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無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」は、ニューノーマルな購買スタイルになるか?

高輪ゲートウェイ駅に併設された、無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」とは?

2020年春から高輪ゲートウェイ駅に併設された、無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」。「無人コンビニ」として、レジに人がいない状態で商品購入から決済が完了するウォークスルー型の完全キャッシュレス店舗となっています。非接触リテールが進む中、無人AI決済店舗がニューノーマル(新しい常識)になり得るのか?をチームメンバーで体験してきました。※期待も込めて辛口でまとめています。

無人AI決済店舗の仕組み

TOUCH TO GOの店内に入店すると、まず最初にくぐるのが自動ゲート。このゲートを通ることでカメラが「買い物客」と認識し、商品を手に取るだけでなく袋に入れても追尾する仕様になっているとのこと。約50台のカメラやセンサーが設置された天井が、ユーザーの手に取った商品を常に識別し続ける仕組みのようです。

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日本でも無人AI決済店舗導入が始まったことへの素晴らしさを感じながらも、体験していく中で「今後の課題」となりそうな面もいくつか感じられました。以下にて、その内容を詳しくまとめます。

体験レビュー①思っていたよりもスムーズに購入できる反面、予想外の行動には対応しきれない

来店から商品選定〜購入までの流れはとてもスムーズでした。店内に流れる音声ガイドやディスプレイに表示されるフローにそって進めば問題なく購入完了できます。しかし、2人隣り合った状態で近くの商品を取り合った実験を行った際は、レジで商品が識別されませんでした。混み合っている場合は商品を識別できない可能性が高そうです。また、レジに進むまでの道は一方通行のためトラブルが起きた場合にレジから離れにくく、スムーズに購入できない歯痒さを感じるかもしれません。

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体験レビュー②一方通行な動線設計のため、回遊がむずかしい

一方通行でレジに向かって進むスタイルのため、入り口付近にある商品を取りに戻りにくい空間でした。ゲートをくぐれば買い物客として認識されるのであれば、商品を自由に取りやすいような回遊性のある店舗設計が望ましいと筆者は考えています。通常のコンビニなども一方通行で商品棚が陳列されているケースが多いですが、今回の店舗のように狭い空間の場合は、あえて棚を分断して通り道を設ける工夫も必要かもしれません。

体験レビュー③店内に漂う音声ガイドの自然さがなく、機械感が感じられる

AIと謳うだけあり、店内のインフォメーションや購入までのフローをサポートするのは店内に流れる音声ガイドのみ。ユーザーが迷わないように常に音声ガイドが流れていますが、少しでも異なる動きやレジ画面で行き来するたびに音声が都度流れるため、常に機械音を聞いているような感覚に。購入でもたつく場合などはユーザーに焦りを与える要員となり、心地よく利用できないかもしれないと感じました。

体験レビュー④商品のセレクトに偏りがあり、来場するユーザーのニーズを満たせていない?

商品のセレクトが「新幹線に乗るときに買うちょっといいおつまみ」感が多く、高輪ゲートウェイ駅に来場したユーザー(通勤する人、娯楽で遊びに来た人など)が「買いたい」と思う商品か?と問われると敷居が高い印象。普通のコンビニに置いてある商品というよりも、少し頑張って購入する類の商品が多いです。店舗の一角にはTOUCH TO GOオリジナルグッズも販売されており、こちらは「限定感」があり興味がそそられました。あえて商品を振り切って限定的にするコンセプトストアのようなつくりでも面白いのかもしれません。(例:全国各地のおにぎり・お茶をかき集め、美味しい組み合わせを見つける体験を提供する等)
無人AI決済店舗というユニークな切り口での体験提供であっても、最終的に購入に結びつくためのユーザーニーズをリサーチし、ブランディング〜戦略落とし込むことも重要ですね。

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体験レビュー⑤インテリアデザイン、空間としての完成度が低い。

ディバイスが剥き出しで設置され、配線なども見えているなど、設えやディテールに工夫がなく、店舗のインテリアデザインの完成度が低く感じられました。また、デイバイス、UI、コンテンツ、インテリアのデザインに一体感が無くエモーショナルな心地よさはあまり感じられませんでした。機械的な感じが強く、陳列された食品が人工的に見えてしまうのでもう少しナチュラルな方向のデザインにした方が良いかもしれません。

まとめ:無人という無機質な状態から、温度感を感じられる遊び心のある仕掛けを作るべき。

「認識精度をさらに上げていく」「決済の種類を増やす」などのオペレーション側の課題を前提におきつつも、「無人AIという無機質な状態を感じさせないための体験作り」は必要なのではないでしょうか。無人AIの「常に見張られている?」「無事に買える?」という潜在的な緊張感を引き出させず、商品を選ぶ楽しさやワクワク感を助長させるようなインタラクションや、おもてなしのポイントがあれば、対面での接客以上の体験を得られるかもしれません。

「非接触で購入ができる」という購買スタイルは今後さらに加速していき、2020年以降のニューノーマルになると想定されます。デジタルの中にいても、リアルならではの良さを失うことなく自然な良い体験を生み出していくこと。そのつなぎ目を、これからの時代を生き抜く私たちが考え続け、業界の壁を乗り越えて、進化していくことがより求められているのだと実感しました。ひき続き、様々な場所で生まれ始めている「デジタル&フィジカル」な体験を追い続けていきます。

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