【意味がわかると怖い話・28】間違い探し
1973年、冬。
7〜8年ぶりに孫とあえる事になったトーマスとアン。
トーマスはソワソワと10分起きに時計を見やる。
「あなた、そんなに時計ばかり気にしても仕方ないですよ」
落ち着かないトーマスに声をかけアンは優しく笑った。
「そう言うばーさんだって、その料理で何品目じゃ?」
「あらあら作り過ぎちゃったかしら」
テーブルの上に乗り切らずアンは台所の棚の上にまで料理を盛った皿を載せていた。
トーマスとアンは昔のことを思い出す。
娘のキャサリンがシングルマザーとなり一人で子どもを育てると言ったときには不安もあったが、泣き言一つ言わずここまで孫を育てたとなると、我が娘ながら良くやったと思う。
反面、キャサリンは離れた場所で仕事と育児に追われ、トーマスとアンは孫の顔を見ることが出来なかったのはさみしいとも思うが、それでも2人は娘のキャサリンを誇らしく思った。
キャサリンは年末で仕事が忙しく、孫のジャックが先に一人で実家へと向かうと言った。
アンは10歳になったばかりの孫が一人で?と心配になったが、トーマスの「キャサリンの子なら大丈夫だろう」と言われ納得した。
孫がどのような子に育ったのか、2人は楽しみで仕方がなかった。
ビィィィッ。
玄関のブザーが鳴る。
いそいそとアンが玄関へと向かい扉を開けた。
そこには青い目をした美しい金髪の少年が立っていた。
「あぁ……ジャックかい?」
「おばあちゃん?元気にしてた?」
トーマスとアンは孫を招き入れ、ご馳走を振舞った。
そして学校のことや楽しかった思い出を互いに話あった。
ジャックは2人の話を聞き、優しくうなずき笑っている。
楽しい時間はあっという間で、トーマスとアンは幸せであった。
そして2日ほど過ぎた。
今日は娘のキャサリンも仕事を終え、夜に実家へとやって来る事となっていた。
「今日は母さんも来る日だな」
「家族皆が揃うなんて本当に久しぶりね」
トーマスとアンの目元に涙が浮かぶ。
ふいにジャックがノートを取り出した。
「おじいちゃん、おばあちゃん。お母さんが来る間、僕が作ったゲームでもしない?」
ジャックはそう言ってノートを開いた。
ノートの左右のページに同じ絵が対称にかかれているようだ。
「これはね間違い探しだよ。左右の絵は一見同じに見えるでしょ?でも良く見て、違うところがあるんだ」
「どれどれ、おお!なるほど!左の絵の男の子は帽子をかぶっているが、右の絵の方はかぶってないな」
トーマスとアンは孫が作った間違い探しの完成度に感心するだけでなく、夢中であそんだ。
皆が時間を忘れあそんでいたその時……ビィィィ。
とブザーが鳴る。
「あら!キャサリンが来たんだわ!じゃあ私が行ってくるから2人はゲームを続けてて」
そう言ってアンは玄関へと向かう。
「お母さん久しぶり!!」
「キャサリン!!」
アンとキャサリンは久しぶりの再会に強く抱きあった。
「ささ、早く早く!中に入ってご飯でも食べましょう!トーマスとジャックも待ってるわ」
アンはキャサリンの手を引き2人の待つダイニングの戸を開けた。
「誰っ!?」
「お母さん?」
ジャックはキャサリンの顔を見て笑った。
【ネタバレ】
キャサリンはダイニングに入り驚いた。
誰かもわからない少年が楽しそうに父とゲームをしていたのだ。
ジャックは?
キャサリンの頭の中に自身の子がどこにいるのか?
この子は一体誰なのか?
次々と疑問が浮かび混乱する。
そして誰かもわからぬ少年がキャサリンの方へと振り向き、不気味に笑いながら言ったのだ。
「お母さん?」と