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新世代てんかん発作予知App案ーその1

1.まえがき

おはよございます。連休も最終日ですね。この連休もどこへ行くでもなく、ネコと遊びながら毎日12時間以上調べに明け暮れていました。(笑)

というのは今回、私が関わることになった「InsightX」プロジェクトで、システムの基本設計を任されることになりました。海外で設計してきた実績を超えるものを設計してほしいという要望を受け、隠居生活を送っていた私ですが、これが最後の仕事として挑むことにしました。

ちなみに、「InsightX」の「Insight」は「洞察力」を意味し、「X」は「クロスプラットフォーム」を表しています。つまり、さまざまな情報を多角的に捉え、拡張性が幅広いプラットフォームの構築を目指しているのです。

今日は、このシステムが扱う情報の種類や設計に込められた意図について、分かりやすくご説明いたします。

このシステムの実現には、日々医療機関で作成されるカルテ、治療内容、処方、改善度などの「EHRデータ」と、ウェアラブルデバイスから集まる心拍、運動量、移動履歴、睡眠などの「PHRデータ」の共有が必要です。これらの「RAW DATA」を一元的に集約し、AIによる分析を通じて、医療と健康のあらゆる面での改善を目指します(EHR・PHRデータの詳細については、「医療(EHR)/健康(PHR)情報とは?」の記事をご参照ください)。

例えば、てんかん患者の方が日常的に使用できるデバイスのみで(Apple Watch)のようなウェアラブルデバイスを用い、発作アラートが自動で送信されれば、てんかん発作の予知にとどまらず、心臓発作予知などにも応用が可能です。このようなデバイスを活用することで、利用者のメリットが大幅に増大し、医療分野への貢献も期待されています。

2.「てんかん発作アラート」の必要性

「てんかん発作アラート」が患者さんにとって特に大切な理由は、日常生活での安心感を得られるとともに、発作時のリスクを軽減できる点にあります。発作の予兆をいち早くキャッチし、自身や周囲の人にアラートを送ることで、転倒などの事故の予防が期待できます。

発作中は、患者さんが意識を失ったり体の制御が難しくなるため、転倒による怪我のリスクが高くなり外出などをひかえるなど健常人にない苦労があります。特に発作の予兆アラートを利用すれば、患者自身が早めに身を守ったり、座ったりする準備ができ、転倒などのリスクを最小限に抑えることができます。

さらに、予兆アラートは周囲のサポート体制も強化し、家族や友人が迅速に対応する助けになります。アラートが発作の兆候を察知した瞬間に家族や介護者に通知が届くことで、緊急時の迅速な対応が可能になり、発作に伴う事故の予防にもつながります。こうしたシステムによって患者さんは「発作が起きてもサポートがある」という安心感を持ち、日常生活をより安心して過ごすことができるのです。

しかし、現状では、日常生活に支障がないデバイスだけで発作を予知することは難しいのが実情です。予知の精度を向上させるには、心電図計のような特別なデバイスが必要ですが、こうしたデバイスは日常的に装着したり取り外したりする手間があり、患者さんにとって負担が増えてしまいます。そのため、徐々に使用されなくなるケースが多く、デバイス購入の費用も無駄になりかねません。このような理由から、実際の普及は進んでいないのが現状です。

てんかん発作アラートは、ただの技術ではなく、患者さんが転倒や事故のリスクを軽減し、自信を持って生活できるための大切なパートナーと言えるいえるシステム製品に是非実現したいものです。InsightX内へのAppleはじめ機器メーカーや構築に向けて現在古い友人達のネットワークで前向きび検討しています。

3.簡易なウェラブルデバイスのみで予知を可能にするためには?

てんかん発作の予知を簡易なウェアラブルデバイスで実現するための方法はいくつか研究が進んでいます。現在の技術では、主に脳波(EEG)や生体データを使って発作予知を行う手法が有効です。以下に、実現方法の概要を紹介します。

3-1. 脳波(EEG)モニタリング

てんかん発作の多くは、発作前に異常な脳波パターンを示すため、EEGを用いて発作を予知することが可能です。簡易なウェアラブルデバイスでEEGを収集する方法としては、以下のような手法が考えられます:

  • 耳や額に装着するデバイス:伝統的なEEGヘッドセットは大きくて装着が難しいですが、簡易なウェアラブルEEGデバイスは、耳や額などに小型センサーを配置し、持続的に脳波を測定できます。

  • データのリアルタイム解析:デバイスが収集した脳波データをリアルタイムでクラウドやスマートフォンアプリに送信し、AIアルゴリズムが発作の兆候を検出します。

3-2. 生体データ(心拍数・皮膚電位など)の利用

発作の兆候は脳波だけでなく、心拍数や皮膚電位にも現れる場合があります。これらのデータは、簡易なウェアラブルデバイスで取得できるため、EEGと併用して発作の予知精度を向上させることができます。

  • 心拍数モニタリング:心拍数の変動や、異常な上昇が発作の前兆として観察される場合があります。スマートウォッチなどのデバイスでリアルタイムに心拍数を測定し、異常が検知された際にアラートを出すことが可能です。

  • 皮膚電位反応(GSR):皮膚の電気伝導率は、発作の前に変化することがあるため、GSRセンサーを搭載したデバイスも効果的です。

3-3. AI・機械学習によるデータ解析

リアルタイムで脳波や生体データを解析するため、AIや機械学習アルゴリズムが用いられます。これにより、以下のようなシステムが可能になります。

  • 個別の発作パターンの学習:てんかん発作の兆候は個人によって異なるため、機械学習を使って各ユーザーのデータを学習し、より精度の高い予知モデルを作成します。

  • アラートシステム:AIが発作の兆候を検知した際に、ユーザーや周囲の人にアラートを送る機能を備えることができます。

3-4. クラウド連携とデータ管理

ウェアラブルデバイスが収集するデータは膨大になるため、クラウドと連携してデータを蓄積・管理することで、個人の発作パターンを把握しやすくなります。クラウド上のデータはAIモデルのトレーニングにも利用でき、長期的な発作予知の精度向上が期待されます。

3-5. 電力消費と装着性の改善

ウェアラブルデバイスは小型かつ軽量であることが求められるため、電力消費を抑える工夫や装着感の良いデザインが重要です。

4.既に商品化されているEEGデバイスのでてんかん予知は可能か

では、既に商品化されているデバイスの能力でてんかん予知に必要なデータを収集するのか可能なのでしょうか?
実は9月から下記のデバイスをすでに購入して性能の確認を行っています。
候補EEG商品は下記の通りです。

現在、市場にはさまざまなEEG(脳波)ウェアラブルデバイスが存在しており、それぞれ異なる用途やユーザー層を対象に開発されています。以下に、代表的なEEGウェアラブルデバイスをいくつか紹介します。

4-1. Museシリーズ

TechnicalCallouts社のMuse_2
  • 製品例:Muse 2、Muse S

  • 特徴:主に瞑想やリラクゼーションのためのEEGデバイスで、頭にバンドのように装着する形状です。脳波、心拍、呼吸、体の動きなどをトラッキングし、スマートフォンアプリでデータのリアルタイム解析や記録が可能です。

  • 用途:リラクゼーション、ストレス管理、集中力向上。

  • メリット:軽量で装着が簡単、リラックスや集中力のトレーニングに役立つ。


4-2. Emotivシリーズ

Emotiv EPOC+ 14-Channel Mobile EEG Headset - Professional Dimensions
  • 製品例:Emotiv Insight、Emotiv EPOC+

  • 特徴:研究用途や消費者向けのEEGデバイス。Emotiv Insightは軽量で5チャンネル、Emotiv EPOC+は14チャンネルの脳波計測が可能で、より詳細な脳波データを収集できます。

  • 用途:ストレス管理、集中力測定、研究用途、企業向けトレーニング。

  • メリット:高精度で詳細な脳波データが得られ、エンタープライズレベルのデータ分析や開発にも対応。


4-3. NeuroSkyシリーズ


Neurosky MindWave Mobile device
  • 製品例:MindWave Mobile 2

  • 特徴:簡単な装着でEEGデータを取得可能なシンプルなヘッドバンド型デバイス。1チャンネルの脳波測定に対応しており、手軽に脳波を活用したアプリケーション開発が行えます。

  • 用途:教育、集中力のトレーニング、簡易なリサーチ。

  • メリット:価格が比較的安価で、手軽にEEGを体験可能。


4-4. OpenBCIシリーズ


OpenBCI Mark IV Headsetと装着イメージ
  • 製品例:OpenBCI Ganglion、OpenBCI Cyton

  • 特徴:研究用途やオープンソースプロジェクト向けのEEGデバイス。頭蓋に固定できる「Ultracortex」ヘッドセットもあり、多チャンネルで高精度なEEGデータを取得可能です。

  • 用途:研究開発、脳波インターフェース(BCI)、学術研究。

  • メリット:柔軟なカスタマイズ性と高い精度で、オープンソースでのアプリケーション開発に適している。


4-5. Neurable

Neurable Inc. Launches First Smart Brain-Computer
  • 製品例:Neurable Headset

  • 特徴:脳波を使ったインタラクティブなゲーム体験や、集中力の測定などを可能にするヘッドセットです。コンシューマー向けにデザインされており、使いやすいインターフェースが特徴です。

  • 用途:VRやARにおける没入体験、集中力向上、ゲームインタラクション。

  • メリット:装着が容易で、エンターテイメント分野での応用が期待される。


4-6. Bitbrain

Bitbrain Hero
  • 製品例:Bitbrain EEG Systems

  • 特徴:14から64チャンネルのEEGセンサーを備え、研究用や高度な脳波測定に適したデバイス。多くの信号を高精度でキャプチャでき、医療や学術研究での利用が多いです。重量250gと軽量。

  • 用途:医療研究、心理学研究、高度なデータ収集。

  • メリット:高度なデータ処理が可能で、より深い脳活動の理解ができる。

4-7. 問題点点

これらのデバイスは、それぞれ対象とする用途が異なるため、予知精度やデータ解析機能も製品によって異なります。てんかん発作の予知を目的とする場合は、EEGデバイス自体に加えて、リアルタイムでの高速クラウド型側データ解析や発作予知アルゴリズムを搭載したシステムとの連携が必要です。また、医療用途で利用する際は、規制や認可も考慮する必要があります。


続きは新世代てんかん発作予知App案ーその2で(11/8配信予定)


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