ヒャッハ〜!!インドネシア漫画出版事情(前半)
お久しぶりです。ネット書店でバイヤーやったり、出版社で漫画とかラノベを海外に売る様な仕事をした後、出版系のスタートアップを名古屋でやってる、DouDoujinの水谷と申します。
さて色々あり、だいぶ間は開きましたが、今回はインドネシア漫画出版事情という事で、前回の記事の最後にボソッと書いた不吉な事を、深掘りする内容で書いて行こうと思います。
インドネシアの出版市場規模
そもそも全然情報ないんですけどね😂それでも、3箇所見つけてきたので抜粋しますが、一つ言えるのはとりあえず、普通に日本の出版モデルを現地でやったら爆死しそうです。
まずは、内閣府クールジャパン戦略の引用元にもなっている、「日本と世界のメディアコンテンツ市場データベース(HUMANMEDIA)」。
もう一個参考を見てみましょう。我がインドネシアの友人のJunさんに、「インドネシアの出版市場まとめれる?」「おっけ〜土日やっとくよ」のノリで頼んだはずが、ガチレポートが出てきたので一部抜粋。
あとは、KADOKAWAがインドネシアのGramediaとジョイントベンチャーを作った成果物共有の日経記事にしれっと載ってたグラフ。
ちなみに、ローカル書店はこんな雰囲気。しゅごい。
という訳で今までの調査をまとめてみました。今から書く内容は、ジャカルタとバンドンしか訪問した事が無い日本人が、イベント出展したり、知り合ったオタクの方々とご飯食べたり、昔漫画出版社をやってたという現地の人にインタビューしたり、SNSを通じたアンケートで確認したり、クリエイター同士の会話を盗み聞きしたり、そんな感じの肌感覚や断片知識の取りまとめなので、推論や誇張も多分に含まれると理解してお読みください。
スタートアップで市場がない荒野を、「火星」と表現する事がありますが、インドネシア市場は調べていくと、なぜか朧げながら見えてくるんです、、、MADMAXな世界が。
日本の出版業界のおさらい
出版業界はざっくり書くと3つの仕事で成り立っています。
この3業態のバランスがある事で、日本全国に満遍なく本を届き、日本中の読者に偏りなく本を届けることができているのです。
では、次にインドネシアがどうかというと、、、
インドネシアの出版業界
出版社と取次と書店が1つになった、巨大グループ企業(Kompas Gramedia)が1社鎮座しており、あとは有象無象のローカル印刷会社と独立系書店が跋扈している感じです。(※あくまで!私のイメージです)
インドネシアの書店(Gramedia)
まずは覇王(Gramedia)の書店を見ていきましょう。とても綺麗で、ある程度の規模の町なら1店舗はあるイメージです。どの店舗にもComicコーナーがあり、子供達が楽しそうに漫画を読んでいます。
高級デパート内にも書店を構えております。
どのGramediaにも漫画コーナーがあり、現地の日本漫画人気を感じました。
というわけで、アニメ化されるような人気漫画は大体、公式で既に供給されていると思って良いです。集英社と講談社の作品が多い感じがしました。
インドネシアの取次
ないっぽいです。出版構造が日本と違うようで、インドネシアにはそもそも取次という業態がないみたいです。。。(つまり再販制度もない?)
という事は、Gramediaは最大の書店としてインドネシア各地に売場を持ち、自前の物流会社(KGXpress)を使ってインドネシア各所に配達を行っているわけですね。
調べれば調べる程、私の脳内に、こんなBGMが流れこんでくるわけです↓↓↓
インドネシアの出版社
翻訳出版として、日本の漫画をインドネシア語に翻訳して、販売する会社はあります。(「Elex Media Komputindo」や「M&C! Comics」等:どちらもGramedia企業群の1社)ただし、翻訳会社を独立して単体で行っても収益性が高くない気がします。以前インドネシアの知人経由の紹介で、46ページの日本でバズったSNSの漫画の英語訳とインドネシア語訳をお願いする事があったのですが、いくらで提示すれば良いか友人に聞いたら5000円でした。実際に現地のセミプロ翻訳者に5000円で提示した所、受けてもらう事ができて、質も高かったです。背景文字や擬音まで全部翻訳してくれました。逆にその金額で現地の翻訳家が受けたという事は、日本企業として漫画のインドネシア語翻訳の会社を作っても成り立たないという事です。
次に作品を生み出す漫画出版ですが、現地クリエイターの画力は高いと感じています。ただし、「現地で売れるには、まずインドネシア以外で成功させる必要がある」と教えてもらいました。現地読者の海外作品嗜好は、漫画だけに当てはまる事ではなく、現地のゲームクリエイターの方からも同意見として出てきました。
Gramediaで現地の漫画家の作品を取り扱うこともあるそうなのですが、漫画編集のノウハウがある訳でもなく、連載チームを作ってくれる訳でもなく、販促も全て自分なので、Gramediaのおかげで爆発的に売れている例はあまり聞こえてこず、売れている漫画家は自分でファンを作り、出版社を通さず、自費出版で収益を上げるそうです。
また、ここが問題だと思っているのが、インドネシアに電子書籍市場が正直、、、ないことです。以前、Xのスペースにて、「ぬこー様ちゃん」という漫画家の方をお呼びして、インドネシア漫画家に向けたスペース質問会というのを開催させて頂きました。
「どうすれば漫画でマネタイズできますか?」という質問に「AmazonのKindle インディースマンガにとりあえず作品を載せておきましょう!そうすれば、バズった時、リンクを貼れば収益化できます」という、日本人漫画家にとってはとても良いアドバイスがあったのですが、「Amazon….インドネシアに無いっす😭」という話がありました。
電子書籍の普及具合
読者の方々から話を聞くと、現地の方々に電子書籍ストアがあるのか聞いてみた所、「Google Play Books」と「Gramedia e-books」があるにはあるけど、流行ってる感じはしないという事でした。
現地の漫画家の方々に話を聞いた所、収益化を求めて、韓国のWebtoonを試してみたけど、紙とウェブトゥーンで収益モデルが違う事がわかって戻ってきたり、Tapas(韓国のKakaoに買収されたアメリカの漫画サービス)も試したけど、BLが強い世界では自分の作風に合わなかった。もっと色々なプラットフォームが欲しいという声が聞こえてきました。結局、画像をいくらでも無料でアップロードできるSNSとして、Facebookが個人向け漫画投稿プラットフォームとして使われているようです。
現地の起業家の方から話を聞いた所、インドネシア人は収入が低く、無料枠があれば複数アカウントを作るなどして、無料で読む為の労力は厭わない。Webtoonですらイマイチ一般的にならない理由は、話売りでも電子データにはお金を払いたくないという意識が強いという事でした。
そんなDXが全然進んでない状態で2020年にコロナの直撃を受けたので、インドネシアの漫画出版業界、ほぼ死滅したようです。
現地の漫画家の方に聞いた所、ある程度の規模で生き残っているのは「re:ON Comics」と「Bumilangit」ぐらいとの事でした。電子書籍を購入するという習慣が定着しておらず、漫画で収益を上げるには紙で販売するしかないという状態で、突然のコロナによって、紙漫画市場の売り上げが消失したので、漫画出版社は壊滅的な状況に陥ったようです。
ローカルな書店や印刷会社
さて、では取次もなく、出版社がほとんど無い国の、ローカルな書店はどうやって成り立ってるのでしょうか?
以下がローカルなインドネシア出版業界の図解です。
そうすると、出版業界の方々なら気がつく訳です。それぞれの印刷会社が各々の印刷機で勝手に印刷して、勝手に独立系書店に持っていったら、規格も品揃えも滅茶苦茶になるじゃないですか〜😂
同じ書店にサイズも厚さもバラバラな「印刷会社A社」と「印刷会社B社」と「印刷会社C社」が作った「鬼滅の刃1巻」があるみたいな事ですか?(笑)
翻訳元のデータは公式版から1冊だけ電子を買ったり、公式紙漫画を裁断してデータを作ったり、公式版がまだ無ければ、ファンが翻訳して投稿している海賊版サイトからデータをダウンロードしたりしているそうです。金額感はGramedia等で販売されている公式漫画の相場が大体30,000~50,000IDR(282円~471円)に対して、海賊版の印刷漫画の相場は大体、漫画が1冊約5,000IDR(約47円)、小説は10,000IDR〜15,000IDR(約94円〜141円)との事です。
現地クリエイター
漫画のエコシステムが整っている日本人から見ると、インドネシアのクリエイターが置かれている環境は修羅の国です。
弊社アンケートのコメント欄でも様々なコメントで溢れていました。
インドネシアには若い方々が多く、能力もやる気もあるので、環境さえあれば開花しそうなのに、マネタイズできるデジタルプラットフォームがなく、商業出版は巨大独占企業によって管理され、アニメ化が決まった様な超弩級な翻訳作品ばかりが出版されるので、残念ながら日本の様な作品の多様性はあまりない状態みたいです。
AI…
そんなわけで、ニッチジャンルの漫画家の方々は、作品を英語にして英語圏のファンを作り、英語でコミッションを受けて、イラストを描く事でなんとか食い繋いでいた様な状況というのに、、、
『ダダンダンダダン….』のBGMと共に新たな波がやってくるわけですね。AIの補助を受けて、皆がイラスト出力できるようになってきた訳です。多分コミッションで稼いでたクリエイターにはAIがこう見えてるはずです。
現地クリエイターからしたら市場環境は、火星どころか核戦争前夜ですね。
>>>後半に続く「10/4(金)」公開予定
情報が盛り沢山すぎたので、前半と後半に分ける事にしました。後半は、実際進出している日本企業の取り組みや、私が感じる可能性の部分を書いて行こうと思います。(じゃないと、核戦争前夜の火星みたいな市場に突撃する私がバカみたいです😂)
今後のまとめ記事
本当は半年前のイベントに向けて、記事投稿しながら雑誌の掲載作品を集めようと思ってた所、出来が良すぎたのか、二つ目の記事でいきなり応募枠が埋まったり、なぜか出版社の法務の人が見てるぞとか色々突かれて、謝罪文を書く事になったりで、間が空きました😅後半はちゃんと来週更新します。
2025/4月頃(来年予定):インドネシアVtuber事情
掲載作品を募集します
海外展開に興味があって、最初の一歩目を探している漫画家向け。
またまた今年の11月もインドネシアのイベントに出展し、許諾を頂いた漫画を英訳と、今回はインドネシア語翻訳も行い、雑誌にまとめてPRしてこようとしています。この記事を読んで、インドネシアに興味を持ち、自分の作品も掲載してみたいという方がおりましたら、コチラのStep1の掲載枠の確保にご入力ください。(所要時間1分)
(枠が埋まった場合、上記は締め切りましたという表記に切り替わります)
前回のイベントにご一緒頂いた漫画家の方(今回は根田様に加え、追加2名の方がインドネシア現地参加)から、インドネシアは今が正にタイミングなので、お金を払ってでも掲載に価値を感じる方はいるはずという事で、雑誌掲載の募集を募りたいと思います。(掲載枠埋まり次第終了)
4P掲載なら5000円、8P掲載なら1万円、12P掲載なら1.5万円で、翻訳、雑誌掲載、現地での販売、完成品の現物送付をさせて頂きます。翻訳やVtuber事務所との調整の関係で、10/14 23:59(月)を期限とさせてください。もちろん書き下ろしでなくて、既存のSNS等で公開済みの作品で全く問題ございません。
海外雑誌掲載プランの参考情報
出展するインドネシアのイベント詳細記事はこちら💁
前々回(2023年12月)のイベントでの成果共有はこちらからどうぞ💁
前回(2024年5月)の出展成果は新聞で取り上げて頂きました💁