雪 雑記
目の前を横切っていく人たちの肩に、コートの裾に、フードに、雪の結晶が落ちる。
雪はまとわりついたその人の体温に溶けてすっかり消えてなくなる。
もともと存在なんてしてなかったみたいに。
雪が降っている。
車は降りしきる雪に押されることなく自分のペースで突き進んでいる。
昨日と今日の境界線はいつも曖昧だけど、雪が降っていると昨日と今日が別の場所にあることを理解することができる。
昨日と今日が別物であることと昨日と今日がつながっていることが同時に発生している毎日は、わたしの存在を現象としてそっけなく許してくれる。
雪が降っている。
手に落ちた瞬間にわたしの身体に溶けて、雪は消える。