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JIN's talk 第9回目〜腸内細菌と私たち〜

毎週火曜日21時から30分間で行っているJIN's talk
2024年11月5日は、『腸内細菌と私たち』というテーマでした。

まとめと振り返りをしたいと思います。


腸内細菌とは何か?

私たちは腸内にいる細菌と共生しています。
腸内細菌は私たちの腸内に生息する微生物群であり、約500-2,000種類の異なる種が存在し、その数は合計で100兆個とも言われています。
これらの細菌の集合体を「腸内フローラ」や「腸内細菌叢」と呼び、
腸内細菌の種類や数は、兄弟や双子であっても、一人一人の人間で全て異なります。

3歳くらいまでに腸内細菌が定着すると言われており、腸内細菌の種類は、生まれてからの食生活や生活環境などによって変化します。
その後の人生において、腸内細菌の種類は大きく変わらないと言われていますが、腸内細菌の状態は生活習慣や食習慣によって大きく変化します。

帝王切開で生まれると腸内細菌が少ない。

生まれる前、お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんの腸は無菌状態です。生まれるときに産道を通る間に、お母さんの持つ細菌が体に取り込まれます。一方で、帝王切開の場合は産道を通らないため、細菌にさらされずに、産まれた後の腸内細菌も少ないことが分かっています。
動物によっては、お母さんのフンを赤ちゃんに食べさせることで、自分の環境に応じた腸内細菌を取り入れて、整える行動が本能的に見られます。

腸内細菌はバランスが重要!

腸内細菌はそれぞれがネットワークで繋がっているため、バランスを取り合って働き、そのバランスがとても大切になります。
腸内細菌は、健康に良い影響を与える「善玉菌」、有害な影響を及ぼす可能性のある「悪玉菌」、そして状況に応じてどちらにもなる「日和見菌」の3種類に分類されますが、全て「善玉菌」なら、腸内環境も最高に整うという訳ではありません。
不思議ですが、悪玉菌もいてくれることで、バランスが整うのです。

腸内細菌の餌は私たちが食べたもの

腸内細菌は私たちが食べたものを餌として生息しているので、食べたものが偏っていたり、栄養素が少ないと腸内細菌にも偏りが生じます。

主に、腸内細菌の餌となるものは、胃や十二指腸、小腸で消化吸収されないものです。特に、食物繊維は人の消化酵素で分解されない食べ物の総称なので、消化されずに大腸に届き、腸内細菌にとっては非常に嬉しいものです。

腸内細菌はどのくらいで変わるかそれとも変わらないのか

食物繊維が豊富なもち麦を毎朝茶碗一杯2か月間食べたところ、腸内細菌の数が増え、多様性が増えたという研究報告や、動物性食品中心の食事から植物性食品中心の食事に変えると、わずか5日間で腸内細菌叢が変化したという結果も得られています。
一方で、人工甘味料を2週間摂取し続けたところ、腸内細菌の働きが悪くなったという報告があります。
生活を少しでも変えると、いつからでもバランスをよくすることは出来ますが、悪くすることも出来てしまうので、毎日の積み重ねが重要になります。

腸内細菌と健康の関係〜腸は免疫システムの司令塔〜

腸は、消化吸収を行い、不要なものを排泄しているだけではありません。
その他の重要な役割は、異物・病原体・ウイルスの侵入を防いだり、免疫システムの司令塔として働いていることです。
腸内は腸の上皮細胞がしっかりと張り巡らされ、簡単には体の中に入れないような仕組みになっています。体の中に入る(侵入する)には、消化吸収される必要がありますが、異物と判断されればそこでブロックされます。

しかし、腸内細菌の乱れによって細胞のバリアが破綻してしまうことがあります。すると、そこから通常はブロック・排除されるはずの物質が体内に侵入してしまいます。
すると、それが炎症の原因となり、過剰なアレルギー反応を引き起こしたり、動脈硬化や肥満など生活習慣病の原因となる可能性があります。また、肌の老化などにも繋がり、シミやシワの原因となっている可能性があります。

免疫力を高めればいいのかという点については、高めすぎることである物質に対して過剰に反応してしまい、それがアレルギーとして出てしまう。
なので、ここでもやはりバランスが大切になります。

腸内細菌と病気の関係〜脳と腸は繋がっている?!〜

脳腸相関という言葉をご存知でしょうか。
脳腸相関とは、脳と腸が密接に相互作用していることを指します。
近年の研究が盛んに行われており、脳と腸が神経、免疫、ホルモンを通じて双方向にコミュニケーションを行うことが明らかにされ、心身の健康におけるその重要性が注目されています。

ASD(自閉症スペクトラム)の多くの場合、腸内環境の乱れ(ディスバイオーシス)や胃腸の不調(便秘、下痢など)を抱えていると言われています。
そこで食物繊維が注目され、食物繊維の摂取によって、腸内細菌叢を改善し、ASDの行動や感情に間接的な影響を与える可能性を示唆する研究が増えています。

また、認知症やうつ病の人の腸内環境が乱れており、ビフィズス菌や乳酸菌の仲間が少なかったという報告もされています。

腸内細菌叢が先か、病気が先か

ただ難しいのは、病気になったから腸内細菌叢が変化したのか、腸内細菌叢が変化したから病気になったのかです。
どちらが先かをはっきりと示せるものは現時点ではありません。
ただひとつ、はっきりしていることは、腸と脳はネットワークで繋がっていて、互いに影響を及ぼし合っていることです。

農家のおじいさん・おばあさんが元気なのは土いじりをしているから?

土をいじること(ガーデニングや農作業など)は、腸内細菌を活性化し、健康に良い影響を与える可能性があります。
現代の清潔な環境では、土や自然に触れる機会が減少しているため、免疫系や腸内環境が十分に刺激を受けない場合があると言われており、その点は土壌微生物に触れることで、腸内細菌叢の多様性が増すことに寄与していると考えられます。
もちろん体を動かしているということも大切な要素です。

もし都会に住んでいる場合でも、定期的に土いじりをすることは、腸内細菌の活性化だけでなく、メンタルヘルスにもいい影響があります。自然に触れる機会がない場合には、是非、検討してみて下さい。

長くなってきたので一旦この辺りまでにします。
続きは、腸内細菌叢の移植、肥満と腸内細菌、炭水化物抜きは要注意、腸内細菌による個別化医療へ?などをまとめたいと思います。

この先も
・腸内細菌からみた気をつけたい薬
・腸内細菌のための生活様式
・腸内細菌と漢方薬の関係
というテーマでJIN's talk &まとめを行います。

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