真5枚。)

予約して入場。真っ暗な部屋に明かりが灯され、ぶわ〜〜〜〜っとムラージュたちが壁面いっぱいに浮かびあがりました。

薄暗い部屋に浮かび上がる無数のムラージュたち。ムラージュ博物館
予約して入場。無人の部屋の扉が開かれ、照明が灯された。
まだ血が通っていそうなリアルな標本
上の段の顔部分を見てほしい。生々しさがわかる。
融解して崩れつつある標本もあった…

日本には北海道大学の他にもある?

九州大学皮膚科

ホームページにはクオリティの高い写真が108個あります。3方向からの写真。カラーチャート付き。この写真はプロの仕事。

※東京大学や名古屋大学にもあるとの情報(ウィキ):未確認です。

新潟大学、にはなかった…。

我が母校新潟大学医学部皮膚科の名誉教授、伊藤雅章先生に直にうかがいました。結論、「もう処分されました…」

実物大の標本が何百もあって広大な敷地を占領してしまうのです。蝋細工だからどんどん崩壊するし、これをメンテナンスすることもできないのです。学内のリフォームに伴う引越しの際に処分されました…

かなしい時〜!

けど仕方がないです。(T ^ T)維持費だけで膨大な予算が必要ですものね。

今残している大学は頑張って残しているんですね。維持してほしい。応援しましょう!

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