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もうブームは終わり!?中国で無人コンビニが失敗に終わった理由

アメリカではAmazonが2016年12月にシアトルの本社内に初の無人コンビニ「Amazon Go」をオープン。日本でも、2020年春に日本でも高輪ゲートウェイ駅にて無人店舗「TOUCH TO GO」(8月の記事で紹介)ができるなど、これから世界のコンビニを中心に無人店舗が急速に増えていくのかと思いきや、中国では既にその多くが閉店し無人コンビニブームが去っているそうです。

この記事では、ネットで公開されているレポートから中国で無人コンビニが失敗した理由を探り、日本での無人コンビニの可能性を探りたいと思います。

Amazon Goに先行して無人店舗がスタートしていた中国

中国では「Amazon Go」より4ヶ月前の2016年8月、コンテナ型の無人コンビニエンスストア「Bingo Box」のモデル店舗が、広東省中山市にオープンしました。広さはわずか4.5坪=15㎡ほどで、なんと一般的なコンビニの10分の1以下のサイズでした。

こうしたコンビニは、
1.  無人なので人件費がかからない
2.  小型であるためテナント料が安い

2つの理由から有人店舗の15%以下のコストで運営できるという運営者側のメリットがあり、”すぐに儲かる利益の出やすいビジネスモデル”と思われ、投資家達の注目を集めました。

”すぐに儲かるビジネスモデル”だから投資が加熱さらに店舗数が拡大

2017年には無人コンビニ関連企業には総額40億元(約620億円)以上の投資が集まり、1年間で約30社が新規に設立され店舗数も急拡大しました。天虹商場が展開する「Well GO」(2017年8月オープン)や、京東商城が展開する「無人超市」(2017年10月オープン)などです。中国では、ユーザーのニーズから自然発生的に無人店舗が増えたのではなく、投資熱がバブル的に店舗数を拡大させた要因でした。

2018年に入ると早くもそのバブルが崩壊が始まります。店舗撤退やリストラのニュースが目立つようになり、ついには破産する企業も現れました。無人店舗のパイオニアだったBingo Boxもその例外ではなく、2018年以降、大規模なリストラと閉店が進み、今ではは北京などわずかな店舗が残るのみとなっています。

失敗の理由はユーザー体験(UX)の軽視

投資的なバブルで必要以上に店舗ができてしまったことも閉店ラッシュを引き起こした要因ですが、店舗でのユーザー体験(UX)も問題だらけだったようです。無人店舗「Bingo Box」のでの買い物体験はこちらのプロモーション動画で紹介されています。


いくつか実際の体験レポートをまとめると問題は大きくは3つあることがわかります。

1. 品揃えに魅力が無い
無人コンビニを展開する企業の多くが、テクノロジー系のスタートアップだったために無人化するためのテクノロジーを優先して店舗が計画され、肝心の品ぞろえに魅力が無いケースが多かった。そもそも買いたい商品が売っていなければユーザーとしてはその店舗の行く理由がありません。

2. 有人店舗より買い物が面倒
都市部に多く出店された無人コンビニの周りは、すぐに入店できるのに、スマホ操作を必要とする無人コンビニをわざわざ選ばなければならない理由はありません。ユーザーからすれば入店時にいちいちスマホを操作したり、レジで商品を並べて識別させたりするのがストレスとなり使い勝手の悪い店舗体験になります。

3. RFIDタグにコストがかかり商品価格が高い
無人運営に必要なRFIDタグのコストが上乗せされ商品価格が高くなることもユーザーとしては納得がいきません。同タグの価格は1つあたり0.3元(約5円)。これを全商品へと設置する必要があるため、商品の数だけコストがかかります。最近ではRFIDタグのコスト対策として、「Amazon Go」のように画像識別技術をレジに採用する店舗が出てきていますが、データ不足を理由に商品が認識されないトラブルも多く、こちらもまた無人店舗が敬遠される理由となっています。

そもそも、コンビニで買い物をするとき、ユーザーは何を期待するでしょうか? おそらく、期待するのは「品揃えの良さ」「価格の安さ」「立地の便利さ」などで、”無人”か”有人”かは本質的には重要ではありません。

中国の無人コンビニの優先順位
儲けたいという投資ニーズ  >  テクノロジーニーズ > ユーザーニーズ

結論としては、中国の無人コンビニの失敗はその本質的な優先順位が逆であったために肝心のUXが置き去りになり、ユーザーに支持されず普及しなかったと思われます。

中国の失敗に日本の無人コンビニが学ぶこと

日本でも大手コンビニチェーンが無人店舗の実験を始めていますが、日本で無人化を後押ししているのは人手不足という社会的背景が大きいと思います。高輪ゲートウェイ駅にて無人店舗「TOUCH TO GO」(8月の記事で紹介)を体験した感想では、
人手不足解消  >  テクノロジーニーズ > ユーザーニーズ
の優先順位で計画されているのでは?と疑問を感じました。ユーザーニーズを一番の優先順位として計画され、顧客満足度の高いUXが実現できて初めて無人コンビニが普及する可能性があります。その観点から、しっかりとUX向上の手段として無人化している事例を研究することで、私達のチームもその実践をしていきたいと思います。


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