博報堂キャリジョ研『働く女の腹の底 多様化する生き方・考え方』(光文社、2018年)

主題…女性が結婚後に専業主婦になるという選択が一般的とは言えなくなりつつある。そうした中で今日の働く女性は仕事や結婚、趣味や生活スタイルについていかなる考えをもっているのか。子どもをもたない働く女性への調査をもとに考える。

 1章では、働く女性の仕事と恋愛に対する意識について取り上げられている。
 働く女性は、かつては結婚後のプランとして専業主婦になることが多かったが、今日の調査によれば結婚後の専業主婦志望は6%程度であり、結婚に伴い退職をすることへの躊躇いが広く見られるという。また、職業観についても、就職後の職を継続し続けるより、他の副業に就くことを望むといった傾向が強く見られるのだという。
 恋愛に対する意識の変化としては、「恋愛のプロジェクト化」が挙げられている。出会いから交際を通し結婚を決めるという恋愛のあり方が変化し、今日では戦略的に相手を見つけて交際するという流れが定着しているのだという。本書では、その具体的方法として、「婚活アプリ」と「出会いの効率化」が挙げられている。また、女性が磨く可愛さのあり方については、男性の目線を意識した男性志向的な可愛さというより、自分がこうありたいと考える可愛さを目指す自分志向的な可愛さが求められるようになったとされている。

 2章では、働く女性のSNS利用のあり方について取り上げられている。
 キャリジョ研によれば、働く女性の8割近くが何かしらのSNSの利用経験があるという。そして、その中でも利用経験者が多いFacebook、Twitter、Instagramは、それぞれ異なる利用方法がなされているという。
 2章後半では、働く女性のSNS利用と恋愛の関係について検討がなされている。キャリジョ研によればFacebook、Twitter、Instagramのそれぞれの利用者ごとに、恋愛の傾向の違いが見られるのだという。また、いずれのSNSにしても、SNS利用者は働く女性全体と比べた時に、ライフプランを設計しようとする意識が高いのだという。キャリジョ研によれば、SNS利用者の場合、未来から現在に遡ってプランを設計する「バックキャスティング志向」が、働く女性全体に比べて高いのだという。

 3章では、働く女性に対する調査をもとに、働く女性を7つのクラスターに分けてそれぞれのクラスターの特徴や具体的なライフスタイルの説明がなされている。

 4章では、エッセイストの犬山紙子氏へのインタビューが収められている。本書のテーマである働く女性の生活や、ハラスメントの現在とその対処、「女子」を強調する社会のあり方、ロールモデルとしての女性の多様化について議論がなされている。

一行抜粋…女性の就業率も上昇の一途をたどり、女性が働くことは当たり前になってきました。そんな働く女性の中でも研究の対象を「子どもがいない女性」としたのは、じかんもキャリアの選択も、自分自身である程度好きなようにできる、自由をもっている女性たちが、どんなふうに考え、過ごしているのか、というところに関心があったからです(4頁)。

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