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VRChatのワールドを作った話 ~裏話編

協力なぞとき『ココロ=ト=ココロ』のワールドを作った話シリーズ。
過去に2つ記事を書いてますが、今回はネタバレ有りの裏話編
そのため、是非プレイ後にお読みくださいませ。
ぶっちゃけ、書いている人が楽しいだけの文章だぞ!

過去の記事は以下にあるぞ。

コンセプトと感想編:https://note.com/dpc_fish/n/nc2223f012ce5
制作技術Tips編:https://note.com/dpc_fish/n/nd0b8282ac4c7

今回もかなり雑多なので、興味あるところだけでも拾っていってよいぞ。

ネタバレ有りのワールド思想

ラストの演出だけでも見られたかった話

途中の部屋は簡単にしたつもりなので、最後の部屋と演出だけでも見てって~! って気持ちで作っておりました。
伝え方の発想力が問われる部分もあるためか、難しいという感想もちょいちょいあったりしたけれど……。

心情的には自由に解釈できるので、プレイして味わった感覚をそのまま持っていただいてOKな感じ。
だけど、伝えたいところが一つだけ

この辺、技術的に凝ったことは全然していない! ちょっとの工夫で色々できるんだぞ! ということ。
部屋の配色も虹の階段も、明度を揃えたキューブばかり。彩度を変えるのも、そういうポストプロセスがあっただけ。
だけど、VRCのワールドギミックって、ノーギミックに近いシンプルか、モデリングもギミックも凝りすぎたプロ仕様みたいなところの2極の印象があるんです。

古き良き同人ゲームのような、ちょっとプログラミングできますよってくらいの人の空気がもっとほしかったのです。
技術や時間の制約の中での創意工夫が大好きなのだ。
綺麗なモデルが無くても、ガチガチのプログラムが無くても、こういうものが作れるんだよって前例を見せたかったという気持ちでした。

Vの意味合い

vってピースサインにも見えるけれど、ハートマークもvとして表現されるよね、という話。ワールドのサムネイルのハートはvにかけていたりする。

サムネでは離れていたハートが、クリア後にハートとハートが合わせて見せるって案もあった、のだけれども。
実際にイラストとして見るとちょっと恋愛や性的なニュアンスが強くなりすぎてしまうので、お蔵入りになったのでした。

ここまで来るとちょっとうわぁな感じに見えちゃう

ワールドさんが一人歩きし始めた思想

ストーリーものでキャラクターが勝手に歩き出すというのはあるあるですが、ワールドにおいても出てきたのです。

一見、ユニバーサルデザイン的な感じで、万人が遊べそうなワールドに見えるではありませんか。
でも、ワールドの内容を並べていくと、すごく気になる共通項が滲んでくるんです。
推測してみましょう!

  1. 虹がテーマ。7部屋にしている。

  2. ラストのピースサイン。

  3. Green Roomの「ピンポーン」等の音の印象

  4. 会話OKのアイコン

丸は「OK」の意味に見えるが…


正解発表!
そう、これらはどこか、「多様性」とか、「文化差」を意識してしまうところなのです!

まずは! 虹そのものが多様性の象徴になってしまっていますね!
国によって色数が違うという話題も多いのですが、実は英語圏でも7色とされることが多かったりする(童謡で虹は7色だよって歌がある)。
ニュートンが音階のドレミファソラシの7音を虹の色に対応付けたとこから来ているんだそうな。

ピースサイン
全然伝わらなくてもおかしくないサイン。そもそも侮蔑の意味になる国もある。

アメリカ人にとって意味がわからない日本の写真撮影:

音の印象
ピンポーン! という音が正解に聞こえない文化圏もあるかもしれない!
でもここは日本人に対する分かりやすさを重視したのでした。

クイズ番組の正解効果音が日本とアメリカで違いすぎる:

会話のアイコン
他の文化圏だと✔を入れたアイコンの方がよく見かける!
ただ、ここも日本人的にはちょっと引っかかってしまうので、単なる丸に。

そんな感じで、ワールドの中にどことなく多様性であるとか、少数派はどうするんでしょうなあって香りがほのかにするようになったのでした。
あんまり意図していない。世界がそう言っていた。

元ネタ類

CRIMSON ROOM

脱出ゲームの始祖ともされる、FASCO-CS氏のFLASHゲー。スクリーンに映し出される人の影ダンスが印象的なやつ。続編にVIRIDIAN ROOM やBLUE CHAMBER、WHITE CHAMBERがある。
Red RoomやらOrange Roomやらの色名 + Roomがこのあたりを彷彿とさせるのですが、思い出した人はどれくらいいるのだろうか……。
当時は謎解きというより、シビアなクリック判定で細かく探索するのが主だったりする。

星のカービィ 夢の泉の物語

虹の色文字を使った仕掛けはこのゲームのネタが好きだったから。
ステージ名がVEGETABLE VALLEY(VioletのV)、ICECREAM ISLAND(IndigoのI)と、虹の色名の頭文字になってて大変おしゃれ。
6面までは食べ物 + 場所になっているが、ラストのみRAINBOW RESORTとなり、食べ物の代わりに虹が入る。普通は虹の頭文字とは気付きにくいので、ちょっとした種明かしも兼ねていると思う。センス高すぎません?
どこのステージ名見ても「その曲最高だよな~」ってなるやばいゲームでもある。

オズの魔法使い

映画版がOver the Rainbowの出典。
お供の3人が知識や心や勇気が無いと悩みを抱えているけれど、旅の経験を通したり自信の持ち方次第で、無いって気にしてるけど実はもう持ってるんじゃないの? といった感じの話。
最初はモノクロに見えていた世界も、実は最初から色づいていた世界だったというのもこの辺に絡められそう。

個人的にオズの魔法使いというより、バンプール作品のいろづきチンクルの恋のバルーントリップに思い入れがある。
ちなみに、クリア時のジングルはド↓ド↑~シソ~。Over the Rainbowのメロディーから取ってたりする。

モノクロからカラーになる仕掛け

フリゲ界隈で遊んでいたモスー氏の大好きな古めの作品から。
恐らく色塗りという工程を削りながら、なおかつ演出にするという一石二鳥の工夫から来ている。氏も他作品からインスパイアされていることも多いので、元ネタの元ネタがあるかもしれない。
今も元気にしていることを、心から願っています。

各部屋の想定解法と裏話

Red Room

丸いボタンと▲マークの部屋。
想定解法:
1. 自分の部屋から見える▲の位置をジャンプや指差しで伝えあう
2. お互いに自分の部屋の▲を押してもクリアできないが、押した位置が相手に伝わるので、そこから察する

当初アイデアでは無かった部屋。ただ、次の部屋から始まると難しすぎると思って追加。テストプレイではここでも若干時間がかかることもあったので、入れておいて大正解。
自分の部屋の情報を相手に伝えるワールドという、基本ルールの説明を果たしてくれる大事な子。こういうのがきっと大事。縁の下の力持ち。

Orange Room

Pick Upすると同期して動く鼻付き箱の部屋。
想定解法:
1. お互いに置くべき位置を知らせ、向きや位置ずれをジェスチャー等で修正をお願いする。
2. 自分の位置に箱を置いて相手に知らせる。もう片方の箱はジェスチャー等で知らせる。

一見同期ずれしやすそうだが、箱の分身はローカルで位置をあわせているため、見た目や挙動が安定して動いてくれている。
最初のギミックアイデアであり、最初から最後まで修正が発生しなかった。手のかからない優等生な子。やってるうちにクリアできる系なのも大変によい。良い子すぎ。

Yellow Room

ガラス越しに3つの動物や表情を伝える部屋。
想定解法:
1. ジェスチャーや視線、表情で教え合う。デスクトップの場合、伏せやジャンプ、視線の向きを駆使する。
2. 絵柄が1つでも分かれば残りは16通りしかないので、ごり押す。

自他ともに好評のジェスチャー部屋。無言勢力が試される。 ジェスチャーや表情変更だけでなく、視線の向きや歩き方等、表現方法をフルに駆使する発想力も必要。 デスクトップに不向きなように見えて、這う、座り歩き、ジャンプで伝わるような動物のチョイスをしている。

余談:
回答パネルの作成が素朴なギミックに見えて滅茶苦茶大変だったやつ。 絵柄に応じて0, 1, 2, 3が割り振られており、上ボタンを押すと +1 して 4で割った余りを返す(要するに4になると0に戻る)。 ところが、下ボタンを-1とすると問題がある。-1を4で割るとUnityの計算仕様で3に戻ってくれないのだ。 どうしたものか…と思っていたが、下ボタンで+3する仕様にして解決。完全に発想の逆転。一人逆転裁判を楽しんだ気分。浮力を発見したアルキメデスのごとく全裸で外を駆け出したくなるほど嬉しかった。

Green Room

3つの音ボタンとボタンで動き続ける箱の部屋。
想定解法:
1. 音の印象、鳴らす頻度を利用し、移動すべき方向や止めるタイミングを相手に知らせる。
2. 後ろの部屋に戻れば相手の姿が見えるので、ジェスチャーを利用して動かすべき位置を伝える。

音を使ってコミュニケーションするネタを一つ入れたかったものの、中々難しい。結構な問題児で最後まで調整していた。ラグの影響も受けやすいので、クリア判定は相当ガバガバにしていたりする。

どちらか片方が枠に収まれば、後は勝手にクリアしやすいのが救い。
当初、音の印象はもっとナチュラルなものにしていたものの、難易度がキツくなるので調整。文化的な差が出てしまうけど気にしてられなかった。

音の箱を持ち運び可能にするアイデアは、テストプレイのフレンドからいただいたもの。改修コストをほとんどかけずに遊びの幅が広がるアイデアが大変ありがたかった。

ボツギミックのオタマトーン的な子はこのGreen Room出身。遊び心でしかないが、音の箱と混ざると情報量が増えすぎてごちゃるのでボツになった。

blue  Room

帰ってきた動物と表情。今度は棒と箱で表現だ。
想定解法:
1. 棒や箱を置いた時の形で表す。
2. 棒や箱を持ったままジェスチャーしたり、軌跡で文字を作ったりする。
3. 絵柄が1つでも分かればゴリ押しで以下略。
4. (ギブアップ気味に)Yellow Roomまで戻ってジェスチャーする。
なお、Green Roomの音の箱を持ち込み、分かった/分からないの意思表明も可能。

今までのギミックの応用ですってやつ。ゲーム的にも楽しいけど、制作コストを下げられるというメリットがめちゃ大きいので助かる。

相手に伝える手段がかなり豊富にある部屋。最近のゼルダみたいな、解法がいくつもあるよっていうのがすごい好き。
姿が見えなくても確かに相手の存在や意思を感じられるとこも好き。

ネタ出し時に意思疎通系のボードゲームをいくつか調べていたものの、ピクチャーズ(https://hobbyjapan.games/pictures/)のイメージが強いかも。

猫という素朴な生き物が意外と難関なのが面白い。
招き猫のように手を上下させたり、顔をクシクシしたり、猫パンチしたりするのが候補か。こういうの考えるの楽しいよね。

indigo Room

ベルと数字の部屋。
想定解法:
1. 相手の音が鳴った時に数字が表示されることから、何度かベルを鳴らし合う。音の高さに従って奇数か偶数の数字が表示されることから、自分のベルの数字を推測する。相手の理解度を予想し、互いに分かってそうなタイミングで演奏を始める。
2. 間違えた時にブブッと音が鳴るので、鳴らないパターンを総当り的に探してごり押す。
3. 自分の部屋に表示される数字をblue Roomのギミックを使って伝える。ジェスチャーで示す他、前面の数字を指し示すことでも教えられる。
4. Green Roomの音ギミックを鳴らす回数で相手のベルの数字を伝える。そんな人は多分いない。いたらしい。
5. 最強ツールQvペンが手に入るので、壁貫通もしくは後ろの部屋に戻って数字のルールを伝える。

ラスト1つ前の難関担当。
一見、意思疎通がほとんどできない部屋に見えるが、これまでのアイテムを使うとかなり色んな手段があったりする。

ギミックに対する理解力だけでなく、相手の理解度を推測する能力が必要なのがポイント。いわゆる心の理論と言われるやつに似たとこがあって、求めるスキルとしては高度。
単なる謎解きでなく、相手への想像力をぐるぐる巡らせることでしょう。

操作が多かったり考えることが多いこともあり、次の部屋で姿が見えるカタルシスを得るための前段の役割を果たしてくれる。

余談:
原理的に同期ずれが起きにくい、隠れた秀才な子。相手から鳴る音にはラグがあり、判定処理と同時に聞こえる仕組みになっている。音が聞こえた後にベルをUseするはずなので、違和感無く演奏することになる。相手が鳴らしたっぽい動きから実際に鳴る音は遅れるのだが、部屋が分断されているので、見えない。奇跡的に色んな都合がよい子に仕上がっていたのだ。

Violet Room

虹の色名が全て揃うので、並び替えていく部屋。
想定解法:
1. 謎解きらしい謎解きが存在する唯一の部屋。分からないと詰まりうるが、難度はかなり抑えているはず。やるべきことが分かったら、Qvペン等で相手に伝えたり伝えなかったりしよう。ギミックの性質上、同期ずれが発生するリスクが高い部屋。何か変だと思ったらResetボタンを押してみよう。
最後のvとvは1つの文字に見えるよう、恥ずかしがらずに、しっかり引っ付けよう。ここだけ判定がシビアめ。
2. blue と indigoだけ頭文字が小文字になっている。他は頭文字が大文字。見栄えから、先頭以外は全て小文字になると推測できる。
つまり、blue と indigoは頭文字を使い、他の色は頭文字以外を使うように設置すれば、単語のほとんどが分かってしまう。
なお、スペルが分からなくともindigo Roomクリア後に曲名が表示されているので、そこに戻れば分かる設計。

ある日、虹の色名でRainbowって綴れないかなー? 綴れるやん! って閃いたのでこの謎ができました。やったね。

当初、Violetの文字は宙に浮く仕様。テストプレイでVioletを中央に設置したままで何となくクリアするチームが続出し、感動が半減しちゃうのが気になっていたのでした。
なんとか自然にVioletを触るのを最後にさせたいなーと思ったところ、土壇場で重力をもたせるアイデアが降ってきた。助かったー。

改めての感想

いろいろなところから好評の声をいただいて本当にありがたい限りであります。万一ここまで読んでしまった方がいたとすると、裏話はさておいて、プレイ時に抱いた感想を大事に持っていただきたいなと思います。

色々細かな点に気をつけて作ったのはあるものの、ワールドで見せたり伝えたりしたい「良さ」をそのまんまぶつけられたのが良かったかなという印象です。
謎にしても見せたいポイントにしても、あらゆる意味で分かりやすさって大事で、労力を注ぐとしたらここだと強く思っています。

素朴な見せ方で、ストレートに良さをぶつける。これでいいんだよこれで。
そういうやり方もあるってことを、どこか見せつけたかったのでした。

4月から8月にかけての作業の日々がかけがえのない記憶であったことを、改めてここに書き留めます。
本当にありがとう!

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