細い月と金星と向田邦子さん
家人と夕方散歩。空が今日は格別に綺麗。
ラベンダー色の空に、爪の先のような白い弓なりの月と、やや離れた場所にキラリと輝く金星。
わー、綺麗な空~
歩きながら、なんども見上げてはうっとり。
ああっ、飛行機だ
ラベンダー色の夕暮れの中を、チカチカ、ライトを点滅させながら、少しづつ進んでいく。
ねぇ、もし、あの飛行機が爆発して、落っこちて来たらどうする~
一緒に歩いていた、家人の言葉に思わずギョッとする。
炎上ものの発言で、いつも私の反応を楽しむ家人にではなく
その内容に・・・
たまたま見ていたテレビで小泉今日子さんが向田邦子さんの本を紹介されていて
うっすらとしか知らない向田邦子さんについて、ちょうど検索したところだったからだ・・・家人はそれを知らないのに・・・
台湾の飛行機事故で亡くなられた事。弟さんが身元確認に行き、おでこの形でお姉さんだとわかったと言うこと。
先を生きた華やかな人の最後は飛行機事故という、私からすれば恐ろしいものだけれど・・・
人と違う華やかな人生を生きた人らしい最後にも思えたりもして・・・
私から見える向田さんは、なんだか心の内側で男性性と女性性が真剣勝負で腕相撲をしているような、互いに容赦なく一歩も引かないようなそんな引力に生きた人のように思えた
自身の命を綺麗に昇華して駆け抜けた人
白く輝く細い月が、向田さんのおでこの生え際に見え、輝く金星は華やかな人生と重なり
先輩、今の世をどう生きてけばいいんでしょうね?なんて
チラチラ飛び回る蝙蝠と暗くなる西の空
何がどうだろうが、大丈夫。 あなたはあなたを生きなさいな
向田さんがあちらから、お手製の黒いマントを翻しながら、ボソッと私にささやいた気がした。