医療技術の進化とデータ共有の新たな課題
医療診断機器の進化は日進月歩です。皆さんもよくご存じのコンピューター断層撮影(CT)スキャナーでは、検出器が1列から最大640列に急速にアップグレードされています。また、磁気共鳴イメージング(MRI)3.0技術との組み合わせにより、1回の検査で生成されるファイル数が10,000を超えることも珍しくありません。
これに加えて、多職種連携治療(MDT)やインテリジェントな補助診断、品質管理、術前計画など、多岐にわたる新技術が登場しています。これらの技術は医用画像を基盤としており、標準的な臨床応用の加速や医学研究の変革に大きく貢献しています。その結果、医用画像データの共有がこれまで以上に重要となり、その必要性も急激に高まっています。
さらに、ウェアラブルデバイスなどのヘルスケアデータやPHR(個人健康記録)といった新しい情報源も、医療分野に新たな視点を提供しつつあります。これらのデータが医療提供者側のインフラにどのように組み込まれるべきかという課題は、今後ますます明確になってくるでしょう。
医療の未来は、これまでにないほど多様なデータと技術が融合し、進化を続けています。その一方で、膨大なデータの管理や共有に関する課題を解決することが、次の大きなステップになると言えるでしょう。
医用画像データの急速な増加に直面して
このように近年、医用画像データの増加が加速しています。かつてはTB(テラバイト)単位で扱われていたデータ量が、現在ではPB(ペタバイト)規模にまで膨れ上がりつつあります。この急激な増加は、ストレージハードウェアの総所有コスト(TCO)を大幅に押し上げ、医療現場や関連産業にとって大きな課題となっています。
例えば、私たちが携わる InsightX プロジェクトでも、患者さんとのビデオ通話の録画データをどの範囲で保存するべきかが重要な検討事項の一つです。現在の技術でも膨大なデータ量が発生していますが、今後モバイルデバイスの進化とともに、画素数が4Kから8K、さらには16Kへと向上していくことが予想されます。この進化に伴い、バックアップを含めたデータの総容量はどれほどになるのか、想像するだけでも圧倒されるばかりです。
医用データの長期保存や効率的な管理の必要性は増す一方です。今後、データ圧縮技術の改良や、クラウドストレージの活用、AIを活用したデータ整理など、さまざまな革新が求められることでしょう。私たちもこの課題に真摯に向き合い、解決策を模索していきたいと考えています。