「LINEの頻度あげたいときにも奥さんに料理してほしいときにも…応用行動分析で実現するコミュニケーション術」
こんにちは、精神科医の蟹江絢子です。今日は「応用行動分析」を使って、コミュニケーションを改善する方法について解説します。
「LINEの返事が遅い」「奥さんにもっと料理をしてほしい」といった日常的な悩みについて、どのように心理学のテクニックを使うと良いかをご紹介します。
応用行動分析とは?
「応用行動分析(ABA)」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。ABAは、相手の行動を変えるために、「環境(きっかけ)」や「自分の対応(褒める、無視する)」を工夫する方法です。これが対人関係にどう活用できるのか、具体的に見ていきましょう。
言い換えると、相手と自分で目標を共有せずとも、環境を調整したり、相手を褒めたり無視したりすることで、相手の行動を変化させる方法です。相手と自分で目標を共有すること(率直に話し合うこと)ができるといいのですが、ストレートには言い出しづらい、言っても伝わらないというときに使えます。
事例1: LINEの返事が遅い
彼からのLINEの返事が遅いと感じて、「もっとやりとりしたい」と思っている場合、応用行動分析の理論を使うことで、彼の行動が変わる可能性があります。
環境を整える
彼が忙しい可能性があるため、彼の環境改善を意識してみましょう。例えば、彼が携帯を見やすい場所に置くことや、仕事の合間にスマホを使う時間を作るような方法です。しかし、これは彼の生活スタイルに介入する関係性でないと、なかなか難しいです。
褒める
彼がLINEの返信がたまたま早かったときや、やりとりが続いたときには、素直に喜びや感謝の気持ちを伝えましょう。「すぐに返信くれて嬉しい」といった具体的な褒め言葉を使うことで、彼はポジティブなフィードバックを受け取り、返信が早くなるかもしれません。
無視する
返信が遅かったときには、すぐに返信せず、少し待ってから返事をしてみましょう。たとえば、返信のタイミングを彼のペースに合わせること(彼からの返事が1週間後であったら、自分も普段は、すぐに返信をしているのに、1週間後にする)で、「返信が遅れるのはあまり良くない」というメッセージを間接的に伝えることができるかもしれません。
事例2: 奥さんにもっと料理をしてほしい
共働きで忙しいから言い出しにくいけど、奥さんにもっと料理をしてほしいと感じている場合も、応用行動分析の考え方を取り入れることができます。
環境を整える
台所を使いやすくするために、便利な調理器具を揃える、モチベーションが上がるような食材を用意するといったことができるかもしれません。また、一緒にレストランに行って自分の食の好みを伝えることで、料理の参考になるかもしれません。
褒める
奥さんが料理をしたときには、その料理を褒めることが重要です。「おいしかった」「この味が好き」といった具体的なフィードバックをすると、料理をするモチベーションが高まるでしょう。
無視する
料理をしないときには特に何も言わず、外食や買ったものについても特にコメントしないようにしましょう。これにより、奥さんが料理をする機会が増える可能性があります。奥さんが「スーパーで買ったものなんだ」と言ったら、「あー、スーパーで買ったんだね」と繰り返し、「今度、〇〇の料理を食べるのが楽しみだな」とさらっと期待を示すことはOKです。
終わりに
「応用行動分析」は、発達障害の療育や認知症の介護、部下の指導、夫婦の関係など、さまざまな場面で使える強力なツールです。大切なのは、相手に対して思いやりを持ちながら、どのように行動を変えたいのかを考えることです。褒めることで行動が増える可能性が高いですが、その行動が双方にとって望ましいものであるように導いていくことが重要です。
最後に注意!
真面目な人に臨機応変になってほしいときは、「真面目にしてくれた」ことを褒めるのではなく、「臨機応変に対応したこと」を褒めます。不安が高い子どもには、「不安で慎重に行動したこと」ではなく、「泥だらけになって遊んだ」「高いジャングルジムに登った」「勇気を出して魚を捕まえた」など、「勇気のある行動」や「大胆な行動」を褒めます。
あなたの「褒めるパワー」は強力です、ぜひ相手を思って使ってください。