水を止められたこと、ありますか?その3~銭湯編~
☆これまでのお話☆
お風呂場の奥から謎のシャー音がし、調べてもらうために水を止められたみずたま家。
シャワーの止水栓のパッキンの経年劣化で水漏れをしていたことが判明したので、パッキンを交換するまではシャワーは使えなくなってしまいました。
更に詳しい経緯はコチラ↓
その銭湯は細い路地にあった。
こんなところに銭湯が…
銭湯のある建物を見上げる。
さすがに煙突はなかった。
建物の前まで来ると…ほんのり石鹸のにおい。
あ、幼き日にかいだ匂いと同じだ。
自然とノスタルジーが沸き上がる。
”ゆ”と書かれた白地に紺色の文字で書かれたのれんは、清潔感があって見た目にも清々しい。
入口のところにある看板には
大人520円 中人 200円 小人 100円
と書かれていた。
スーパー銭湯でもない、最新設備が整った昨今流行りのサウナでもない、昔ながらのザ・銭湯。
小さい時に銭湯に連れて行ってもらったことは幾度となくあるし
スーパー銭湯にも何度か行ったこともあるけれど、
昔ながらの銭湯に自分でお金を払って入るのは大人になってから初めてだ。
ドキドキしながらのれんをくぐる。
さて、これどうやってお金を払うの?
まさか電子マネーかな~?
そうだったらちょっと風情がないなあ。
などと思いながら、まずは靴を下駄箱に預ける。
鍵は木札になっているところが情緒があってよい。
さて、お金は…
おぼろげな昔の記憶だけど「時間ですよ」という銭湯を舞台としたドラマでは
番頭さんにお金をお支払いしていなかったか?
番頭さんが男湯と女湯の間の高いところに座っていらっしゃって・・・
ドアを開けると、そこには妙齢のおねえさん(推定80代後半?)がブースのような場所にいらした。
全然「時間ですよ」の感じではない。そりゃそうか。時代は進んでいるのだ。
「大人3人です。」
と私が言うとすぐさま
「1560円です」
と返ってくる。
計算が早い。
どうやら現金オンリーらしくて、ちょっとホッとした。
ここで電子マネーも大丈夫です、といわれたらその瞬間に「いとをかし」ではなくなってしまうもの。
細かいお金がなくて5000円を出すと
「はい、3440円ね。」
とおつりをくれた。
レジも打たずにすぐにおつりをもらった。
計算の早さに感心してしまう。
お金を支払い終えて、早速私とお嬢は女湯へ。
2さんにいってらっしゃい、ごゆっくりと言って別れた。
さっきの入口ののれんとは違い、女湯ののれんは、くっきりとした真夏の空を思わせるような青い地に赤で女湯と書いてあり、目にも鮮やかだ。嫌でも気持ちが高揚してくる。
旅先で大浴場に入る時もそうだが、こののれんをくぐる時が、どんなお風呂だろう?という期待が一番高まる時ではないか?
ワクワクしながらのれんをくぐると、こじんまりとした脱衣所があらわれる。
ロッカーが30ぐらいはあるだろうか…
そこには地元のおばあちゃんたちか三人ほどいて、井戸端会議ならぬ、風呂端会議をしていた。
「○○さん、お久しぶり~!最近見かけなかったねえ。今日はごはん食べてから来たの?」
「うん、食べてきた、食べてきた。孫がしばらく来ててさあ、もう疲れちゃったよ。」
「そんなこと言ってー。本当はさびしいんでしょう?」
そんなに広くないスペースなので否が応にも耳に入ってしまう。
私もおばあちゃんになったら、友達とここでこういう会話をしたりするのかしら?などと想像する。
それも悪くない気がした。
カランコロン…
桶の心地よい音に誘われて、早速中に入ってみる。
熱い蒸気がモワッと体を包み込む。
お、いいね。空いてる。空いてる。
しかも桶が懐かしの黄色いケロリン~!
そしてああ、富士山の絵は・・・ない。
残念だなあ。
中には数人のおばあちゃんしかいなかった。近くのシャワーにお嬢と二人、陣取る。
銭湯には大きなボトルのリンスインシャンプーもボディソープもあったけど、今日はテンションを上げるために、美容院でいただいた高級シャンプーの試供品を持ってきた。
洗いながらも、心は湯舟の方に向かっていたので気持ちもそぞろになる。
ササっと一通り洗い終えると早速お嬢と二人浴槽へ向かい、
そろりと足を片方だけ踏み入れた。
あ、熱っつ!!!
家で入っているお風呂よりずっと熱い。
思わず一歩入れていた足を浴槽から出してしまった。
足が真っ赤だ💦
お嬢は熱いー!と言いながらも、ジェットバスに体をゆだね、ゆらゆらしながら肩まで入っている。
「ママも早くおいでよ!これ気持ちいいよ!」
いや行きたいんだが、行けないのよ。熱すぎて。
しかしここで入らなければ負けた気がする。
食べ放題ビュッフェに行ってサラダのきゅうりしか食べないような人になってしまう。
と、変な闘争心がわいてきて、思い切ってザブンと入る。
あっつー(*_*)!!!
いや、私は負けない!
絶対ジェットバスまでたどりつく。
お嬢を見ると違うジェットバスにも浸かって「気持ちいいー」などと喜んでくるくる回っている。
そんな彼女を横目に、私はチリチリするお湯をかきわけ、どうにかジェットバスまでたどりついた。
ぼこぼこと次から次へと空気が湧き出すお湯にそおっと足を踏み入れる。
あっつー(*_*)!!!(二回目)
予想はしてたけどさ、泡がぼこぼこしていて熱さ倍増なのよ!
どうにかこうにかジェットバスに入ったものの、熱すぎてものの1分もしないうちにギブアップしそうになった。
そのとき。
私の視界に
電気風呂
という文字が見えた。
電気風呂???
私が今入っている地獄の窯のようなぼこぼこジェットバスからすると、その電気風呂は一見穏やかそうに見えた。
熱くなさそうに見えた。
「ちょっとお嬢、そこの電気風呂、入ってみてよ?」
お嬢に毒見、ならぬ先発隊に行かせようと思った。
「えー、やだ。」
「いいじゃんー。」
「やだー。」
この掛け合いをしている間にも私はお湯の熱さにHPをかなり消費している。そろそろケアルラ、もしくはホイミをしてくれないと、銭湯不能になってしまう。銭湯だけに。
ええい、仕方ない!
私が行っちゃる!
なかなか行ってくれないお嬢にしびれを切らして、私は地獄窯というジェットバスから出て
電気風呂に一歩足を踏み入れた。
ピリピリピリッ!
い、い、いったぁぁぁいー!!!(*_*)
穏やかそうに見えた電気風呂は、高圧電流が流れているんじゃないかと思うくらいのピリピリ具合だ。(あくまで個人の感想です。)
電気風呂、全然穏やかじゃなかった!
お嬢は「ほうらやっぱり」というような顔をしてクスクス笑っている。
すぐに足を引っ込めて、撤退した。
しかしなんということであろう。
ジェットバスのぼこぼこと、電気風呂のピリピリで耐性がついたのか
もう普通の熱いお湯にはかなり慣れてきて
なんなら肩まで入れるぐらいになってきた。
さっきまでの「あっつー!」が嘘のよう。
気持ち、いい・・・かも?
ほぉぉぉっと、ジェットバスでもない、電気風呂でもないノーマルゾーンでゆっくりお湯につかった。
「あんまり入っていると今度はのぼせるよ。」
と先に出たお嬢に言われて
「そうだね。あとちょっと、と思うぐらいで出た方がいいね」
と言ってちょっと心残りしながらお風呂を上がった。
のれんをかきわけて女湯を出ると、そこにはもう先に出た2さんが座って待っていて
「待った?」
と聞くと
「いや、今出たとこ。」
と言ったので、彼もお風呂でのんびりしてきたことがうかがえた。
「なんか飲もうかー?」
とお風呂上りのお楽しみ、と思って飲み物を見てみたが
残念ながら瓶入り牛乳やコーヒー牛乳、フルーツ牛乳は見当たらなくて
仕方なく自販機でそれぞれ飲み物を買い、銭湯を後にした。
お風呂上りのほてった体に夜風が気持ちいい。
お湯はとても熱かったけれどそれは最初だけで、慣れたらクセになりそうなお湯加減だった。
実際この日、私はプールに入った後のような脱力感があり、普段よりずっとぐっすり眠れた。
もしかしたらあの電気風呂が効いたのかな?(笑)
三人でお風呂グッズを手に濡れた髪で歩く夜の街も非日常な感じがして、なかなかよかった。
きっと今日のこの出来事はずっと忘れないだろう。
なんとなくそう思った。