ロートレック展 時をつかむ線
数日前、電車の中吊りで「ロートレック展」の広告を見た。すごく興味を持った訳ではなかったが、そのポスターのオレンジがなんともクラシカルなオレンジで目を引いたのと、新宿にあるSOMPO美術館にまだ行ったことなかったなぁと思っていた。
日曜日、午後に予定がなく、「これはチャンスだ!」と思い立ち西新宿に向かった。新宿駅でランチをとり、徒歩で会場に向かう。近い!こんなに便利なところにあったのかと驚きだった。
SOMPO美術館と言えば、バブル時代にゴッホの「ひまわり」を購入して一躍有名に。展示されたときは行列ができたというニュースがあったように記憶している。その時もさほど関心はなかったが、ゴッホの「ひまわり」と言えば心惹かれるものはある。
さて、ロートレック(1864年 - 1901年)は36年という短い生涯だった。足が成長せず、胴体が正常に発育したため、身長152センチの発育障害であった。母親の影響で小さい頃から絵に親しんでおり、今回も少年時代の作品も多かった。
ロートレックと言えば、いろいろな劇場やダンスホールなどのポスターや作品が多い中、今回の「フィロス・コレクション」では若い頃の鉛筆やペンでの表現作品や下書きが多く展示されていた。
今回、最初の展示室の第一印象ということもあるが、「素描」が特に印象に残った。もちろんしっかり書き込んであるものもあるが、ペンでささっと下書きしたようなもの、それこそ紙の余白にいたずら書きをしたのかと思うようなものもあり、それがなんとも可愛らしく、実力を垣間見れるものであった。特に馬の脚の表現が素晴らしく、力強さを感じ取れた。このときの絵の師匠が動物絵の画家だったと知りとても合点がいった。
ロートレックの真骨頂といえばポスターのリトグラフ。今回、その展示数は控えめだったが、かなり有名な作品の展示もあった。ぱっと目を引き、細部を観てみたいという衝動に駆られる作品が多かった。時代は異なるので、この作品が現代でポスターとしてどれほどの評価になるかはわからないが、その時代を表す華やかさを感じた。
今回、約240点あまりの作品を鑑賞した。わずか36年の生涯、画家としては20年ほど。描いて描いて描きまくった人生だったのだろう。自らの障害のコンプレックスと闘いながら、華やかなものに惹かれてのめり込み、作品を作り出す。壮絶な人生だ。しかし、作品に悲壮感はなく、ユーモラスな表現も多い。
ロートレック展が終わると隣の部屋がゴッホの「ひまわり」。ロートレックとはフランス時代親交があり、お互いの絵を描きあっっていたとのこと。なんともうまく出来ている。
鑑賞後、下の階に降りると喫茶スペースと売店があった。ここがまた開放的なスペースでアイスティーを飲みながらのんびり。暑い一日、自宅だったら冷房をガンガンかけながら昼寝でもしていたような時間だったが、本当に快適な空間でロートレックの人生に思いを馳せた。
2024年8月4日(日) SOMPO美術館にて。妻と。