【想像とは】 劇団おぼんろ「瓶詰めの海は寝室でリュズタンの歌を歌った」
新たな夏の風物詩、劇団おぼんろさんの、「瓶詰めの海は寝室でリュズタン歌を歌った」
ダブルキャストのミックスキャストというクレイジー且つゴージャスな試み。相手が変われば会話も変わる。それがまざまざと分かるのです。ライブって、凄い。
わたしは主人公が初演同様おじいちゃん版と、今回初試みのおばあちゃん版の2回観劇。性別が変わると意味合いからして変わる変わる。
ミックスキャストも、ラッコ役以外はどちらも見られた。
わたしは死んでからも、ちゃんと生きてきました。あなたを愛して
主人公がおばあちゃんになると、サンゴ姫の苦悩がグンと深くなる。ああ、そりゃ、生まれ変わりたくないと思うよな。ラストの「無理心中」しかないと思いこむよな。
告白は、同時にカミングアウトとなるのだから。
そんな思いを引き受けて、夢から覚めたお婆ちゃんトノキヨは、希望の中の悲しみ比重が高かった。
ラストシーン。お婆ちゃんバージョンの時だけ、最後にワカメボーイが、赤いランドセルが2つ並ぶように入れ替えてあげるの、尊い。
おじいちゃんトノキヨには、吹っ切れたような前向きさがあった。おじいちゃんトノキヨは、きっと近々海へ行くだろう。心にみんなを抱いて。
お婆ちゃんは、いつかは海へ行くだろうが、まだ時間がかかりそうだった。整理するものが多いから。
もう2度と海へ行けなくてもいいのです。どこかに海があるということが、希望になるのです。
時間はかかるかも知れないけれど、海は、きっと、そこにある。もし、お婆ちゃんが行けなかったとしても、それで希望が失われるわけじゃない。どこかにあると思えるだけでも、いいのだから。
想像は今を輝かせるためにある
何も思いつけないと思い込んではいないだろうか。自分には無理だと、自分に勝手に呪いをかけていないだろうか。
最後の30分、ずっと泣きっぱなし。
主役以外のダブルキャストの違いを一言メモして終わりにしたい。
クラゲ
・末原さんの方のクラゲは、繊細。いじめられっこなんだろうな。
・橋本さんの方は、天真爛漫。身体能力と心の軽やかさが一致していてびっくり。(対空時間、ながっ!)だから、トノキヨが不幸だと気づいた時の影の色が一段と深い。のたうち回る感じがヒリヒリした。
ワカメボーイ
髙橋倫平さんのワカメは、へなちょこ。絶対暴走族なれなさそう。
日向野さんは、ガチの族。確実にお父ちゃんの血を継いでいそう。
サンゴ姫
恋する相手の性別が変わっているから、同じトラックにもはや思えないくらい、印象が違った。
そして、今回初登場の捲り子ちゃん。彼女たちにも一人一人性格があって、皆、人間たちとの対峙の仕方が違っていた。味方している人、無関心な人、見守っている人。しなやかな腹筋の美しさにもうっとりした。
いい夢だったな。
前回はこちら。
明日も良い日に。