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創価学会はアメリカでいかに現地化したのか?
音楽家、ウェイター、ウェイトレス、仕事のない人、芸術家などで、人種もいろいろ、ミックスでした。ありとあらゆる人がいました。経済的にもいろんな人がいました。私は、人生の中で、こんなにいろんな人が混ざっているのは経験したことがありませんでした。
(『アメリカ創価学会における異体同心』16頁)
私は、ボーイフレンドに強い願望がありまして、結婚願望が強かったのです。しかし以前のようにボーイフレンドに頼ることをやめました。それまでもボーイフレンドは、たくさんいました。しかし、ボーイフレンドがいることだけで安心していたのです。要するに、私は、情緒的に男性に依存する存在だったことに気づき、唱題によって、自分を見つめ、それを変え、自尊心を抱くことができました。 (同書、19頁)
SGIも、もちろん社会の一部だから、SGIもそういったエイズに対して、僕がエイズだとか、僕がゲイだということを隠すことができないような状態になってきたので、そのあたりからゲイの、レズのメンバーも、「自分はゲイだよ」、「レズだよ」と言いつつ、そしたら「あなたもそうなの」、「僕もそうなの」となってきて、それでグループが自然にできてきました。
(同書、47頁)
創価学会は、日本国内では多くの人がその存在を知っている。しかし、創価学会インタナショナル(SGI)として海外でも活動を行っていることは、一般にはそれほど知られていない。SGIの活動は世界192ヵ国・地域にわたり、およそ220万人の会員を擁する。とりわけアメリカはSGIの活動が盛んな国の筆頭である。
宗教社会学者の秋庭裕、川端亮、稲場圭信は、ロサンゼルス、ニューヨーク、ボストン、シカゴ、マイアミ、ハワイを計15回訪問、さまざまな人種、職種、社会階層のメンバー70人ほどへのインタビューと数十年におよび刊行されてきた英語機関紙の文献調査を実施し、現地での活動の参与観察をして、『アメリカ創価学会の55年』と『アメリカ創価学会における異体同心』の2冊を上梓した。創価学会の機関紙『聖教新聞』には、この2冊のことは一切紹介されていない。この2冊は、社会学的分析と考察を行った学術書なのである。しかし、日本とアメリカ社会を往還する55年の人間ドラマ、大河ドラマのような著作ともなっている。『アメリカ創価学会の55年』は、歴史社会学的な時代考証のもと、創価学会メンバーによるアメリカ布教がどのように進められたのか、彼ら彼女らがいかに生き抜いたのか、太平洋をはさむ創価学会とSGIーUSAの半世紀の描き出している。
『アメリカ創価学会における異体同心-二段階の現地化』は、組織的論、回心論など宗教社会学的な分析と考察をおこなっている。組織の変遷に関しては、SGIーUSA側にも資料がそろっておらず、インタビューで何人ものメンバーに確認しながら、それぞれの記憶の違いを整理し、その当時の機関紙誌で確認し、1960年、63年、67年、72年、77年、79年、81年、97年、2000年、2007年の組織改編とその背景、そしてタテ線からヨコ線への変化も明らかにしている。また、関係者へのインタビューと、数十年におよぶ機関紙誌をしらみ潰しのように何度も調べ、二段階の英語化・現地化を明らかにしている。アメリカの文化を考えると受容されるのが非常に困難であると思われる師弟不二が、なぜ浸透しているのか、その理由も探究している。
組織論、回心論、そして、日本とアメリカをまたぐ半世紀の歴史社会学の書としても、以下の研究をバージョンアップするものであると言えるのではないか。
宗教社会学者の中野毅先生の書評「アメリカSGIについての最新研究2書への書評」