病院の理念と方向性
病院はその規模・設立母体にかかわらずにかかわらず、地域の公共財だと私自身は考えています。質の高い診療を効率よく行い、病院の収益を上げていくことは病院運営において必要なことではありますが、もっとも大切なことはその地域でどのような医療需要があり、病院としてどのようにそれに応えていくのか、を常に考えていくことです。
周囲の医療機関の診療体制を十分に検討した上で、自院の強みを生かして差別化を図り、別の場面では他の医療機関と協調性をもって診療を行っていくことを考えること、そして病院の運営・管理を行う立場の人間が、その検討過程から現場で働くスタッフと議論し、理念を共有することが必要です。実はこの点を疎かにしている施設がまだまだ多くあるのではないかと思っています。
目先の利益(民間病院であれば売上・業績はもちろん大切)だけでなく、5年後・10年後にこの病院がどうあるべきか、それに向けてどういった施策を行い、達成に向けてのロードマップを描いていくか、予測が難しい社会情勢の中でもぶれない一本の芯をつくり、前に進めていく必要があります。
病院経営者・管理者はそこから目を背けることなく、日々忙しい診療に携わるスタッフを叱咤激励し、遠くて高い目標に向かってともに歩んでいく姿勢と気概を持ち続けること、時に困難が生じた際にも動じずに先を見通す視野を持つこと。難しいことですが、日々自分に言い聞かせていきたいと思います。