【書評】南木佳士『トラや』
南木佳士『トラや』(2007年)
文学界に愛猫家が多いのは有名ですね。他界した愛猫をいとおしむ作品も多数ありますが、今回は医師で芥川賞作家、南木佳士氏の『トラや』に触れます。
母猫が育児(育仔?)放棄した仔猫2匹(トラ、シロと命名)を南木氏は家で飼い始めます。同時期に南木氏は鬱病に罹り、精神的に大変つらい日々を過ごします。
あるとき、南木氏は強い希死念慮から、自害を企図します。まさに事を起こさんとしたとき、二匹の仔猫からの行動で落ち着きを取り戻し、自害を踏みとどまる。
その後、シロは家を出て姿を消し、南木家とトラとの長い日常が、南木氏独特の静かな、透き通った文章で綴られています。そして最後にくる、トラとの別れ。
私も長年、猫を飼っており、また身近な方が鬱病で長期間苦しんでいるのを感じていたため、本書はとても、心に沁みました。
以上、お読み頂きまして、誠にありがとうございます。
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