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ゴッホには、世界が黄色に見えていた?-精神科治療と色彩の秘密-

『ひまわり』 フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年
(画像:SOMPO美術館)

19世紀のフランスで、ひときわ鮮やかに咲き誇るひまわり。画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの代表作として知られる「ひまわり」シリーズには、単に自然の美しさを超えた何かが宿っているようにも感じられます。

しかし、この黄色が薬の影響で産まれた産物だとしたら?

この記事では、ゴッホが使った鮮やかな黄色が、彼の主治医によって処方された薬の副作用で生じた可能性について、医学と芸術の交差点から考察していきます。


ゴッホの精神状態と治療の歴史

こんにちはDr. クレヨンです🌻

先日パリ🇫🇷のオルセー美術館に行ってきました。

その中でも気になった作品がこちら。

『医師ガシェの肖像』 フィンセント・ファン・ゴッホ 1890年
(画像:Dr.クレヨン撮影)

ゴッホの主治医「ガシェ」の肖像画です。
そして左手に持っている薬草に注目しました
🌿

ガシェが左手に握っている薬草は、心臓治療薬として知られる「ジギタリス」。しかしゴッホは心臓が悪かったわけではありません。当時ジギタリスは精神的な興奮や不安を鎮めるためにも用いられていました。

ゴッホは生涯を通して心の問題に悩まされていました。気分の波が激しく、うつ状態や発作を繰り返す中、南仏アルルでの生活では特にその症状が悪化し、入退院を繰り返したことが知られています。

そんな彼を支えたのが、ポール・ガシェ博士という精神科医でした。ガシェ博士はゴッホの不安定な精神状態を少しでも改善しようと、治療を試みていました。

ジギタリス
(画像:wikipedia)

このジギタリスには、現代でも副作用として知られる「黄視(おうし)」という現象が伴うことがあるのです。


ジギタリス中毒による「黄視」現象

ジギタリスによる副作用、「黄視」は、視界が黄色に染まって見える現象を指します。この薬を服用していると、物の色が黄色っぽく見えることがあるのです。

ゴッホがもしこの副作用を体験していたのだとすれば、彼の目にはひまわりの黄色が、通常よりも一層鮮やかで、強烈な印象を与えていたのかもしれません。

彼が描いた「ひまわり」シリーズには、背景や花そのものにまで豊かな黄色が使われ、見る人を圧倒する色彩感覚が表現されています。これは彼の体験した視覚の変化が作品に反映されたものだったのか、あるいは彼自身が感じていた「生命力」や「情熱」の表現だったのでしょうか。

『昼寝』 ゴッホ  1890年 
(画像:https://www.aflo.com/ja/contents/1181416)

ゴッホが描いた「ひまわり」の鮮やかな黄色。それは、彼の情熱の象徴であり、生への渇望、そして精神的な葛藤を映し出すものでしたが、同時に治療薬による視覚の変容をも映し出していたのかもしれません。


著:Dr. クレヨン

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