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逆噴射 振り返り 2021ver.

はじめに

とりあえず三作全部出し切ったのでみんなの真似して書いていこうか。
俺は基本的に自作を書き上げたことはないし多分これからもない。たいそう飽き性ですぐに目移りしてしまう。そういう意味でこのお祭りは非常に俺に合っているものであると言える。というのも800文字という制限がやや窮屈に感じるものの、その反面普段意識しない自分の文の冗長さや不要な一節一文を推敲していくという作業に時間をかけることによって自文のクオリティを高めていけるという経験はここでしか得られないと考えているからだ。やっぱり小説というやつは一気に書き上げるのが吉だと思う。が、その分文量の凄まじさなどで推敲やら校閲やらが大変であり、結果としてそれらが疎かになってしまうことも多々ある。この大賞は少ない文量を扱うため飽き性な俺でもそういったことに注力できる貴重な機会というわけだ。

さて、話がだいぶ逸れてしまったが本題に入る。それぞれ自分の評価を軽く載せて章立て機能を駆使し、読みやすくすることによって後から振り返りやすいようにしていきたいと思う。

ではまず、

斜陽虐殺王破伝

こいつに関しては逆噴射先生もおすすめしないおっしゃっていたような典型的な敵との戦闘シーンで幕を閉じてしまったのが最たる減点要因であるように思う。この敗因は前半のおどろおどろしさを強調するための風景描写に紙幅を割きすぎてしまったことだと考えている。
元々こいつは二年ほど前に自分が世間に見せることもなく半端に投げ出した作品を、今回の祭りのために掬い取って来たものだった。そのため風景描写にも割と筆を振っていたし、人物の服装や周りの空気感などにも結構こだわっており、そしてそれを800文字に収めるなど土台無理な話だったと思う。
そしてしまいには審査員へのウリを欠いたと思ったか、なんとかそれを捻り出そうと考えた結果がボスっぽい奴にモブを惨殺させるというなんとも安直にして凡庸な結果に終わってしまった。この程度のクオリティは巷に溢れ返っているので当選はかなり難しいだろう。というより無理と評した方が正確かもしれない。
けれども悪い部分ばかりであったとも思わない。自分に足りない素質を少しばかり引き出せたように思うのだ。
例えばボスがモブを殺した後、死体処理に部下らしき者達が彼らを処理する一文があった。あれはこれからの連中との戦いを想起させる一文として効力があったのではないかと思う。今までの自分なら単純な一対一の淡白なものになっていたはずである。一対多数や集団戦の始まりを予感させることができたのは少なからず成長に繋がっていると思える。もう少し文句をつけるなら、彼らのためにも余白を残して見せ場を設けてやればよかった。
あとは「蛮器バング」。この名称を思いつけたのはよかった。俺はnoteやカクヨムで現在活躍中の心の師匠「バール」氏の書く作品がとても好きである。優れた部分はいくら上げてもキリがないが、中でも俺の好みに合致するのは氏の生み出す無数の造語である。道具や事象、存在に至るまで、ありとあらゆるかっこいい漢字とそこに振られたルビが心を躍らせる。
俺もあのようなガジェットと名称を出したいと思い、ない頭を捻ってよくよく考え出したのがあの共通規格の道具であった。蛮に器。野蛮な器というわけである。蛮族などといわれるように、粗野で凶暴な印象が付加されたように思う。単純に「蛮具」でもよかったのだが、これはややストレートすぎるし、ここは少しでも読者に「ん?なんだこれ」と思わせるためにあえて道具感のある名称ではなく、器というその人間そのものや大きなものを包括する存在を表すものとして命名した。形状も渾天儀という特徴的なものにできたのがよかったと思う。
自分の妄想だがおそらくこいつは共通規格の何某で、人それぞれに違った特性の蛮器があるのだと思っている。

では本来どうすればよかったのか。
今現在これを執筆している最中に思いついたのはオチを極端に振り切ってしまう方法である。
たとえば校舎がぶっ壊れるとか、この狂気の高校を破壊するために戦闘機がすっ飛んで来てミサイルを発射するとか。
あるいは背後で燃やされている死体たちが急に笑い出したり、ゾンビ化したり。
なんだったら蛮器を取り返すための尋問でもなくてこのおぞましい光景は魔王を召喚するための生贄の儀式だったなんかでも料理次第では化けそうだ。
要は捻りがなく、単純な北斗の拳的な世界観から脱却できていないように思えるのである。
次回はこれらの課題を克服したい。

続いて、

丁王覇記

これに関しては前回がやや暗めの雰囲気で戦闘や異形な世界観重視で進めてきたため、今回は軽くティーンらしい明るさで進めていきたいと思った。
若き少年戦士がやたら強い自分の親父の命によって敵の少女に婚約させられるというなんとも珍妙な話である。ここら辺の展開のぶっ飛び具合はエロ漫画に通ずるところがあり、読み返すと見てる側は笑ってしまうのではないかと思った。ところが書いている側として至極真面目にやっていたつもりで、ここはこんな風にここはこう、と割とパズルを組み立てるような感覚でちまちま書いていった。
特に一文目が重要になるため、衝撃的な冒頭をない頭でなんとか捻り出そうとしてああいう形になった。ここらへんはもはや自分の芸風みたいになってきていると感じるところがあり、多用しすぎると飽きられる諸刃の剣の面を持っているために使用には慎重さを求められるが、筆の誘惑には勝てず二作目でこのように使うこととなった。
改善点としてはやや説明過多だったかなと思う。時勢や背景描写に文を割きすぎた。極力抑えたつもりではあったが、これでは単なる総集編やダイジェストのようにしか見えない。

で、本来どうすべきだったか。
これに関しては構成をどうにかすべきだった。最初のショッキングな一文はそのままに、あとはダイジェストらしくならないように動きのある文章として書けばよかった。
たとえばいきなり結婚式から始めて、二人とも結婚リングを嵌めているが少女の着けている方が実は魔具で、「死ね!」という掛け声と共に拳がすっ飛んでくるという寸法である。少年はハッとして首を捻って避けるが、頬に少しばかり掠って意識を大きく揺さぶられてしまう。
とまれ反撃して少女の方を制圧するが、例の強い親父に「お前もまだまだだな」と懲戒の鉄拳を食らって今度こそ吹っ飛ばされるオチ。
これは今書いていてとても面白く思う。
軽く明るい雰囲気だしギャグ調でもある。

さて最後に、

貴族転生

ところがこいつに関してはほとんど遊びで書いたようなもので、ぶっちゃけ上げなくても良いレベルのものである。力の入れ具合も他と比較して格段に劣るものであり、読み返しても夏目漱石の坊ちゃん感が蔓延している。
正直改善するところもないので、このままにしておく。

      ◇

正直今回の逆噴射小説大賞は応募作品も例年に比べて多く、質も高くなっている印象を受ける。特に噂を聞きつけた流浪の猛者達がこのnoteに集結し、自分の粋を凝らした珠玉の作品群が集うために人一倍努力せねば抜きん出ることはできない。
今回仕事が忙しかったのもあるが、もちろんそれは自分の怠慢を許す言い訳にはならない。
今回の反省点を生かし、来年の大賞に繋げていきたいものである。

【続く】

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