続報:山形 大沼百貨店のその後④ ~ 割と悲しい現実
前回で終わるつもりだったのですが、何故だか気になってしまい、再び大沼百貨店のその後について書くことにしましたw
元従業員の方からも読んでいるとメッセージいただき、不思議な思い入れが本件に生じてしまったようです。
大沼倒産から1か月
いずれも有料記事なので、ポイントを抜粋します。
■不動産の跡地活用
地元商店街では「大沼がなくなったことで再開発が進む」と期待感が膨らんでいる。
関係者によると、大沼跡地を巡っては東京の複数の不動産会社から商業施設として一部を再開したいとの打診が来ているという。ただ、現在の建物を活用するには多額の改修費が必要で、「家賃がタダでも入るところはない」とされる。売却するにしても破産管財人や金融機関との調整が必要で、一筋縄にはいかない。
周辺ではマンション建設が相次ぐ。2月に近くでマンションが完成したばかりの穴吹工務店は「跡地利用には注目している」(東北支店)としている。
■倒産の背景にある消費の変化
隣接する仙台市までは高速バスで1時間ちょっと。「夫のスーツや自分の婦人服など高額品は仙台の百貨店で買っている」という市民は多い。
仙台の藤崎、仙台三越は山形にサテライト店舗を出店。大沼のシェアを奪っていた。(中略)(倒産によって生じた)大沼の遺産、70億円消費を取り込む好機に見えるが、両店は慎重だ。藤崎の常務営業本部長は(中略)「家賃をさらに払って成り立つのかどうか。リアルの店を広げる時代ではない」と言い切る。
ある国内証券アナリストは大沼の破綻について、「70億円の売り上げはたまたま維持されていたはかないもの。ネット時代にはすぐに消えてなくなる」と指摘。
割と悲しい現実(涙)
この記事は元従業員の方も読まれているので、悲しい現実なのですが、二行で関係者のコメントをまとめてしまうと以下になります
①大沼が営業を続けた場合の価値より跡地不動産の方に関心が集まっていた
②競合の仙台の百貨店が出店しないほど、山形市内のリアル店舗の魅力は薄れている
①については
「営業を続ける価値」 < 「解散して跡地不動産を売った時の価値」
と周囲から見られていたということでしょう。
専門用語では「継続価値」と「解散価値」と呼んだりします。
元地上げ屋のオッサンに教えてもらいましたが、東京だと、
「工場を続けるより、売ってマンションにした方がいい」と町工場が結構な数、タワマンに変貌しています。
この辺りは第一回でまとめた生き残り策「複合ビルのテナントとして生き残る」とも重なります。
②については
第二回でまとめた創業家出身の児玉社長の楽観「山形から仙台に買い物に行くのは中央線二本分の乗客にすぎない」は見事に外れていたということです。
そして、潔く退くこともできず、泥沼に突き進んでしまった経緯は第三回で書いたとおりです。また、その後出てきた「幻の破産」に関する記事について第五回を書いています。
今回の「コロナ問題」でこれから経営の悪化する企業、倒産も増えるでしょうが、「傾く会社に限って人間関係がやたらこじれる」のも現実であり、伝統とかメンツに固執せず、「こじれる前に決断する」ことが大切です。
明日無くなってどれだけの人が困るか
明日その会社が無くなってどれだけの人が困るか
以前、ゲームセンターの再生案件の相談が有った際、事業的にもタイミング的にも厳しいので投資は見送りました。その際に経験豊富なある方に言われた言葉です。
そのゲームセンターが無くなっても、明日から子供たちはスマホゲームすんじゃねえの?もっと社会的に意義のある会社を救うべきじゃないか?
これも指摘されて確かにと思いました。
経営とは、「明日無くなったらみんなが困る存在」に会社を作り変えていく仕事なのかもしれません。
大沼は、変わり切れず、いつしか「明日無くなって困る人」が減ってしまったのだと思います。
民事再生した後の危機的な状況でも仕事のやり方を変えたくない社員が多い会社もあります。私も実際にやってきて痛感しますが、危機が起きる前にやり方を変える難しさも感じます。そこを乗り越えてこそ再生なのでしょう。
■地元紙の役割
今回、地元紙の一部が大沼の倒産を受け、「多少値段が高くても地元の企業でものを買おう」と呼びかけていたのは残念です。
そんな呼びかけで地元企業に買い物に行く人はいません。
普通にイオンか仙台に買い物にいくか、アマゾンで買うでしょう。
むしろ発信すべきは、
「なぜ変われなかったのか」「地元企業は何を学ぶか」でしょう。
そして、日経新聞他全国紙が当たり前に報じている山形銀行の役員再任について一部投資家が反対していること等は事実として報道すべきでしょうし、メインバンクとしての対応が適切だったかの検証も書くべきだと思います。
全国紙が掘り下げない地元のニュースを、地元紙が深く掘り下げてほしいと思います。地方の衰退は、きっと「ソンタク」から始まるのだと、京都の件を見て思います。
さて、大沼の話はここまでにして、倒産がこれから増えることを踏まえ、以下の記事に関連するコンテンツを充実させていきます。
倒産するとどんな生活になるのか?なぜ中小企業の社長の倒産と夜逃げが結びつくのか?どうやって親が自己破産した子供はサバイバルするのか?等です。
あと、なぜかこのアカウントは学生に読まれているらしいので、就活生向けに「投資家目線の会社選び」も書こうかなと考えています。
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