11 口から食べられる社会へ
前回、最期までは口から食べられない社会について紐解いた。
今回は改めて、最期まで口から食べられるための社会づくりについて考えてみる。私は、以下の3つが必要だと考えている。
食べられないを理解する社会
社会教育
地域のHUBの存在
1.食べられないを理解する社会
まずは食べられないということを正しく理解すること。私もそうだが「口から食べられない人」と全部を一緒くたにして表現をすることがある。しかし、その状況は様々である。一般の方は「食べる機能が完全になくなってしまった人」をイメージするだろう。しかし、実はそうでない方も多くいる。サポートをする環境がなくて食べられない人、念のために禁食にしている人、誤診で食べさせてもらえない人など。
現在、医師から禁飲食の指示を受けて口から食べなくなり、そのまま絶食でなくなるというケースはよくある。まずは、禁飲食と言われた方の中に、今後食べられる可能性がある人が多く含まれていることを社会が認識することでベクトルは反転させられるだろう。
2.社会教育
前回も話題にしたが、この、「口から食べる、食べさせない」という問題に対して、とにかく医療者も、一般市民も正しい知識がない。一般人はともかく、医療者の教育においてもこのような教育は少なく、慣習としての禁飲食も多くある。その結果、医者に隠れて口から食べさせていたら食べられるようになったという例はたくさんある。
教育は難しい。医療職であれば、これまでやってきたことを大きく方向転換させるための教育が必要であるが、これまでの経験(単なる慣習)がある分動きが悪いことは容易に想像できる。また、一般市民への教育は、基礎知識がない分、間違った理解をされる可能性も高い。ここでは、社会教育の必要性についてのみで留めるが、その具体的方法は熟考しなければならない。
3.地域のHUBの存在
食支援に関わる人は地域に多く存在する。専門職と言われる人だけでなく、ボランティアや社会福祉協議会、もちろん行政など。これらを強く結び付けると良いように思われるが、結束を固くすればするほど落ちたり、モレたりする人も出てくる(*)。その結果、人材の新陳代謝が悪くなったり、まとめ役が重労働になったりして自然消滅という流れもある。
地域(特に都会)のつながりで重要なのは「ゆるさ」であると考えている。頻繁に交流があるわけではないが、「なんか仕事ができるって聞いたことがある」とか「一緒に仕事したときに助けられた」とか「あのお店ってあんなことしてるんだって」というようなゆるい関係を作っていくことだ。
このような関係の中で多くの人を知っている人が生まれてくる。そういう人が「困ったらあのひとに聞こう」という存在になり、地域食支援のHUBになる。地域食支援のHUBが生まれてくれば地域は動き始める。
*例えば、近所の豆腐屋さんのおばちゃんがとても社交的で、世間話の中でみんなの体調を聞いたり、専門職を紹介したりする人だったとか。
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