見出し画像

ちば在宅医療ことはじめ~まなぶ、つながる、うごく~ 第5回:9月24日(火)

2024年9月24日(火)にオンラインとJR千葉駅直結のペリエホールにて、ハイブリッド形式でちば在宅医療ことはじめ第5回目の講義を行いました!


①ケアの拠点としての地域づくり:藤岡聡子先生


藤岡聡子 (診療所と大きな台所があるところ ほっちのロッヂ 共同代表)
徳島生まれ三重育ち。夜間定時制高校出身。「老人ホームに老人しかいないって変だ」を問い24歳で有料老人ホーム創業後「長崎二丁目家庭科室」を経て「診療所と大きな台所があるところ ほっちのロッヂ」共同代表。「第10 回アジア太平洋地域・高齢者ケアイノベーションアワード2022」Social Engagement program部門日本初グランプリ受賞。共著に『社会的処方』『ケアとまちづくり、ときどきアート』。主な掲載先にAERA「現代の肖像」など。

藤岡先生には先生ご自身の原体験を踏まえ人との関わり方からコミュニティ作りについてお話いただきました。

1. 先生の二つの原体験について

  • 12歳で父親をなくすという経験をされた際に、自分とそれ以外の人で父に対する見かたが異なることを強く感じたとのこと。先生にとっては怖くて熱血な父親であるのに対して、先生以外の人は父を年齢、症状、状態でしかみていないと感じ、それに違和感を感じた。

  • 夜間定時制高校に行った際にそれまでの学校と違い自分と全く異なるバックグラウンドの人が多くいたどんな人でもその空間に居てよいのだと感じそれが心地良かったという経験があった。

この二つの原体験が、今日の藤岡先生の事業を作る土台になっているようです。

2. 先生の事業について

上記のような原体験から老人ホームを作る際に、「老人を老人としてみるのではなく人として接したい」と考え、老人ホームが老人だけにならないことを意識されていたとのことでした。具体的には芸大の学生に老人ホームに来ていただき、利用者さんと話(特に恋愛相談等)をするなどの工夫をされたようです。また、現在運営されているほっちのロッジは診療所ですが、医者とそうでない人が一緒に診療所を作ることを大事にしており、職種募集時は医師や看護師などの資格で募集するのではなく、働いて何をしたいのか何を実現したいか語れる人と一緒に仕事をすることを大事にしているとのことでした。

ほっちのロッヂは国内外からも注目を浴びる診療所ですが、藤岡先生のお話を伺い、その理由がよくわかりました。人をケアすることの本質が何なのか、大変勉強になりました。

②在宅医療のエビデンスづくり:長谷川耕平先生・細田満和子先生


長谷川耕平救急医・科学者 Down to Earth BEYOND HEALTH チーフメディカルオフィサー
慶應義塾大学総合政策学部、東海大学医学部、ハーバード大学公衆衛生大学院、MITスローン・スクール卒。現職はマサチューセッツ総合病院 救急指導医、ハーバード大学医学部 教授、サノフィ・パスツールでRNAワクチンのグローバル開発・戦略を主導。現在の研究フォーカスは公衆衛生学、ワクチン学、トランスレーショナルリサーチ。

長谷川先生には量的研究についてお話いただきました。

1. 現場の疑問が重要

研究はどれも現場の疑問から始まるとのことでした。例えば、医療資源を多く使う在宅患者グループは何か、そもそも在宅医療はどれほどの医療資源・経済インパクトがあるのか、日本型在宅医療の質とそのばらつきとは、など様々な疑問が現場にあるのでぜひ活用してほしいとのことでした。

2. 日本独自のエビデンスづくりの必要性

また、在宅医療において日本独自のエビデンスが必要だということでした。なぜならアメリカの在宅医療は欧米の価値観(個人主義等)を反映しており、欧米のエビデンスをそのまま日本に当てはめることが難しいためです。そこで新たに日本型の在宅医療を開発しそれに基づいたエビデンス作りが重要だとお話しいただきました。

例えば、エビデンスづくりをするためには、理想的な社会を作ることを念頭に、理想から指標を作成し計測する研究の方法があるとのことです。現在、豊かさはGDPで測られることが多いですが、それだけでなく女性の活躍率やきれいな水へのアクセス、幸福度など自分の理想とする社会や知りたいことを指標にして量的研究をすることができることをご助言いただきました。

量的調査の研究というと、難しいイメージがありますが、身近な疑問や理想的な社会をベースに計測したいことを決めていくという長谷川先生のお話がとても印象的でした。調査や研究がより身近に感じられるようになりました。


細田満和子 社会学者・星槎大学大学院教授
東京大学文学部社会学科卒業。東京大学大学院人文社会学系研究科で修士課程を経て博士号(社会学)取得。コロンビア大学公衆衛生大学院とハーバード公衆衛生大学院で患者アドボカシー研究に従事し、2012年から星槎大学教授となる。社会学をベースに、医療・福祉・教育の現場での諸問題を当事者と共に考えており、主著書に『脳卒中の社会学』、『パブリックヘルス 市民が変える医療社会』、『チーム医療とは何か』などがある。2024年10月から東京大学医科学研究所特任研究員。

細田先生には質的研究についてお話いただきました。

細田先生のこれまでの研究をまとめると、医療における人と人との関係性(医療者と人との関係、医療者同士の関係)と患者本人が経験する病いや障がい(医療者からみた「疾患」とは異なる、当事者にとっての「病い」)の研究を多数行っていらっしゃいます。

1. 現場からの知を研究に、研究の知を現場に

実践研究という研究があります。一般的な研究の定義としては新しい洞察力や新しい知識を生み出し、既存の文献を批判的に評価することと説明できます。それに対し、実践研究とはこれまでの実践に基づいた研究で実践と理論を行ったり来たりしながら研究を進める手法です。研究をするだけでなく研究で分かったことを現場で実践して、またそこから新たな気づきを得て研究を行うというような循環がとても重要とのことでした。

2. 研究の源泉となるもの

先生の研究の発想の源泉については、「患者との出会い」「問題状況との遭遇」「自分の行為を振り返る」などがあげられるとのことでした。やはり現場発信の疑問や違和感がとても重要になりますので日々の現場での違和感をぜひ大切にしてくださいとのことです。

偶然にも、藤岡先生が現場で感じていらっしゃることを、質的研究で定義するとどのようになるか、ということをイメージできるような講義でした。量的研究同様、現場からの経験や知識を研究にどのように生かすか、という視点が重要だと感じました。

最後に先生方におすすめ頂いた本はこちら。


藤岡先生:虫眼とアニ眼

長谷川先生:リーダーシップの旅

細田先生:15の事例から読み解く「チーム医療」とマネジメント

together 孤独の本質、つながりの力


藤岡先生、長谷川先生、細田先生、有意義な講義をありがとうございました!

ちば在宅医療ことはじめ
公式HPはこちらです!


いいなと思ったら応援しよう!