都市社会学、都市認識における空間論的転回
社会現象が都市空間の特定の箇所という物理的な客体と相互に紐づけて認識されるようになったのが空間論的転回。
それまでの「都市という社会のなかで起こっている現象を理解する」ことが目指されていた視座では、その現象の理解のために主体と構造に着眼点が置かれており、もろもろの社会現象の舞台としての都市は、いわば自明視されていた。
しかし、その自明視に対し、都市という空間が社会的な現象を発生させ、また、社会が都市という空間を生産、破壊しているという、社会と空間の相互作用に着目して現象を理論づけようとする視座が獲得された。
「転回」以前の「空間」では、ヒト、モノ、情報が行き交い、また、その空間は誰にとっても同質で、どこをとっても均質なものとして理解されていた。空間論的転回の後には、生活や記憶といった個人の個性に立脚した非均質的な広がりとしての社会学的「場祖」の重要性が語られるようになり、「空間と場所」の理論が発達した。
また、この「空間」の考え方に移動や速さの視点を加えた社会学的な「モビリティー」の理論も発達した。
新型コロナウィルスへの対応策を実体験した結果、そして、運送・運輸労働者の減少によって、「移動」がいかに特権的なものであったか明らかになりつつある。