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【病院で働くということ】・・・Vol.21:がんの告知とその後の治療

 今は3人に1人が悪性腫瘍で亡くなる時代です。もしがんにかかっても治療によって完治し、その後に心筋梗塞で亡くなったら死因は「心筋梗塞」で統計処理されますから、「がん」に罹患する人はもっと多くなるはず。
 「がん」はもはやみなさんのすぐそばにある身近な病気です。
 

がんの告知


 私が医師になった約30年前はまだ患者さんご本人へは「がん」の告知は憚られる風潮が少し残っていたような気がします。
 たとえ根治手術が可能な病態・進行度でも、一度ご家族に話をして了解を得てから本人へ告知し、その後に治療内容を説明するといったことがよくありました。
 最近ではほぼそのようなことはなく、最初からご本人・ご家族へ病名をお伝えすることが多いと思います。
 
 がんの告知には、患者さんの背景・病態・進行度を含めた癌の特性など、多くの複雑な要素を考慮して行われるべきであり、一律にこうあるべきということは出来ません。
 ただがん治療に限らず、現在ではすべての医療行為を行う上で、患者さんご自身が病名・病状の理解をしていることが大前提です。
 

病状の説明


 現在の医療では基本的に患者さんの病名や病状を、ご自身へ伏せられたまま治療を行うことはまずありません。
 たとえ治療を行うことで得られるメリットが少なく、鎮痛剤投与などの対症療法(Best Supportive Care)にならざるをえなかったとしても、患者さんご自身がその病態を理解していることが望ましいです。
 

消化器系悪性腫瘍の場合


 私が専門としていた消化器外科領域、特に胃癌や大腸癌といった消化管に由来する悪性腫瘍では、比較的早い段階で診断されれば手術を中心とした治療により根治を目指すことが可能です。

 但し、例によっては診断された時点で高度に進行しており根治的な切除不能と判断されることがあります。
 治療は化学療法や放射線療法が治療の中心となり、病状の進行に伴い癌による症状(疼痛など)の緩和を含めた対症療法へ移行する方が多いです。
 一方で、初診の段階で全く治療の手立てがないという症例は、超高齢者や重篤な基礎疾患を持っているかたを除けば極めて少ないと思われます。
 

大切なことは…


 臨床医は基本的なスタンスとして、悪性腫瘍ののみならず、すべての疾患に対する治療であっても患者さんやご家族に対し、病状と現状を包み隠さずお話しし、治療の内容・効果の見通し・メリット/デメリットも全て説明してから治療を始めると思います。
 
繰り返しになりますが、

 患者さん自身が病状を可能な限り理解をし、
 ご自身が納得される形で治療が開始されていくこと

が大切です。


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