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日本車の“庶民派”V6エンジン搭載車が無くなりそうって話
注意‼️
この記事は
車好きが読む前提で
書いています。
突然ですが、私はV6エンジンが好きです。
V6エンジンが好きと言っても、各メーカーの技術の粋を極めたような、日産で言うところGT-Rにも搭載されているVQ・VRエンジンや、ホンダのNSXに搭載されていたC30シリーズのようなスポーティーなモデルでは無く、もっと庶民的なのが好みです。
例えるならば、トヨタのマークⅡクオリスやエスティマに搭載されていた、MZ・GRシリーズや三菱の6G7シリーズのように、ミドル〜アッパークラスのセダンやワゴン、ミニバンにも採用していた“庶民派”な大衆車向けV6エンジンが私は好みなのです。
かつて大量に存在していた“庶民派V6エンジン”は、昨今車格を超えて主流となっている直列4気筒、直列3気筒エンジンと比べると、滑らかに上まで回るシルキーなエンジンフィーリングと低い重厚感あるドロドロとしたサウンドが魅力的です。一方でV8エンジンと比べると静粛性の低さや、細かな振動は否めません。しかし、V8エンジンのような仰々しさが無く、直列4気筒エンジンより上質なフィーリングを持つV6エンジンは例えるなら“ビジネスウェアの下にデニムとスニーカーをコーデするビジネスカジュアル”的な軽快感と品格を感じるのは私だけでしょうか。
かく言う私は、今も進行形で約30年前に製造された“庶民派V6エンジン”搭載車をセカンドカーとして所有しています。しかし、ネオクラシックに片足を突っ込んだ車種且つ多気筒エンジンですから、ガソリンはハイオク指定で燃費はリッター1ケタと、お世辞にも昨今のご時世からすると“庶民派”とも言い切れなくなって来たのも事実です。6万近い自動車税も痛手ですし、故障のリスクを考えると売却を視野に考えるようになりました。
しかし売るとは言ったものの、次の車も“スポーツしていないV6エンジン搭載車”が希望です。一体今買えるなら、どんな車種があるのでしょうか。
2024年10月現在で新車で買えるV6エンジン搭載の日本車は下記になります。
トヨタ→センチュリーSUV
ランドクルーザー(300系)日産→スカイライン
エルグランド
フェアレディZ
GT-Rレクサス→IS350系
LS500系
RC350系
LC500h
GX550
LX600
…………と、おおよそ“庶民的”とは言えないラインナップとなっております。ちなみにこのラインナップで最安値の車両はスカイラインのグレードGTの約456万円です。やはり“庶民派”とは言えません。
中古車市場を見てみますと、私が今乗っている車のような旧車に片足突っ込んだような車種は変なプレミア価格になってしまっていますが、10年以内の車種だとかなり候補があります。
一部を挙げてみます
トヨタ→マークX
(マークXジオを含む)
エスティマ
アルファード
ベルファイア
クラウン
(マジェスタを含む)
等等…日産→スカイライン
フーガ
エルグランド
等等…ホンダ→レジェンド
三菱→アウトランダー
プラウディア
パジェロ
等等…レクサス→一部IS系
GS系
RX系
等等……
と、一部を挙げるだけでもかなりの台数がありました。水平対6気筒や直列6気筒搭載車を挙げればまだまだ増えそうですが、今回はV型6気筒エンジンの話なので割愛させていただきます。
また、これらの過去10年内のV6搭載車は中古相場も50〜300万円台と現行車に比べたらリーズナブルな事が多く、私のようにV6フェチな方は狙い目とも言えます。
中でも、日産のスカイラインやホンダのレジェンドはV6エンジン+ハイブリッドとという原動機の組み合わせとなっており、多気筒エンジンの弱点でもあった燃費の悪さもリカバリーしています。(とは言っても15km/l程度)
純粋なV6エンジン搭載車としては、トヨタのマークXやエルグランド辺りが中古車流通量も多く、低走行車も多いのでお買い得と言えます。(エルグランドに限っては2010年から現行モデルが販売されています。)
いずれにしても、ここ数年でグッと多気筒エンジン搭載車の選択肢が限られるようになり、価格帯も上がりました。これほどまでに変貌した理由はなんでしょうか。それは、ユーザーが自動車の燃費性能や環境性能への関心が強まった為だと思います。この技術を向上する為に、一気にエンジンの低排気量化(ダウンサイジング)や、少気筒化が著しくなったのです。伝統的にV型12気筒エンジンを搭載してきたトヨタ・センチュリーがV8、V6エンジンになった程です。ハイブリッド技術をはじめとした様々な技術革新に開発・製造のコストの面から考えても、自動車にV型6気筒のような多気筒エンジンを採用する必要が無くなったという事です。
しかし、V6エンジンの存在が風前の灯火となっているのは、日本市場のみで海外市場に目を向けると、確かにダウンサイジング・少気筒化の風潮はあるものの、大排気量モデルや上級グレードにはV6エンジンがまだまだ採用されている車種もあります。代表的な例として、トヨタのカムリは日本市場は直列4気筒エンジンのみの設定でしたが、北米市場ではV6エンジン搭載グレードも存在しています。
やはり、海外市場ではトルクフルなV6エンジンはまだまだ需要があるようです。
ダウンサイジング化、少気筒化、環境性能の向上、それに伴う技術革新、大いに素晴らしい事と思います。しかし、私は仕事で令和の直列4気筒搭載の高級車を借りて乗る時に、30年前に造られたV6搭載車のセカンドカー無意識に比べてしまう時があるのです。
確かに、令和の高級車の方が静かで快適です。しかし、何気ないアクセル操作で発生する振動や耳に入るサウンドが非常にチープだと感じる時があります。
エンジンの少気筒化に伴う種々の技術革新を小手先の誤魔化しと言うつもりはありませんが、この安っぽさ・不快感を例えるなら、1流シェフが腕を振るったソースを下準備もしていないスーパーの半額肉に掛けたような、そういう感覚なのです。どんなに静粛性を高めても、細部に4気筒あるいは3気筒を感じる瞬間は必ず訪れます。そのフィーリングを不快に思うユーザーが存在していたからこそ、大衆車向けに開発されたV6エンジンがあり、かつてはコンパクトクラスの車に1600ccのV6エンジンを搭載していたなんて時代もあったのです。
“神は細部に宿る”・“最善か無か”
工業や建築に関わる方なら一度は耳にした事があるであろう言葉だと思います。自動車の製造、開発コストの削減や省エネルギー・環境性能の向上が今のご時世では正しい事です。しかし“自動車”という工業製品の立ち位置を考えると、私はそればかりが正解では無いと思うのです。
日本市場では風前の灯火となった“庶民派”V型6気筒エンジンですが、将来的には大衆車向けの多気筒エンジンという存在そのものは廃れていくものと思われます。しかし、自動車開発の現場では、そういった技術がコストカットと省エネの名の下に“無用の長物だった”と一言で片付けられる存在にならない事を私は祈るばかりです。