『私とこーる先生』

こーる先生というのはプロ棋士の阿部光瑠先生のことである。
青森県出身でありながら16歳でプロ棋士となった早熟の天才棋士だ。

私がこーる先生を知ったのは第二回電王戦のPVを観た時だ。
中学生の時に将棋を指すのを辞めて以来新聞記事くらいでしか将棋に触れていなかった私の目に第二回電王戦の記事が目に止まった。
コンピューターVS人間とかそんなような煽りだったと思うがよく覚えていない。とにかく私は無性に気になった。
そんな中観たPVではあどけない少年が秋葉原で遊んでいた。
頼りなさを感じつつも大物というのはこういうものなのかと思ったのを覚えている。

派手な演出で始まった第二回電王戦の初戦を私は食い入るように観た。
当時将棋の定跡や手筋は全くと言っていいほど知らなかったが阿久津先生の解説のおかげでなんとなくわかった気になれた。
将棋はそのうちにこーる先生が優勢となり、対戦相手の習甦にもミスが出てそのまま習甦の投了となった。完勝と言っていい。

私は感動した。
前情報が無く観ていた私はコンピューターが勝つと思っていたからだ。人間が機械に勝てる分野なんてほとんどないはずで、だからこそ私はこーる先生の勝利に酔いしれた。

「阿部さんの序盤の作戦は素晴らしいの一言です。相当の研究を重ねなければあれだけ見事な作戦は立てられないでしょう。作戦通りに進んでからの指し回しも完璧でした。相手の攻めを呼び込む展開なのでリスクも高く、決して簡単な将棋ではなかったのですが、全てを読み切ったようなすごい指し回しでした。正直阿部さんがこれだけ本気で対局に取り組むとは予想していませんでした。阿部さんの本局に取り組む姿勢と指し回しには、感動すら覚えます」
とは遠山先生の言葉で、いかにこーる先生が素晴らしい姿を見せたかがわかる。

現に第二回電王戦はプロ棋士側の1勝3敗1持将棋に終わる。この1持将棋というのも痛く感動したものだが、それは別の話。

私の目には田舎出身のオタク少年がその秘めたる力でコンピューターに勝利したように映った。
フィクションにありがちなやつだ。
しかし目の前では危なげなくコンピューターを圧倒した少年が少しホッとしたような、誇らしげな表情でインタビューを受けている。

これがプロ棋士か(無知)

とにかく棋士なんて片手で数えるくらいしか知らないような私はこの日から将棋、棋士にのめり込むようになる。
今の私の将棋はこーる先生のおかげで始まったと言って過言では無い。
昇級できなくても結果が出なくても、こーる先生が将棋を指しているだけで私は頑張れる。
こーる先生が勝てば自分のことのように嬉しい。

将棋にハマるきっかけをくれたこーる先生には体に気をつけて、末永く棋士として私にその姿を届けて欲しい。

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