かなしさ
第一印象がやたらと良すぎるせいで不必要な苦労が上乗せされていると思う。
今日、仕事の関係の人とたまたま街で遭遇した。
その人とはじめて会ったのは12月のことで、まあつまりは面接。
「いい雰囲気を持っている」と言われ、一緒に帰ろうと誘われ、自分のこれまでをすっかり話してくれた。
その後も少人数の仕事に初心者ながら抜擢されたり、いいポジションが回ってきたりとわかりやすく気に入られていた。
そう、このままいっていれば。
このままいっていればわたしの人生はいつだってもう少し楽なのだ。
風向きが変わったのは1月の半ば。
突如インフルエンザに感染し、仕事を長期間休まなくてはいけなくなってしまった。
ただでさえ足りていない人手に合わせ、わたしに特別に回ってきている仕事、そのすべてを他の誰かに変わってもらわなくてはいけなくなった。
罵倒されたわけではなかった。お大事に、と心配してくれていた。
でも、元々「いい雰囲気を持っている」とかの抽象的な理由で信頼に値するかどうかを決めてしまう人だ。
言葉や時間を重ねて信頼を積み上げていくわけではなく、もっと強烈で奇跡みたいな合致を求めている人だ。
大事な時期に病気で倒れたわたしはおそらく、「縁がない」と判断された。
自分のことを好きな人の目とそうでない人の目は煌めきが違う。
身体の構造で言えば瞳孔が開いているとか、何か科学的根拠があるのかもしれないけれど、そういった教養が頭に入っていなくとも「あ、この人わたしを諦めたな」というのはわかってしまうものだ。
なんとか体調を戻して復帰した瞬間、わかってしまったのだ。
仕事は短期の現場だったから今日その人に会ったのは久しぶりのことだった。
「体調大丈夫?」
「まだちょっと咳は残ってるんですけど大丈夫です」
「そう、じゃあ、頑張ってね」
なんとなく、もうああやって言葉を交わすことはないだろうなと確信めいた予感がわたしを覆った。
あの時の、信頼すると言われて飛び上がるほどにうれしかった12月と同じ駅で。