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VRChatワールド『わたし=に=わたし』の裏話

なんの因果か、VRChatのワールド、2作目を作ってしまったのでした。
このnoteではネタバレ部分も含めて書いていくので、未プレイの方はぜひ挑戦してみてくだされ!
しっとりしたパズル系謎解きののような何か。


作ったいきさつ

実は、前作の『ココロ=ト=ココロ』でワールド制作は最初で最後にしようかと思っていたのでした。
そんな折、一人で過ごしているとフレンドさんがjoin。感想と共に、「次回作はどんなの作るんですか!?」と無邪気に問われたのでした。

人の心理とは不思議なもので、作る気がなくともこういう質問を受けると、「うーん、作るとしたら……」という方に思考が誘導されがち。純粋に楽しんでくれた方がいて、次作を望んでくれている期待に応えたいっていうすなお~な気持ちも芽生えたのかも。

ただ、その段階ではアイデアはまだ出ず、協力ゲーにするかどうか、もやもやしていました。
そんな時、suzuki_i氏の常設展「額縁の庇護を逃れて」を訪れたのでした。

自分が作品に干渉したり、自分が作品の一部になるといった試みの展覧会。この中で、自分が後ろ向きに映る絵を見て、すごくビビッと来たのでした。

決して振り向かない自分がいる

光景自体も美しい。それもあるけれど、絵の自分が背中を見せていることにいわゆるエモを感じたのでした。
自分を決して認識しないし、触れられない。それはまるで未来の時間軸にいる自分のようにも感じられて……。
そんなわけで、この作品が終盤の演出の元になったのでした。

ちなみにsuzuki_i氏はアバターフィギュアの制作者でもあります。アバターフィギュアってもっと面白い使い方できるんでない?という発想も元になっています。

さらにさらに、氏は3人称視点で進むワールドも公開しており、わたしにわたしのギミックにも似ております。いつの間にやら強く影響されている気がする……。

狂気の発想、自分と協力

作品を見た後は、流れるようにアイデアが固まっていきました。

展覧会の絵が美しかったなあ……。
⇒ アバターフィギュアを有効活用したら面白くなりそうでは?
⇒ ココロトココロのギミックを活用すれば、自分とアバターフィギュアで複数の物を持っているように見えるな……。
⇒ そうか! 今度は自分と協力だ!

こんな感じ。どんな感じだよ。
でも、複数人協力ワールドを続けても仕方ない気持ちもあったのです。

ココロトココロを好きだった人にアプローチする、よりは。
ココロトココロに向かなかった人にアプローチする。そんなコンセプトになったのでした。

例えば……

  • 協力ゲーにフレンドを誘うのにいまいち勇気が出ない。気軽ではない。

  • いっそソロプレイで楽しみたい。

  • デスクトップでも楽しみたい。

  • ココロトココロでも難易度が高く感じてしまう。

このあたり。
こうして、自分と協力、しかも易しい。がテーマになりました。

自分と協力ってネタ、数出せるのか!? って思ったのですが、案外出るものでびっくりしました。制限の強さは脳を絞り出す強さなのかもしれない。

一石投じる、10/20システム

ただでさえ甘めの難易度を、さらにあんまく仕立てたのが半分集めればいいよシステム。

謎解きワールドって基本的に、100点を取らないとクリアにならないの、冷静に考えて結構なことだと思ったのでした。
優秀な解答者と優秀な作題者がいても、たまたま苦手な発想、たまたま悪問になるのはあり得るもので。ワールド中に少なくとも1題詰まる問題が存在する確率って、存外高くなるのでは。

大体はヒントシステムを追加しようねってことになるのですが、初心者ほど使いたがらないという話もあるとかないとか。
そんなわけで、今回は別のアプローチを取ったのでした。

あまあまシステム。

ギミックの中には酔いやすいもの、アクション性が高いもの、(何かの拍子にバグで動かないのが怖いもの)とかもあるので、スキップ可にしておいて良かったなと。
途中参加の人でも全問トライせずに合流できるというのも強みかなと。

身の回りでも「心理的な負担が軽くなって嬉しい」という声が多く、自分の想像以上に評判が高く、ありがたいところでした。

余談:
たけすぴおん氏の謎剣も"100点でなくて良いぞ"系。こちらも取り組みやすくて初心者にこそオススメ謎ワ。

個々の部屋解説

今回は小粒の部屋たちなので、小ネタを手短に。

鏡のわたし

実は鏡写しではない。左右が逆転していないのですね。アバターフィギュアの改変をかなりうまくやればいけると思うのですが、コストに見合っていないと思ったので、見送りでした。

客観視するわたし

作成するのにアルティメットスーパー苦戦部屋。
こちらのギミックを改造して使っております。

元のギミックでは快適な一方、カメラを自分の背中に追従させずに固定するよう改造した途端、自分の技術では非常に不安定に。

こちら、リアルタイムの特定のカメラの映像で視界ジャックする、という仕組みなんですね。
なので、解像度が高すぎると処理落ちしながら視界ジャックする形となり、結構やばいガクツキになり得ると。
(改変前だとガクツキはほとんど無いのですが……)

そこで、解像度を落として負荷を出来るだけ減らしたのでした。
正直、わざとというレベルで画像を落としているので、そういう演出のようにも見えるのもメリットかもしれないです。

このギミックを使えば、アバターフィギュアと違って、客観視する自分をカメラで撮ることができます。
そのため、最後の部屋にこのギミックを仕込んで、明日の自分をカメラで撮れるようにする……。というのも考えていたのですが、改変力や演出の辻褄を考えて見送りとなったのでした。

並行世界のわたし

最初の「自分が逃げていく~!」からの「こうすればいいんか……」っていう流れの独特の脱力感が割と好き。
簡単なステージに見えて、最後の部屋の伏線にもなっていて、意外と大事。

過去のわたし

なんかめっちゃ可愛く見える

今回の目玉ギミック。何だか分からないけれど、妙に可愛い。
部屋に入った瞬間に追従してくることもできたけれど、そうすると今度は怖い。急にホラワのノリになる。
そのため、「今からこんな感じの子が後ろから来ますよ~」っていうのを見せるために、Useさせる必要があったのですね。

自作にして愚直な面倒さがあったギミック。
一定間隔フレームで自分の頭、胴、両手足の位置と角度を記録し、一定時間後にその位置と角度に動くというやつ。
要するに裏では数百個の位置と角度情報が記録して再生されるのですが、思ったほど負荷は高くなくて良かった~。

鏡のわたしが見る世界

客観視するわたし × 鏡のわたしの応用っぽい何か。
鏡のわたしが見ている世界、作った自分でも頭がおかしくなりそうな挙動で楽しい。

実は、手持ちのカメラやパーソナルミラーを使えば見えない壁も見える。緊急脱出の手段の一つといえば聞こえはいいけれど、回避策がわからなかったとも。

参考にした記事:

影のわたし

やることは超シンプルだけど、アクション性があって人を選ぶ。
ライトの設定に罠があって怖かった。
ワールド制作側で、Light ⇒ Render Mode ⇒ Important
としないと、設定によって(VRCの場合、ピクセルライトの数がオフ)影が見えなくなるので注意でした!

集まるわたし

応用編。最後だしこういうのが無いとね。

ラストミュージアム

わたし=に=わたしのタイトル回収。わたしにわたそう、という文がある。
私に渡しということだったんですな。
さらにいえば、私、荷渡しでもある。

ロゴの「に」はプレゼントの荷になっている。

アバターフィギュアの挙動は、最初の子を除き、
 昨日の自分が消える⇒振り向く⇒受け取る⇒前を向いて進む⇒消える
というループになっている。
過去の自分が消えてから振り向くのですね。

過去を振り向こうとして、初めてプレゼントの存在に気づける。
でも、その頃には昨日の自分はもういない。プレゼントだけが残っている。

すなわち、プレイヤーのあなたが! 実際に明日になった時!
昨日このワールドでプレゼントもらったな! って振り返る!
それを思い出してもらいたかったんですねえ!

昨日と明日のわたし

自分と協力する。
過去の自分に感謝したくなる瞬間って、人生の中で特に嬉しいよな~ってのがピンと浮かんだのです。後悔の逆バージョン。偉いぞわたしってやつ。

つまりですね、常に「昨日の自分ありがとう」と思えるような行動が毎日できれば、充実ハッピーな人生になるわけですよ!
……できるものならなあ!

微妙な一日を過ごすこともあるわけで。
何もなせなかった日の自分として終わらせるのが辛いわけで。
そういう時、リベンジ夜ふかしすることもあるのかもしれないのですな。

そもそも論、これが明日に渡せばOK! これをしたら1日の目標達成! 
みたいな具体的なもの、大抵の人は持っていないと思うのです。
だからこそ、漠然と不安で微妙な一日に感じてしまう。

一日の終わりは、擬似的な死。
なのに、明日の自分に残すものが何なのかすら分からない。
そりゃ、不安になって当然だ。

では、改めて。あなたにとって、これだけは明日の自分に残したいものってなんでしょうか?
それがわからずに漫然と明日の自分にバトンを渡すのって怖くないですか?

……というのもコンセプトでした。
重いー! 重すぎるよー!

易しいワールドかと思ったら、「あなたにとっての"アレ"」は何ですか? というある意味もっとも難しい謎がありました! というお話。

ちなみに私自身、毎日のように「まだ寝たくないー!」となっているので、こういうストーリーになったのでありました。
だからこそ、みんなの心のきらめきが知りたくもあって、ラストに写真大喜利できるような仕組みを作ったのでありました。

めでたし、めでたし。

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