日本国内で実施されている「てんかん治療」の現状への患者さん達の疑問点②
こんにちは!最近、てんかんの話題ばかりで恐縮です。でも、一度調べ始めると、答えが見つかるまで寝る間も惜しんで突き進んでしまう性格なんです。このマイペースな性格には、自分でも呆れることがあります。
ちなみに、家族はというと…昔はその「集中モード」の巻き添えで大変だったみたいです。でも今では、もう諦めたのか、何も言わなくなりました(笑)。黙認された情熱、ということでしょうかね。
では、日本国内で実施されている「てんかん治療」の現状への患者さん達の疑問点②は、日本において、てんかん治療における根治治療の割合が低い理由を皆様と一緒に考えたいと思います。
Q1:根治治療=外科手術なのですか?
てんかんの根治治療が外科手術だけを指すわけではありませんが、現時点で医学的に「根治」が可能な手段としては、外科手術が主要な選択肢となっています。ただし、根治治療の解釈やその手段は、患者の個々の病態に依存します。以下に詳しく説明します。
1.外科手術による根治治療
外科手術は、てんかんの根治を目指す主要な方法です。
特に、以下の条件に当てはまる患者で効果が期待されます:
主な手術方法:
焦点切除術
発作を引き起こす脳の部位を切除することで、発作を根本的に抑えることを目的とします。半球離断術
片側の脳全体が発作の原因の場合に行われ、脳の一部を機能的に切り離す手術です。コールザム手術(脳梁離断術)
両側の脳半球間の異常な電気信号の伝達を遮断することで、発作の拡大を防ぎます。
これらの手術は、適切な患者に対して高い成功率を示し、発作の完全な消失または大幅な減少が期待できます。
2.外科手術以外の治療法
外科手術以外にも特定の条件下で根治に近い状態を目指せる場合があります:
(1) 薬物療法による完治の可能性
すべてのてんかんが薬剤抵抗性というわけではありません。一部の患者は、適切な抗てんかん薬を用いることで長期的に発作が消失し、最終的に薬の服用を中止できる場合があります。この場合、完全寛解とみなされることがあります。
(2) 特定の年齢依存性てんかん
小児良性てんかん(例:小児良性ローランドてんかん)は、成長とともに発作が自然に消失することがあります。これも一種の根治と見なされることがあります。
(3) 迷走神経刺激療法(VNS)や深部脳刺激療法(DBS)
これらの治療法は、発作を抑える補助的な手段として使われますが、根本的な治療ではなく、発作頻度の減少を目的とします。
(4) 食事療法(ケトジェニックダイエット)
小児てんかん患者においては、ケトジェニックダイエットが発作を劇的に減少させる場合があります。ただし、これも根本的な治療というよりは発作の管理を目指す方法です。
3.「根治」の定義と個々の状況
てんかんにおける「根治」は、個々の患者ごとに異なる意味を持つことがありますので下記を必ずご参照ください。
外科手術で発作が完全に止まる場合 → 明確な根治
薬物や自然経過で発作が消失する場合 → 状態的には根治に近い
特定のてんかんで寛解期間が続く場合 → 根治的とみなされることもある
4.Q1の結論
てんかんの根治治療の中心は外科手術で根治が患者さんにとって最も望まれることですが、すべての患者が対象となるわけではありません。
また、薬物療法や自然経過による完治が期待できるケースも存在します。したがって、治療計画は個々の患者の病態や生活状況に応じて最適化されるべきです。
Q2:日本において、てんかん治療における根治治療の割合が低い理由は?
日本において、てんかん治療における根治治療の割合が低い理由は、以下のような複数の要因によります:
1. 薬物治療の優先
薬物治療が標準的な第一選択
てんかんの多くの症例では、抗てんかん薬が発作のコントロールに効果的です。日本では、薬物治療が患者や医師にとって非侵襲的かつ手軽な治療法として広く受け入れられています。そのため、手術を検討する前に薬物治療が優先されることが多いです。
2. 外科的治療の適応患者の少なさ
特定のケースに限られる外科的治療
根治を目指す外科手術(例:焦点切除術、迷走神経刺激療法)は、特定の種類のてんかんにのみ適応されます。注)参照
特に、発作の焦点が明確に特定できる場合や薬物治療が無効な場合に限られるため、適応患者が全体のてんかん患者の中では少数です。
3. 診断と適応の課題
専門的な診断設備や医師の不足
外科手術を実施するためには、高度な画像診断(MRI、PETなど)や脳波測定(長時間ビデオ脳波モニタリング)が必要です。これらを実施できる施設や専門医が日本全国に均等に分布していないため、手術の適応診断が進まないことがあります。
4. 患者および家族の心理的ハードル
手術に対する恐怖心や不安
頭部の手術に対する心理的な抵抗感が大きいことも、根治治療の選択を妨げる一因です。手術のリスクや後遺症の可能性を恐れて、患者や家族が手術を避ける場合があります。
5. 情報提供や啓発の不足
手術の選択肢に関する知識不足
外科的治療が可能であることや、その成功率について十分な情報が提供されていないことも、患者や家族が手術を選択しない理由となっています。
6. 医療システムや保険の影響
手術へのアクセスの制限
手術が行える医療施設が限定されているため、患者が適切な治療を受けるために長期間待機することがあります。また、日本の医療保険制度では外科的治療がカバーされているものの、施設によっては十分な支援が得られない為外科的治療は医療機関側のリスクも高く敬遠される場合もあります。
結論
これらの要因が複合的に絡み合い、日本におけるてんかん治療での根治治療の割合が低い結果につながっています。患者さんにとっては、適切な情報提供と医療へのアクセス改善が今後の重要な課題です。
私見ですが、てんかんの根治治療=外科手術とは言い切れないものの、手術が果たす役割は大きいです。しかし、日本の手術率は非常に低く、韓国の半分以下という状況です。この点が根治治療率に影響を与えているのは明らかでしょう。
そこで、日本てんかん学会の会員名簿を調べ、診療科別、特に脳外科医の割合を確認してみました。以下にその結果を示します。
総会員医師1,242名のうち、外科医は197名とわずか15.8%に過ぎません。一方で、半数以上が小児科医という結果でした。確かに、小児を中心としたてんかん患者さんの窓口は広がっていますが、現状では抗てんかん薬の長期投与以外の選択肢がほとんどないというのは、G7加盟国として非常に残念な現実ではないでしょうか。
次回、日本国内で実施されている「てんかん治療」の現状への患者さん達の疑問点③は、薬剤抵抗性てんかん(DRE)について私見をまとめましたのでご覧ください。
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