見出し画像

色なら来世に

うつらうつらした。

ピンクのビニールテープをドアノブやテーブルの脚や棚などに結び付けて簡易の開かずの間を作る。果てしない宇宙と向かい合いながら空のペットボトルと二口分くらい残された水の入ったペットボトルが仲良く並んで窓際に立ってる。冷房が苦手なので扇風機を回している。時折、シャツが揺れる。誰かが着たみたいに膨らむ。もしかしたら本当に誰かが来ているのかも知れない。冷んやりする。
好きな本と漫画だけを選りすぐった本棚の上には自分だけの小さな祭壇があって、モランとスノードームとキャラメルが入っていた可愛い空き缶と綺麗なオレガノが咲いている。枯れることを忘れたまま。

三親等くらいの知らない街に強い風が吹いた。「お医者さんは居ませんか?」と咲いている向日葵を正しく見殺した。鏡の中には日曜日があって遺書が書かれている。精神の小部屋のポルターガイストが文字となって踊ってるからツイッターを騒がしくしててごめんなさいと常に思う。開くといつも誰かいて何となく歓迎されているような勘違いをしてしまう。自分の文章とやらは他人の目にどう映っているのだろうか。

キーボードをウィジャ盤にして降霊術をしている。古めかしいSCSIから受信される思念が呪いに変わる。赤く塗って青く塗ったものが紫になるとは限らない。現実もそういうこと。ごめんね、生きてて。生きてて、ごめん。統治され倒置される静止した生死。その義務と価値観。

手垢まみれの死にたいをそれでもみんなのものにはしない見えないルールを。

たったひとりだけは気付くかもしれない暗号ネームをリミナルに隠す。逆さに名前を振って素晴らしい晩年になる祭壇。

リズムの中で奇妙にうねる語るべきでない言葉。
数が足りない、数が合わない。
もう
誰も 誰も
      いない
そこは 底は そこはかとない 悪夢。
無為に無意。
無意識に不機嫌を装え、無意味にしてゆく、済し崩しに誰の眼にも耳にも不愉快な忘れた振りをして置いて来た。
その実、息を潜め、してないヘッドフォンから大音量で流れ出る膨れ上がるぬらっとしたモノものの隠されたメッセージ。
折り合わない突然の最終回のような雰囲気。
飲み込まれる、知らない、シラナイ、しらない、知らない、それじゃただの……。
シラシラ ないない。

はじめから何も無かったことにして。
迂闊なメモをこれ見よがしに置く癖。
嫌いな言葉、ざらついた空気、誰とも会話しない日常、ルール無用のルール。
独り言を言い尽くした。
仕方なくハミングをする。

それは、うれしいからじゃない。

球体色、四角色、三角色。
未だ見ぬ色ならあるから。
来世は君の知らない色に。

昨日も、今日も、明日も、明後日も、その先も。
永遠は永遠に見つからない。
永遠だけが永遠に見つけられない。
たぶん。

魔の魔、身の身、無の無、目の目、喪の喪、す。

あっ、
そうそう、
忘れるところでした。
ところで、
私は、
元気です。