グスコーブドリの伝記の挿絵について(ラフ)
ざび〜さん製本の宮沢賢治「グスコーブドリの伝記」の扉絵、挿絵を描かせて頂きました。
ざび〜さんの情熱とこだわりが詰まった美しい本になっています。
「挿絵はいつもの童夏さんのカラーで描いてください」とのご依頼だったので本当に自由に描かせて頂きました。
好きなお話の絵が描けて楽しかったです!
自分の解釈で描かせて頂いたので解説とラフを載せることにしました。
完成した絵が気になる方はぜひ本をゲットしてみてくださいね。
そして本を持ってる方はぜひ完成した絵と比べてみてください。
※以下、物語のネタバレあります
挿絵①「飢饉前のブドリと家族」ラフ
幼い頃のブドリとネリ兄妹、奥にいるのが両親。
幸せだった頃のブドリの家族です。
空にある目は未来のブドリの目で、子供の時の自分を見ているのです。
実はこの絵は扉絵と繋がっています(後述)
挿絵②「一人になって下働きしてる頃のブドリ」ラフ
こちらは沼ばたけ(田んぼ)で働いている頃のブドリ。
一家離散後、下働き時代のブドリにはたくさんの困難が立ちはだかります。
苦労続きなのと青少年期の鬱屈した感じを出したくて暗い雰囲気にしてあります。
ちなみに画像に書いてある「秋桜殺人事件」とはわたしがアイコンにしてる暗い感じの絵です。
挿絵③「ひとりカルボナード島に残ったブドリ」ラフ
これは物語の最後、カルボナード島で死を待つブドリ。
これから火山の爆発で死ぬのですが最期は胎児のように丸まり静かにその時を待ちます。
赤いのはマグマで、下の四角は機械の光。
丸い形を活かして全体で見ると受精卵のように見えるようデザインしました。
わたしには死ぬことと生まれることは正反対のようで同じようなものに感じられるからです。
扉絵「グスコーブドリの伝記」ラフ
こちらは「グスコーブドリの伝記」をイメージした絵を自由に描いて下さい、とのオーダーでした。
表紙と扉絵になっている絵です。
火山が爆発した瞬間の、ブドリの最期の瞬間のイメージです。
雲、ガラス、涙が飛び散ってキラキラした感じにしてあります。
飛び散ったブドリの涙の中に幼少のブドリとネリがいます。
これは挿絵➀のブドリとネリです。
死を迎える間際に幸せだった頃の自分を見つめているのです。
これはお話の最後の一文から着想を得ています。
お話の終わりであるこの絵からブドリの死によって始まりである挿絵➀に戻り、幸せは続いて行くというかんじです。
わたしは「グスコーブドリの伝記」はちょっとしたループもののお話だと思っています。
ブドリは沢山の人を救いました。
しかし彼が一番救いたかったのは自分自身なんじゃないかと思えてならないのです。
皆の幸せのために短い生涯を終えたブドリは聖人のようにも見えます。
けどもし、彼の頑張りは全て自分自身の救済のため、自分と同一視している未来の子どもたちのためであったなら。
そっちのブドリの方が人間臭くてわたしは好きです。