医師のキャリアアップを考える(研修医~卒後5年目くらいまで)
医師は医学部を卒業して国家試験に合格し、臨床研修医になった瞬間から医師としてのキャリア形成が始まります。ここでいうキャリアとは臨床医としての経験を積んでいくことを指し、研究・学位取得などのアカデミックキャリアのことではありません(こちらの話は別の機会にしたいと思います)。
まず医師になって5年間は通常研修医・専攻医として臨床医としての研鑽を積むことになります。ここで大切なことは、とにかくたくさんの症例を経験し、臨床感覚を鋭くしていくこと。特に初期臨床研修医として勤務が始まった頃は何にもできない新人バイト生みたいな立場で病棟に置かれることになります。
まずは指導医や先輩看護師、時には事務スタッフなどに求められることをひたすらこなすことです。
そうすることで、徐々に職場でなにが必要とされているのかが分かるようになり、同時にできることが増えていきます。
時には自分の担当患者以外の症例にも興味を持って、同僚医師の診療の方法や、失敗事例を自分に置き換えて疑似体験をすることも必要です。
私がこの時期に勤めていた上司には「とにかく(臨床医としての)情報のシャワーを浴びろ。それで感覚は必ずつかめる。」と言われました。
いろいろと医師としてできることが増えていくと、自分が日々診療をしていく中で「これは楽しいぞ」と思うことが自然と出てきます。それが将来的な自分の専門性につながればいいし、そうでなくても自分の得意領域が見えてくる瞬間でもあり、同時に仕事のやりがいにもつながっていきます。
この時期が臨床医としてもっとも成長し、自身もそれを感じられるため非常に楽しく仕事が出来たと自分の経験からも思います。
一方で仕事以外の場面では、家庭を持ったり家族が増えたり、人生の中で大きなライフイベントが訪れることも多く、仕事とプライベートのバランスを取ることにエネルギーを注ぐ時期でもあります。
医師としてのキャリアを始めるこの時期では、まずは周囲から求められることを全力でやり、できることを可能な限り増やしていくこと、その中で自分が本当にやりたいことを見つけていけるのが理想の医師としてのキャリアスタートだと思います。