111 - ミニマル、無駄、あえての一手
111(*110はこちら)
(ドアベルが鳴り、JCが謎の営業を受ける)
Johnny Cash(ジョニー・キャッシュ/以下”JC”): 全く何言ってるのか分からなかった。
Chantrapas(シャントラパ/以下”C”): 全然分かんなかったね。
JC: あまりにも分からない。もうちょっとわかりやすく言えばいいのに……。
C: 電話営業でも「△▲社の□■です」って名乗った後に「〇●さんの番号でしょうか?」って。
JC: あぁ。
C: そこから「今お時間2、3分よろしいでしょうか?」と続くけど……用件から入れば聞くよ?
JC: はははは! それ今後ろで言ってくれればよかったのに。
C: 用件言ってくれれば聞いて判断出来るよね。それこそ完全な無の時間が、
JC: それは無じゃない、それはゼロ。はははは。
C: 電話取ってから完全なゼロが……。
JC: そこ無とゼロの違い。くくく。
C: マニュアルが悪いよね。まず喋っていいか許可を取るのは「質問よろしいでしょうか?」のせいだよね。
JC: あぁ、そういうこと。
C: あの変なマナーはいつからなんだろう。質問よろしいでしょうか……というのがもう質問だからね?
JC: そうだよ、まさにそう。
C: という馬鹿げたワンクッションが「丁寧」ってことになっちゃった。いらない迂回が……まあミニマリストだから気になるよね。
JC: 困るのが、ミニマリスト的な人ほどそういう言葉使うでしょう?
C: そうかも。
JC: あれがややこしいんだよ。今っぽいって言葉に……なんでだろうと思うけど。減らせますよ。
C: これちょっと老人っぽい会話だよね。ははは。
JC: 老害っぽい。もうちょっと営業の人に優しくすべきだった。時間ないですっていう露骨さを出しすぎた。ふふふ。中に入れてあげたらよかったね。
C: ここに座って営業をしてもらう?
JC: してみなよって。失敗失敗。優しさが欠如していた。
C: 言って分かるのかな。
JC: 「気付く」って……その、快感と苦痛が同時にやって来る世界ね?
C: うん。
JC: を、もうちょっと日常に、毎日毎分毎秒感じる必要がある。そろそろそういう時期だと思う。
C: 歌の歌詞にあるけど<どこまでいっても気づかない>って。
JC: 気付かない人達を歌う必要もうないよ? 表現としてそこにフォーカスして……何か言いたいって時点でとち狂ってると思うもん。何の図々しさなのよ? そこじゃないんだよ。
C: でも図々しい人好きじゃん。
JC: 好きだよ。大好き。
C: ははははは。
JC: 「行け行け!」って言うけどね。
C: でしょう? 同時に評価の対象でもあるじゃん。その人がやんないと、
JC: 何にも始まんない。そうそう。
C: やってくれる人がリアルタイムでいるなら応援したい。
JC: 応援はしない。
C: しないの?
JC: 全然しない。
C: わたしはしようかな。
JC: Cはしてくれた方がいい。Cから聞かないとそういう情報は全然入って来ないもん。「活動家」だよね、所謂。活動家なんでしょうね。
C: 確かに活動家的な人は好きだね、ずっとね。
JC: 自分は活動家にはなりたくないな。
C: アートじゃないよって?
JC: 芸術家じゃなくて活動家、政治家……ハリウッド俳優みたいなもんだよ、まさにそういう感じ。すごい極端に言うと、自分はピカソよりマティスが好き。そういうことなんだと思う。
C: ……終わり?
JC: うん。以上。はははは! そうだね。チャップリンより、
C: キートンが好き?
JC: そういうことだね。ディズニーよりワーナーが好き。
C: 分かったことにしておこうかな。
JC: そういうゼロイチだったらあるかもな。でも、そういう思考回路自体があんまり得意じゃないんだろうね。
C: やればできる?
JC: 言われればやりますけど……〇〇なら誰派とか、そういう思考回路が無いんだよね。
C: 結果を言葉にすると言えるのは言えるけど。決めると楽なのかな、自分の軸が出来る?
JC: おぉん。
C: ということでしょう?
JC: そうなんだろうな。
C: 同時にすごい縛るじゃん、それって自分を。
JC: そうだよ。
C: 別に結果を言ってるだけならいいじゃん。あえて言葉にすると誰派とか言うことはあるよ、わたしも。
JC: それなら言わなくてよくない? ははははは。いちいち細かく自分の価値観を説明してくれる人はすごい好きなんだけど、結果そうじゃないじゃん?
C: うん。
JC: 狭くはないでしょう、考えてる事は。じゃあそのままデカい場所でよくない?
C: あぁ、まあ整理しておきたいよね。暗闇で棚のDVDが取れるくらい、思考と配置が結び付いてたら面白いなと思ったりするけどね。そうやって説明したくなっちゃう。
JC: はははははは。あぁあぁ。そうだね。
C: なっちゃう。したくてやっちゃう。
JC: いいと思う。
C: しなくていいけどしたいこともあるよね。
JC: Cにおける……まるで残滓のような物質主義のような、ね。
C: うん。
JC: ギリギリの領域が……面白くてね。たまに「自分にもまだあるんじゃないか?」と思うんだけど。
C: うん。
JC: 探すんだけど、無いんだよね。これが老いなのかと思うくらい無い。
C: そうなんだ。
JC: ちょっと欲しくなるのね。何かがそこにあるんだろうと思う。だから……探すんだけどね。
C: うぅん。
JC: なんかあるんじゃないか……「派」という言葉だよね。
C: 派が気に食わないんだ。
JC: 気に食わないというか、羨ましいな。そういう感覚がまだあるというのは。
C: ないない、全然ないよ。
JC: ないんだろうけど。
C: 説明してるだけ。
JC: 聞いてみたら「無いんじゃん」と思うけど。はははは。やっぱり無いんかい。確認しただけだった。
C: 別に誰派でもない。でもあえて口にしてみるという面白い無駄もある。
JC: そうそう。「あえて」という領域って、実は表現の8割くらいなんじゃないかと思うの。あえてやる、あえて言う。それがほぼほぼ表現。残りの2割が信念とか、次の挑戦とか、これから試したい事とか……ギリギリ乗っかってるだけであって、ほとんどが「あえて」やる。
C: うん。
JC: それが占めてる。やってみるわけですよ。それをやんないと面白くないのね。
C: うん。
JC: それって既知のものだし、担保になってるわけだよね。日々の中で蓄えていく知識とか美意識とかが「あえて」になっていくわけでしょう?
C: ふん。
JC: わかっちゃいるけど、やってみる。その土台を上げていくと、残ってる2割がまた上に上がっていくと考えてみる。
C: 連れてってくれるんだ。
JC: そう。必ずそういう法則だと思う。……なんで急に芸術論になった?
(つづく)
2023年1月22日 doubles studioにて録音
ダブルス・ストゥディオ
Johnny Cash (thinker/artist) & Chantrapas (designer/curator)
#doubles_studio_talk でトーク部分を一覧表示できます。
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