【8】母親へ促した覚悟
数年間、ひきこもり支援センターへ定期的に通い続けましたが、何ら進展しないことに、わたしは危機感を抱いていました。
そこでわたしは、あえて家族以外の人が同席してくれている支援センターでの面談中に、母親へこう話しました。
何年ここへ通っても、家族が変わらなければ、これ以上きっと何も変わらない。
まずは同胞さんへ、わたし達がこうして相談に来ていることを、正直に伝えてほしい。
母親の表情を見れば、あまり乗り気ではないのはすぐわかりましたが、母親が覚悟を決めてくれなければ、何も始まらないのです。
なぜなら同胞さんが会話する相手は、母親しかいないのですから。
代わりにわたしが、メールなどで同胞さんへ伝える案も挙げてみましたが、それでは根本的に解決できないことも、頭では理解できているようでした。
そんな母親に、わたしはさらにこう伝えます。
おかげさまでわたしは、社会の一員として生きることができている。
わたしがこうして生きているのは、まぎれもなく両親のおかげだ。
同胞さんに対して、何か負い目を感じているのかもしれない。
でも同胞さんが成人した以降も、両親として充分に手を差し伸べてきた。
わたしをこうして育ててくれたんだから、親としての自信を失わず、毅然としていてほしい。
そして、誰のための相談なのかを、今一度考えてほしい。
両親がいなくなっても、同胞さんが同胞さんらしく生きていくための相談であって、母親の苦痛体験報告会ではないのだ。
母親は、涙しながら私の話を聞いていました。
涙が頬を何度も流れていく、そんな母親の姿は初めて見ました。
わたしとしても、母親に酷なことをしているなと、重たい気持ち9割でしたが、残りはもういい加減にしてくれという、苛立ちにも似た気持ちが見え隠れしていました。
この面談を契機に、母親は同胞さんへ相談に来ていたことを打ち明けることとなりました。
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