尾道と写真のワークショップ
RICOHさん主催のGRmeet47というワークショップに参加するため、尾道に行ってきました。
47都道府県で開催するようで尾道は38都道府県め。
写真関連のイベントに参加するのは初めて、尾道を訪ねるのも初めてです。あとで振り返りができるように、今回も考えたことを撮った写真とともに記録しておこうと思います。
とりあえず、チェックしていたコーヒー屋さんへ。
バリスタとして働いていた頃から、国内外どこを訪ねても、着いたらまずコーヒーを飲みに行きます。
お店の内装やメニューもそうだけど、それ以上に気になるのが、お店にどんなお客さんが来て、どんなふうに過ごしているのか。それを見ると、その街を自分が好きになれるかどうか、ちょっとわかるからです。
ポイントは、自分がいいなと思ったお店で観察すること。
尾道はGoogleMapsで見ているとコンパクトにまとまっているのかと思いきや、高低差がかなりあるようで、坂の街という印象。
会場の松翠園大広間もすこし坂を登ったところにあります。
今回参加したのはGRmeet47という、RICOHのGRシリーズのファンイベントのようなもの。
購入を検討中のRICOH GR IIIxを使ってみたかったというのが今回の参加動機。私のようにいま持っていない人も貸出をしてもらえます。私はGR IIIXと外付けのファインダーを借りました。
当日のスケジュールはこんな感じ。
まずはスライド&トークで学び、それから各々撮り歩きに出かけます。
見たものを撮る
他のこともそうですが、人から何かを習うとき、とりあえず素直に実践してみる派です。なぜなら体験がないと自分で考えることができないから。
今回はこの3つを実践。
講師の幡野さんが講義で何度も言っていたことでした。
まずは会場から山側に上がり、
「見たものを撮る」
↑この写真、見覚えがあると思ったら、むかし同じような感じで撮っていた。↓ すんごい昔なんですけど。
撮り歩きに出かける前の講義で、講師の幡野さんから
「いい写真は伝わる写真、伝わるってどういうことかっていうと、あとで撮ったときのこと、感情とかを思い出せること。漫画とかは子どものときに読んだものを今も覚えてるでしょ、それが伝わったということ」
みたいな話があったけど、確かにそのとおりだなと思った.
というのは、私はこの20年ちかく前の inter islander の写真を見て、これを撮ったとき、自分がどこで何をしていて、そのときどんな気持ちだったか、思い出せるからです。そして、思い出したとき撮っておいてよかったなと思えるんですよね。だからこれは自分にとってはいい写真。
私もそうでしたが、おそらくこの日、単独行動をした人がほとんどだったのではないかと思います。確認はしていないけど。
「見たものを撮る」を実践するにはひとりがベストだと思いました。
普段から、自分の考えを言語化する方法についてよく人と話すんですが、
「(感覚や思考は)人に見られると意識した時点で自分の中にあったものとは違ったものになってしまう」
みたいな話をよくします。
それと似ていて、写真も人と歩いているときと、自分ひとりで歩いているときでは撮るものが変わってしまう気がしました。同じものを見ていても反応するものは違うだろうし、写真家どうしだったら違うのかもしれないけど、普通の人は、誰かといるときに、そもそもこんなペースでシャッターを押せない。
たくさん撮る
講義のなかで撮る枚数の話がありました。
今回の講師の方が3%の偶然という記事のなかでも書かれていますが、たくさん撮れば偶然でもいい写真が撮れる、100枚から10枚選ぶのと、500枚から10枚選ぶのとでは違う、と。それはそうだと思いました。
で、たくさん撮る。
「見たものを撮る」と合わせて「見たものをたくさん撮る」です。
「たくさん撮る」にはセレクトと現像が前提という考え方があります。
講義で、いい写真が撮れる確率の話をしたときに、
「写真を頑張っちゃう人が多いけど、頑張るべきはセレクトと現像。たくさん撮って、削る」と。
撮ったもの以上にその選択や見せ方に感性とか人柄が出るのだと思います。
これは料理でいうと、素材のチョイスと調理法みたいな関係性なのかな。合わせるワインとか、サーブする順番とかにも似ている。
というわけで、海沿いから街に入り、まだまだ撮ります。もうこのときは撮らないとダメなんだって思いながら撮ってましたね。
行きたかったお店が満席&ウェイティング多数で、時間内に会場に帰れないなと思い、昼食は諦めました。しかし、よく考えたらやっぱり食べものの写真も撮るべきだった、尾道ラーメン食べればよかったと後悔しました。
喫茶店でコーヒーを飲みつつGRを観察。
この日は日曜日でしたが、店内には他に2組ほどのお客さんがいるくらい。
パンパンの喫茶店がガンガン回転するさまを見るのも楽しいけど、ゆっくりするならこのくらいの客入りがいいよね。
15時前には会場に戻らないといけないので、そろそろ引き返し始めます。
帰り道で他の参加者さんと会い、話しながら会場へ帰ります。
講評会
冒頭で書いたように、この日のスケジュールはこんな感じ。
撮り歩きのあとは講評会です。
改めて、講評の意味を確認。
すごいなと思ったのは、全員がSDカードを提出し、各人撮ったものから講師がセレクトと現像をして講評するというそのスタイルです。
参加者は30名ほど。
結果からいうと、時間的に全員分は間に合わなかったので、当日講評できなかった人の分は後日メールで送られるとのこと。(また、講師の幡野さんがセレクト&現像してくれたデータも後日いただけるそうです)
私はたまたまですが、当日会場で講評してもらうことができました。
セレクト・現像してもらった写真は、データが届き次第追記したいと思います。
講評は、(自分の写真も、他の人のも)とても勉強になりました。
何よりも「理由」と一緒に評価されるというのがいいです。
私自身は、いい・よくないというのは目的や状況や評価する人の価値観によって変わるものだと考えています。
これは20代の頃、生活の場を固定せず転々としていた頃に身についたものだと思っているのですが、良し悪しがあるのではなく、良いと思う人と、悪いと思う人がいる、という解釈でいます。(極端にいえば)
なので、ネガティブなフィードバックもわりとフラットに受け取れるほうだと自分では思っていて、この日の講評についても、「そうなんだな、もっとこうしよう」と思うこともあれば、「これについてはよくわからないからもう少し自分でも調べてみよう」と思うこともありました。
大事なのは評価とその根拠をセットで知ることで、自分のなかに有用なサンプルとなって残ることです。サンプルは引き出しに貯められて、必要なときに取り出せるものになっていくことはこれを読んでいる方も経験からご存じだと思います。世の中ではそれは技能と呼ばれますよね。
わかったこと
「見たものを撮る」「たくさん撮る」をリアルにやると、いっこうに歩が進まない。ということは、「見たものを撮る」を忠実にやっているときですらも、撮るものを取捨選択しているということ。
これが、今回自分が気づいたことでした。当たり前のことに改めて、違う角度から気づくのも発見ですよね。
実際に撮ったものと見たものでは、見たもののほうが圧倒的に多いわけで、もちろんその全てを撮っているわけではない。だとすれば、撮る時点で選択をすでにしているということになる。
見たものをどれだけたくさん撮っても、「見たけど撮らなかったもの」のほうが何倍も多いということ。
繰り返しになりますが、講義で「みんな写真をがんばろうとしちゃうのよ、でも頑張るのはセレクトと現像」と言われたように、力の振り分けとして、
写真(撮影)
セレクト
現像
のバランスが大事なのだなと学びました。
私も素人だからわかるけど素人にとって、この3つは確かに並列ではない。というかセレクトと現像という概念が以前はなかったので、写真(撮影)をがんばろうとしていたのだと思う。この3つのうち、「写真(撮影)」しか見えていない状態。
でも今回「見たものを撮る」をリアルにやってみて、「最初のセレクト」はこのときにあると気が付きました。
アプローチの方法が他にも見えれば、より自分に合った、あるいは状況や目的に合わせた手法が選べる。
料理だって「加熱して食べやすくする」目的はいっしょでも、食べ方が違い、文化が違えば火入れや仕立てが変わってくるのと同じ。
それまでの自分に違う視点が加わって、目指すものとか、方向が定まったり変わったりするのが体験の何よりのよさだと思います。参加してよかった。
最後にみんなと、みんなのGRそれぞれの集合写真を撮りました。
スタッフのみなさん、講師の幡野さん、ありがとうございました。
懇親会のあとの帰り道でも、その後の電車でも、他の参加者さんにいろんなお話を聞いてすごく楽しかったです。お話しできたみなさんありがとうございました。またお会いできたら嬉しいです。
私もまた尾道に来よう。