【6】相談窓口をめぐる旅(ひきこもり支援センター編)
行政のひきこもりサポート事業が拡充され、実家のある自治体にもひきこもり支援センターがあることを知り、家族面談の予約をして、両親とわたしの3人で利用することにしました。
対応してくださったのは、就労支援に力を入れているNPO法人の相談員さんでした。
行政からの外部委託ってことなんだなと理解しました。
わたし達の話を丁寧に聞いてはくれましたが、自分たちNPOではこんな活動をしていて、こんなにたくさんの人を仕事に結びつけたという実績報告を過分にいただきました。
同胞さんの心は荒振り、家族の話をまともに聞いてくれる状況になかったので、同胞さんとのコミュニケーションのコツなんかが聞きたいというニーズを伝えたつもりでしたが、伝え方がよろしくなかったのか、
「安心してください。わたし達NPOには就労支援の実績があります!!」
と言ってくださり、少し違和感を覚えながらも、定期的に家族面談として通うことになりました。
数か月に1度、両親とわたしの3人で面談へ出かけるわけですが、同胞さんのこころのシーソー状態に大きな変化はなく、母親が対応して困ったことを報告し、次の予約をする、の繰り返しが続きました。
相談員さんのなかには、1度の面談でそれっきり姿を見ない方も複数おられて、あまり定着しない職場なのかなと感じざるを得ませんでした。
そして今回も、母親は相談に来ていることを同胞さんへ伝えられずにいたのです。
ある時の面談で、親と同世代の相談員さんからこう言われたのです。
「お母さんの愚痴を聞いてるだけじゃ前には進まないですよ」
今、振り返れば、確かにそうなんです。
同胞さんの恐ろしさに負けて、母親が腹をくくれずにいては何も変わらないこと、今のわたしには理解できます。
でもその時は、同胞さんへ何か新しい話題を向けたら、また母親につらくあたるのは容易に想像できましたから、母親が回避したくなる気持ちに、わたしはなびいてしまったのです。
そして、その年配の相談員さんとの信頼関係が出来上がっていれば、母親はもう少し聞く耳を持ったのかもしれません。
数回の面談だけでは、母親の信頼感も築けておらず、母親はその相談員さんを避けるようになりました。
それ以降の数年間、母親による「苦痛体験報告会」状態の家族面談が続きました。
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