劣化
散歩中、これを見つけてその正体がわかった時、思わずニヤリとした。
なるほど、これなら長年使い続けても、本来あるネットの部分がないので、取り替える作業が発生しない。
雨や酸素に触れて錆びたりすることはあっても、本来の機能は失われない。
古くからそこにあるものを見ると、だいたいどんな使われ方をしているか、自然の影響をどのように受けているかだいたいわかる。
海辺であればテトラポットの劣化具合で、潮の満ち引きの程度がある程度わかる。
よく閉会されるドアの下の床は、弧を描いたような線が入ってることもある。
靴の底のすり減り具合で、その人のあるき方もわかる。
劣化とは、何かしらの運動が発生したあとの記録のようなものかもしれない。
そう考えると、職人の手にはまさに記録がびっしり残っている。
取れない汚れ、道具を長年使い続けて少し歪んだ指や爪、熱さや寒さに耐えて分厚くなった皮膚。
身体的にはダメージであり、劣化ともいえるが、
誇るべき劣化だと思う。
そこで、劣化の対義語を調べてみたが、なんと僕が調べた限りでは存在しなかった。
対義語は、だいたい+と−の構造になっていることが多いが、劣化には対義語がない。
もしかすると+も−も含んだ言葉なのかもしれない。
このバスケットゴールを見たことがきっかけで、劣化という言葉が少しポジティブに受け取れるようになった。