【極・短編小説】吾輩は猫であるのか??② 〜吾輩お料理くらい出来るのである編〜
吾輩は猫である。
名前はオスシという。
雨の降る日に人間の女に拾われた。
女と暮らすようになり早2年がたった頃。
女が吾輩にこういった。
「オスシ、あんた何か役に立つようなこと出来ないかなー?」
「むむっ! なんと失礼な!? 吾輩に癒やされると毎日申しておったではないか!! 癒やしを与える。まさにお主のやくにたっておるではないか!!」
「確かにオスシが家に来てから安心することはあるんだけど、あなた大飯食らいだからさーなにかしら家のお手伝いくらいしてくれてもいいんじゃないって思って」
「むむむっ、それを言われると吾輩も辛いのである。そ、そうだ! なら料理の手伝いをしよう!!」
オスシはただの猫ではない。
猫又と呼ばれる物の怪の一種であり人語を操れた。
「そうだ! 吾輩もおにぎりぐらいなら作れるだろう! よし! 吾輩が主の為に料理してやる」
炊きたてのご飯がテーブルの上に置かれた。
「では早速……」
オスシは茶碗に入った水に肉球をチャプチャプとつけて濡らした。
次に肉球にいくらかの塩を塗りこむ。
「では握るぞ!!」
オスシはそう言って熱々のご飯に肉球を突っ込んだ。
「にゃあああああああああーーー!! ふうぅぅっ!! シャアアァァァッ!!」
肉球に伝わるあまりの熱さにご飯へ威嚇するオスシ。
「熱つつつっ!! ギニャッ! にゃ、にゃにゃっ!!」
なんやかんや苦労しながらもオスシは三角とも丸とも言えぬ形のおにぎりを完成させた。
「にゃ、にゃんとか出来たのである。か、形は不格好になってしまったが、味は美味しいはずだ。さあ主よ食べてみてくれ」
「うん!」
女はおにぎりを手にすると口へと運んだ。
「ど、どうだ? も、もう少し綺麗に握れたらよかったのだが……すまぬ」
女が何も言わず黙々と食べる様子に不安になるオスシ。
味は大丈夫かな? ひょっとして美味しくなかったのか? とオスシは不安にかられながら肉球の間に挟まった米粒をペロペロと舐めた。
「オスシ、ありがとう! とっても美味しい!!」
「そ、そうか! そ、それなら良かったのだ」
女は寿司が好きだという理由で猫にオスシと名をつけた。
しかしこの日、以来、女は好きな料理は何か? と誰かに聞かれる度にオスシの”おにぎり”と答えるようになった。