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医師の働き方改革について思うこと
医師の働き方改革が始まって約5ヶ月。
導入前後にはニュースやSNS上にも多くの意見が出ていましたが、少し穏やかになったでしょうか。
現場の医師は様々な意見を持ちながらも、現状になんとか順応しているものと推察します。
医師の働き方改革とは
そもそもこの働き方改革とは、医師の時間外勤務による負担を軽減し、過重労働による医療ミスなど医療安全面を考慮し始まったものです。
ただ医師の地域偏在など社会保障制度そのものや医師業務のタスクシフトをどうするかなど論点がたくさんある中で、まずはスタートするという見切り発車的な側面があったことは否めません。
それは、将来のある若手医師が過重労働により心身ともに疲弊し自ら命を断つという悲劇があり、そのようなことを繰り返させないためには現状を放置することは社会的に許容できないという世論もあり、ある程度は仕方がないのかなとは思います。
これまで日本の医療体制・皆保険制度は医療従事者の献身的な業務従事の姿勢により、世界一安価で安全と言われる今の医療水準が維持されてきました。
一方で、このような医療を享受する一般市民とってはそれが当たり前のことに感じているのも事実であり、制度維持のために歪みが生じていたことを理解されにくい状況であったと思われます。
現状の問題点
現在の医療水準を質も量も維持しながら、医師の働き方改革で見た目の業務時間を減らせばかならずどこかで破綻することは明らかです。
医師の総業務量を絞って現在の日本医療水準を維持しようとすれば必ず人手不足になります。
制度維持に必要な時間を医師に安い報酬で働かせ、全体の医療費を抑制し負担を負わせている医療体制自体が矛盾があるのです。
病院側も人件費高騰と診療報酬低下を危惧し、可能な限り現状維持を決め込んでいます。不眠不休で当直業務に従事する状態を「宿日直許可」とし、あたかも休憩時間としてカウントするような制度でごまかすような、きちんとした労務管理ができないところは病院として淘汰されるべきです。
現状の勤務形態と大きく外れるような不当な宿日直許可を得ている病院はいずれ医師側から見捨てられるでしょう。
受診者側に求めていくこともある
一方で限られた医療供給体制に対して、受診者側に不要不急な医療をいつでもどこでも求めることは出来ない、ということを啓蒙していくことが重要ですが、長年フリーアクセスを享受してきた今の日本国民にその意識改革はできるのでしょうか。
最近では救急搬送時に緊急性がなかったと診察後に判明した場合の選定療養費の加算が制度化されていますが、現場ではそれすら受け入れられない声が出ていると聞きます。
医療は不確実であること、人は必ず死ぬこと、医療にはお金がかかることを一般市民が今まで以上に理解していかなければ今後の医療は成り立たないと思います。
今後の方向性
医療従事者を志すこれからの世代が、夢と希望とやりがいを持って仕事ができる環境風土が醸造されていくことを切に願うばかりです。
一朝一夕には解決できない問題ですが、医療人の端くれとしてこれからの医師の業務環境を可能な限り改善し、受診者側にも必要な医療が必要な状況で提供できる体制づくりを、地域医療の観点から微力ながらも作り上げていきたいと思います。