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SAPの2027年問題とは?医療機関に与える影響は?
こんばんは。日に日に寒さが増し、冬の訪れを実感する今日この頃ですね。
現在進行中のInsightXプロジェクトでは、海外の大学や研究機関との連携が欠かせません。
そのため、日本にいながらもパリやボルチモアの時間に合わせてやり取りを行うためにここ最近はすっかり夜型の生活リズムになってしまいました。
今日は皆様から質問が多い、「InsightXの本格運用は何故2027年なの?」とご質問への回答となります。
一般の方にはあまり知られていませんが、大学病院など大きな病院で使われているシステムのほとんどがドイツSAP社が提供してい基幹システムパッケージの代表格である『SAP ERP』を使用しています。
しかし、『SAP ERP 6.0』(ECC 6.0)の標準保守期限が2027年末で終了となります。元々は2025年末が期限のため「SAP 2025年問題」でしたが、ユーザーからの強い反発もあり期限が2年延長されたことを受け「SAP 2027年問題」なっています。
では、この「SAP 2027年問題」をどのように乗り越えるかは、病院の今後のIT戦略を大きく左右するためにInsightXシステムとのデータ共有の手法にも大きな影響を与えるためにInsightXの本格運用開始を2027年と定めています。
求められる経営判断
『SAP ERP 6.0』(ECC 6.0)の標準保守期限が2年延長され、多少の時間的猶予ができたとはいえ、基幹システムの移行は決して簡単なプロジェクトではありません。楽観視は禁物です。
![](https://assets.st-note.com/img/1731521650-0vCirWybHEQ3RaUqoedjw6th.png?width=1200)
システム移行には多大なコストと時間がかかるうえ、今後のデジタル戦略を見据えた移行方針の策定や、それに基づく経営判断が求められます。また、SAP製品の導入や移行を支援するSAPコンサルタント、システム開発を担うパートナー企業の選定と確保も急務です。
特に、大学病院や徳洲会のように、サプライチェーンや人事・会計システムを共有する医療機関においては、経営判断がより難しい局面を迎えています。加えて、IT人材の不足が深刻化する中、従来通りのスケジュール感や予算感で移行を進めることは困難になる可能性もあります。
今後、各医療機関がどのように移行を進めていくのかが注目されるところです。
SAPの2027年問題への具体的な影響
SAPの2027年問題とは、SAPが2027年末をもって現在のERPシステム(ECC 6.0など)のサポートを終了し、新しいプラットフォーム「SAP S/4HANA」に移行することを指します。この問題は医療機関を含む多くの組織に影響を及ぼします。
以下に医療機関における具体的な想定される影響を示します。
1. システム移行の必要性
現在SAP ECCを使用している医療機関は、2027年までにSAP S/4HANAへの移行を検討する必要があります。これには、基幹業務システム(会計、在庫管理、人事など)の全面的な再構築が伴う可能性があります。
2. コスト増加
移行に伴うシステム導入費用や新たなインフラ構築の費用が発生します。また、従業員のトレーニングや外部コンサルタントの利用もコストに加わるため、パンデミックでの経済的疲弊が修復出来ていない医療機関では予算面での圧迫が予想されます。
3. 業務への影響
医療機関では患者情報、薬剤管理、在庫管理など多岐にわたるデータを効率的に扱う必要があります。システム移行中に業務が中断するリスクや、データ移行の際に発生する不整合のリスクが考えられます。
4. コンプライアンスとセキュリティ
医療業界では、個人情報保護や業界特有の規制(HIPAA、GDPRなど)への対応が必須です。新システムでこれらの要件を適切に満たすことが求められ、特にデータ移行や新しい機能の導入時に慎重な管理が必要になります。
5. 競争力の強化
S/4HANAはリアルタイム分析や高度な自動化機能を提供します。これにInsightXシステムのデータ共有により、医療機関は経営や患者ケアの改善に資するデータ駆動型の意思決定が可能となり、治療成績、患者満足度など競争力を強化できる可能性があります。
6. パートナー・サプライチェーンへの影響
医療機関がSAPを利用して供給業者や他の医療機関と連携している場合、パートナーや関連機能もS/4HANAに移行する必要があります。これにより、連携する他組織の進捗や対応によっては医療機関の業務に影響を及ぼす可能性があります。
医療機関に求められるSAP 2027年問題への対応は選択肢
医療機関がSAP 2027年問題に対応するためには、以下のような選択肢を検討する必要があります。それぞれの選択肢にはメリットとデメリットがあるため、組織の規模や現状のシステム環境、予算、将来のビジョンを考慮した上で最適な対応を選択することが重要です。
1. SAP S/4HANAへの移行
概要:
SAPの次世代ERPであるSAP S/4HANAに移行することで、SAPのサポートを継続しつつ、新たな機能を活用することができます。
メリット:
リアルタイムデータ分析による迅速な意思決定が可能。
先進的な技術(AI、機械学習など)を活用した業務効率化。
長期的なサポートを受けられる。
デメリット:
移行に高いコストと時間が必要。
現行システムの再設計が必要になる場合がある。
IT人材やSAPコンサルタントの確保が課題。
2. 他のERPシステムへの移行
概要:
SAP以外のERPシステム(Oracle, Microsoft Dynamics, Workdayなど)への移行を検討する。
メリット:
組織に合ったERPシステムを選択できる。
他のベンダーが提供する特定機能やサポートの利用。
デメリット:
データ移行の複雑さ。
新しいシステムの学習・適応に時間がかかる。
サプライチェーンや外部パートナーとのシステム統合が難しい場合もある。
3. サポート期間延長の利用
概要:
追加料金を支払い、SAPの延長サポートを利用してSAP ECC 6.0の使用を続ける。
メリット:
現行システムをそのまま使い続けられるため、移行のコストと時間を一時的に回避できる。
長期的な戦略を立てるための時間を確保。
デメリット:
延長サポートの費用が高額になる可能性。
将来的にはS/4HANAへの移行が必要となるため、問題の先送りに過ぎない。
4. クラウドERPへの移行
概要:
クラウドベースのERPシステム(SAP S/4HANA Cloudや他のクラウドERP)に移行する。
メリット:
サーバー管理の負担が減少し、運用コストが削減される。
システムの柔軟性が向上し、リモートワーク環境にも対応可能。
セキュリティやバックアップがベンダーにより保証される。
デメリット:
カスタマイズ性が制限される場合がある。
クラウドへの移行コストが発生。
データの管理場所や規制遵守に関する懸念。
5. ステイタス・クオ維持(Do Nothing)
概要:
特に対応をせず、サポート期限が切れるまで現行システムを使用し続ける。
メリット:
初期コストを抑えられる。
移行準備の時間をさらに確保できる。
デメリット:
サポート終了後のリスク(セキュリティ脆弱性、障害発生時の対応不可)。
将来的により高いコストで対応が必要となる可能性。
コンプライアンス違反のリスク。
6. ハイブリッドアプローチ
概要:
一部のシステムをS/4HANAへ移行しつつ、他のシステムは延長サポートを利用するなど、複数の選択肢を組み合わせて対応。
メリット:
リスク分散が可能。
コストと移行負担を段階的に調整できる。
最適なスケジュールで移行を進められる。
デメリット:
システムの統合が複雑化する可能性。
全体の管理が難しくなる。
医療機関特有の課題と注意点
患者データの安全性
移行中のデータ漏洩や整合性確保が重要。
業務の中断最小化
24時間稼働する医療機関では、移行による業務中断を極力抑える必要がある。
規制遵守
HIPAAやGDPRなどの規制を遵守したシステム運用が求められる。
医療機関が自組織に最も適した対応策を選ぶには、IT部門だけでなく経営陣、医師や看護師を含む現場スタッフを巻き込んだ慎重な意思決定が不可欠です。
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