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政党組織法制についての、いくつかのアプローチ

 組織の在り方を強行規定(それを守らないと法的に無効となったり、ペナルティーを科される規定)で定めることは、憲法上の「結社の自由」からして、例外であり、何らかの必要性、目的(いわゆる立法事実)が必要となる。
 強行的な組織規範立法として政党(組織)法を規定する場合、会社法や一般法人法のような汎用的な組織規範立法はあまり参考にならないのではなかろうか。
な ぜならば、両法の第1条の目的規定からすろと、これらの法律は、組織について定めること自体が目的であり、その組織が何をするかについて無関心のように見えるからだ。そもそも、これらの法律には「目的」規定は存在せず、第1条は趣旨となっており、機能を説明するだけのものとなっている。
 ある種、とても特異な法律と言えるだろう。その一つの例証として、これらの法律では、「会社」とか「一般社団、財団」の定義、つまりこれらの組織の本質について全く言及がなく、ある一定の手続きをもって設立されたものの呼称として規定されていることをあげることができる。

 政党のように、ある特定の目的で集まった人の集団を律する組織規範としては、宗教法人法、NPO法、公益法人法などが参考になると思われる。
 これらの法律には、目的規定が存在し、この法律の規律に服する団体や組織が何のために社会に存在し、その組織や行動を規制することによって、日本国に何をもたらすのかが書かれている(第1条の目的規定に、「資する」とか「寄与する」という文言がある)。
 特定の政治的目的を達成するために、共同、連帯して政治活動や選挙運動をする人の集まりという本質を没却した、政党(組織)法制というは、あり得ないのではなかろうか。
 とすると、どのような法目的のために、特定の価値実現を目指した私的組織体についての強行的組織規範を作るのかという観点から、宗教法人法や公益法人法、NPO法がまず比較や検討の土台になるのだろう。

 全く異なるアプローチとして、政党を「公益を目指す私的な組織」とするのではなく、憲法上には規定はないが、国権の最高機関である国会(制度)に付帯する組織体として、公法的存在として組織規範を考えるという方向性もあるかもしれない。国会法上の「会派」概念(第42条など)を土台として、議員団体の組織内民主主義や不明朗な金銭のやり取りの撲滅を目的とするものとして規定するという方向ということになる。
 よって、議員相互間に何の拘束もない親睦団体的なものはこの法制の対象外で、政党とは、組織構成員に一定の権利義務関係を設定することとなり、政党員としての地位の確認訴訟が提起できるようなものということになるのだろう。
 ちなみに、国会法上「会派」について、特段の定義はないが、「国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律」では、「各議院における各会派(ここにいう会派には、政治資金規正法第六条第一項の規定による届出のあつた政治団体で議院におけるその所属議員が一人の場合を含む。以下同じ。)」としており、一人でも会派になれるということで、組織、団体であることは当然の前提とはされてはいない。ただし、これは例外のようで、国会の先例では、2人以上いない場合には、会派は消滅するとされている。
(参考)https://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/keyword/kaiha.html

以上のように、政党(組織)法について検討する場合、

〇特定の公益的、政治的目的を持った私的団体、組織に対し、限定された効果、目的を設定して、その効果、目的のために、必要な範囲での強行的組織規範(および任意規定)を設ける(私的自由、自治に対する比例原則に則った最低限の法規制)として立法する(理屈上、閣法もあり得るが、政治的には議員立法)。

〇国会の延長線上の組織として、公法的に位置づけ、公職である国会議員の合同組織としての組織規範を定めるというもので、国家行政組織法や地方自治法のような組織準則を定めるものとし、効率性や正当性を確保するために必要な限度の立法とする(こうすると、三権分立の観点から、閣法はあり得ない)。

という二つの方向があるのではないかと思われる。

※国家行政組織法 第1条
この法律は、内閣の統轄の下における行政機関で内閣府及びデジタル庁以外のもの(以下「国の行政機関」という。)の組織の基準を定め、もつて国の行政事務の能率的な遂行のために必要な国家行政組織を整えることを目的とする。

※地方自治法 第1条
この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。