見出し画像

「はたらく」について考える

仕事って何だろうか?

自分の仕事は好きですか?
それともアフターファイブや週末が待ち遠しいほうですか?

何のために働きますか?
給料も大事です。生活もかかってます。けど、それだけじゃ満足できない。自分の時間を金に換えて日々を過ごしているわけではない。
自分がどこまでできるか、どこまで行けるか。どうやって社会や世間にコミットメントしていくのか。職務内容や職場の肩書はその助けにもなります。
就労と社会参加。自分自身をまな板に乗せて、呻吟しながら日々を送っています。

できれば自分が夢中になれる「ライフワーク」を毎日のものとできれば、もっと日々が色鮮やかに、自分に関係したものとして迫ってくるかもしれない。
一方でそんなものは、食うための職業と結びついてなんかいない方がいいかもしれない。失敗したとき、きっと心折れるばかりか肉まで持っていかれてしまいそう。週末起業ってきっと、そんな考え方ですよね。

人生の先輩に学ぶ

地域包括支援センターで窓口相談をする中、面と向かって「働き口を探しています」と仰って来所される方は決して多くない。きっとそういう方はハローワークやシルバー人材センターへ足が向かうはず。
でも、例えば健康のことだとか運動する場所を探すだとか、まったく異なった目的で関わっている方が何かの弾みで、「仕事がしたい」と口にされることは実に多い(と思う)。
理由をうかがう中からは、お金が欲しいというのとも違う、自分の役割だとか居場所を求めていたり、自分の得意な領域で力を発揮したい、あるいは人に求められる立場でいたい、そういった声が聞こえてくる。そしてそういった方々のうち一定程度の方は、公的サービスの受給対象者として「(一方的に)お世話を受けたくない」とも語る。
きっと社会的役割には普遍的な価値がある。私は業務を通じて、80歳越えだとか要支援・要介護いくつという方が地域の見守り活動をしていたり、心配な隣人を教えてくれたりする例をいくつも見てきました。一番びっくりしたのは100歳越えのゴッドファーザー。定例会に毎回来ては、帰りしな参加者と握手をするのがその方の「仕事」。ニカッと笑いながら「また今度会おうな!」とやりとりするのだそう。こういう方に会うと、日々真剣に生きようという気になる。自分を丸ごと使って人生の啓発活動をしている。

若年性認知症当事者の方の取り組みに学ぶ

令和元年6月に国の施策として認知症施策推進大綱が取りまとめられています。この中でエポックと思うのは、認知症の予防だけでなく、病気そのもの、あるいは患者の方と地域が共に生きることを明確に打ち出しているところ。
この源流に、認知症当事者の方々がワーキンググループを組んで作成した「認知症とともに生きる希望宣言」があったことは広く知ってもらいたい。

認知症とともに生きる希望宣言
一足先に認知症になった私たちからすべての人たちへ

1. 自分自身がとらわれている常識の殻を破り、前を向いて生きていきます。
2. 自分の力を活かして、大切にしたい暮らしを続け、社会の一員として、楽しみながらチャレンジしていきます。
3. 私たち本人同士が、出会い、つながり、生きる力をわき立たせ、元気に暮らしていきます。
4. 自分の思いや希望を伝えながら、味方になってくれる人たちを、身近なまちで見つけ、一緒に歩んでいきます。
5. 認知症とともに生きている体験や工夫を活かし、暮らしやすいわがまちを、一緒につくっていきます。

少し前段が長くなったけれど注目して欲しいのは2.の項目で、実際に厚生労働省は認知症のある方の就労を社会参加への支援と位置付けている

リンクの先のパンフレットを見ると様々なはたらき方が示されているのだけれど、目から鱗というかはっとしたのが、認知症の当事者として講演したり相談に乗ることも、その場にいることも、「はたらく」ことだと明記されているところ。この視点は本当にすばらしいと思います。

就労のアウトカムは必ずしも成果を出すことではない

去年からずっと考えているのが、「はたらく」を通じた地域づくり。
先に挙げたように、年齢だとか介護区分だとか、病気だとかの自身ではどうにもならないこと理由に役割を奪われることなんて、きっと誰しも望んでいるものではないんじゃないか。ならば、その方のできる範囲で何らかの物事に関わってもらえればどうか。地域の支え手は実はあまねく存在するんじゃないか?

公的サービスや自治体の事業を導入することが地域づくりではないし、自分が歳を取ったときにどんな地域であれば暮らし続けることができそうか。そういったことを考えながら毎日職場に通っています。

(付記)だからICFが大事

福祉従業者向けに少しだけ補足します。
こういった考え方は地域リハビリテーションにも連続性のある内容だと思うし、参加しようとする本人だけでなく受け入れる地域のアセスメントも欠かせません。コミュニティ・ソーシャルワークの視点からは、地域規模のケアマネジメント展開(ミクロ~メゾレベル)が求められるでしょう。ケアマネジメントは地域のインフラづくり(小地域開発)でもあります。権利擁護の視点では、インフラへの作用や働きかけがクラス・アドボカシーにもつながっていくかもしれません。

もはや耳にタコどころかクラーケン(イカかもしれない)かもしれないけれど、これから多職種連携の共通言語としてもっとICFの考え方は前面に出て来る、あるいは出てこないとヤバいと思っています。今回のトピックも、言ってしまえば「参加の拡大」です。以上。
事業所の中で、他事業所との電話の中で、またはケアプランや個別支援計画書の中で、ICFをベースとした会話や表現が当たり前に通じるような意識づくりをしていきたいものです。

いいなと思ったら応援しよう!