一行怪談 『人間』
最近一行怪談という本を読み、感銘を受けましたので、フォーマットをお借りして私も書いてみることにしました。
村に唯一ある古い井戸は、ある日を境に誰にも使われなくなった。
かつて拷問に使われていたという部屋から今日も、0時を伝える音が届いた。
新卒の私は、肉付きが良いからという理由で食肉工場に配属された。
その村では最長老の老婆が牛を一頭丸呑みするという伝統があるが、村民は誰もその不可能性について言及しない。
世界で一番愛していた人が、たった一晩で、世界で一番憎んでいる人に変わった。
雪がしんしんと降っていることと、その男の体が冷え切っていることは全く関係がない。
故人の日記帳にしきりにある女の名前が連ねられているが、そんな女は存在しなかった。
人肉がアレルギーだったため、もう一度食べると死ぬと診断されていた女が、今朝亡くなった。
呪われた日記帳と呼ばれているものの内容は私しか知らない。
階段の三段目から落ちて、死ぬとは私も思わなかった。
一人暮らしの寝室でふと人の気配を感じたため、試しに暗闇に飲みかけのペットボトルを投げてみると、空のペットボトルが投げ返された。
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