武田道志郎

小説家になろうにて『魔拳、狂ひて』という小説を連載しております。 魔拳、狂ひて:https://ncode.syosetu.com/n9628cb/ なろう:https://mypage.syosetu.com/428480/ Twitter:@doshirotakeda

武田道志郎

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  • 魔拳、狂ひて

    時は現代。科学の飛躍的な進歩により、人々は、太古より信じられてきた超常的な存在を否定するようになった。だがその陰では、妖怪や怨霊、超能力者といった『人智を超えた存在』が暗躍していた。  しかし、それらに対し真っ向から立ち向かい、次々に殴り倒す男が存在した。  彼の名は青木衛。謎の武術を習得し、小柄な体の内に特異な力を宿した、悪人面の退魔師。ある時は依頼人のため、またある時は己の目的のため、今日も彼は拳を振り上げる。果たして、彼は一体何者なのか?そして、多くの修羅場、死闘を乗り越えた先にある、彼の目的とは……?  唸れ拳脚! 巡れ抗体!  外道を討つべく、魔拳よ狂え! ※なろう版:https://ncode.syosetu.com/n9628cb/

最近の記事

【魔拳、狂ひて】爆発死惨 五

4      衛は公園のベンチに腰掛け、待ち合わせをしている相手を待っていた。  昼間だというのに、公園の敷地内には誰もいない。  その理由は、天気が曇り始めたからというのもあるかもしれない。  だがこの公園は、利用する者が元々少ない。  仮に天気が雲一つない晴天であったとしても、おそらく誰も立ち寄ってはいないであろう。  衛は、その人通りの少なさに目を付け、よくこの公園を待ち合わせ場所に選んでいた。  特に、今回衛を呼び出した二人組──彼らと会談を行う場合、その場所は必ずと

    • 【魔拳、狂ひて】爆発死惨 四

      3  ──某所マンション、二〇三号室。  その玄関の扉を衛が開くと、中から味噌汁の芳醇な香りが漂ってきた。 「ただいま」 「おかえりなさーい!」  帰宅を告げる衛の言葉に、明るく無邪気な声が返って来る。  それからしばらくして、奥から幼い少女が駆け寄って来た。  ロールされた眩しい金髪に、綺麗に整った顔立ち。そして、エプロンの下でふわふわと揺れる、嫌みのない品の良さを感じさせるドレス。  西洋人形の妖怪にして、衛の助手──マリーであった。 「もうご飯出来てるわよ! 今日のお味

      • 【魔拳、狂ひて】爆発死惨 三

         両者は、そのまましばし睨み合った。  雄矢の構えは、左構えである。  腰を低く落とし、両腕の間を開き、拳を握っていた。  対する衛は、右構えであった。  開いた右掌を相手に向けてかざし、左手は丹田を隠すように配置している。  防御や反撃を主体とした闘い方をする際に、衛が最も用いる構えであった。  構えてからしばらくして── 「ふんっ!」  ──雄矢が動いた。  左正拳。  牽制の為に放った突きであったが、直撃すればそれだけで悶絶する程の威力を纏っていた。 「……!」  

        • 【魔拳、狂ひて】爆発死惨 二

          2  早朝──冷たく引き締まった空気に満ちた、寂れた神社の境内。  そこで、一人の男が鍛練に勤しんでいた。 「フンッ……!」  その男──青木衛は、短い呼気と共に、冲拳を放ち続けていた。  ただ闇雲に突き出すのではない。歩型の安定、丹田への意識、身体の連動、重心の配分、呼吸のタイミング、拳の軌道、勁力の伝達──様々な要素が上手く噛み合っているかを思考し、突くのである。  この数時間の間に放った拳打の数は、九百を優に超えている。  しかし、衛の様子からは、疲労の類は一切見られな

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        • 魔拳、狂ひて
          21本

        記事

          【魔拳、狂ひて】爆発死惨 一

          1              若い男女が、濃厚に唇を重ね合っていた。  時刻は午前四時を回っている。その上、ここは人目につかない路地裏の奥。見咎める者など、誰もいなかった。 「……っはぁ……ンっ……ふぅ……」  派手なドレスに身を包んだ女が、一度顔を離し、吐息を漏らす。  刃物のような美しさを持つ美女であった。  女の内面をそのまま形にしたような、美しい顔立ちであった。 「っ……へへ……」  男が顔を歪めて笑う。  顔立ちは整っているが、がらの悪そうな顔であった。  年は

          【魔拳、狂ひて】爆発死惨 一

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 八(完)

          8              静まり返った部屋の外から、雨音が流れ込んでいる。  雨の勢いは一向に衰えることはなく、地面や建物を打つ激しい音が聞こえていた。 「…………」  ソファーに座りながら、マリーは虚ろな表情を浮かべていた。  相変わらず、その瞳は何も写してはいなかった。 「…………」  その様子を、衛は背後から見つめていた。  気持ちの整理がつくまで、言葉を掛けず、そっと見守っていた。  ──君島宅を訪問した後、二人は衛のマンションへと帰宅した。  マリーはその

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 八(完)

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 七

          7           「ほう、東京から……。それはそれは、遠い所から遙々、お疲れ様で御座いました」  座敷に正座する、 皺と白髪を蓄えた男性。  その人物は挨拶をすると、恭しくお辞儀をした。  この家の家主にして、北村さつきのかつての担任教師、君島和久であった。 「いえ……こちらこそ、突然押し掛けてしまいまして、申し訳ございません」  衛の方も、丁寧にお辞儀をする。  それに倣い、隣に座るマリーも、黙ってお辞儀をした。  君島はそれを見て、嬉しそうに笑った。 「いやいや

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 七

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 六

          6            「フンフンフーン、フンフフーン♪」  上機嫌で鼻歌を歌うマリーと、いつも通りの仏頂面をぶらさげた衛。  二人は今、白浜第三小を後にし、君島の自宅へと向かっていた。  彼らが小学校を出発する際に、林田は車で送ろうかと申し出てくれた。  だが衛は、これ以上お世話になってしまっては申し訳ないと、丁重に断ったのである。  林田が書いてくれた地図によると、君島の家は、小学校から歩いて十五分ほどの場所にあるようであった。  幸い、外は曇り空であったが、まだ雨は

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 六

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 五

          5             白浜第三小学校の校長室。  衛とマリーは現在、校長室内のソファーに並んで座っていた。  机を挟んだ向かいのソファーには、白髪交じりで、厳めしい顔付きをした男性が鎮座している。  当然、林田校長であった。  厳格──林田と対面して、衛が最初に抱いた印象は、その二文字であった。 「青木衛と申します。ご多忙中、突然お邪魔して申し訳ありません」  衛が挨拶をし、林田に頭を下げる。 「ま、マリーです。こんにちはです」  その後に続き、マリーが挨拶をする。

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 五

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 四

          4          翌朝。  普段ならば、衛は朝食の前に軽いトレーニングを行うのだが、今日は休むことにした。  起床後、二人はまず顔を洗い、昨晩の残りのカレーを温め直し、簡単な朝食をとった。  それが終わると、食器を素早く洗い、書斎に置いてあるパソコンを起動させた。 「まずは、さっちゃんにつながる情報を探してみよう。さっちゃんのフルネームは分かるか?」  椅子に座った衛が、傍らのマリーに尋ねる。  洗濯してピカピカになったドレスをまとったマリーは、その問い掛けを受けて唸り

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 四

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 三

          3         その少女──マリーは、静まり返ったリビングのソファーの上で目を覚ました。 「ん……うう……」  自分は何故こんな所で寝ているのか。  そもそも、ここはどこなのか。  少女の記憶は若干混乱していた。 「気が付いたか」  唐突に声が掛けられる。  少女は、声のする方向に顔を向けた。  その可愛らしい顔が、恐怖で歪んだ。 「え──ぎゃあ!?」 「人のツラ見るなり『ぎゃあ』はねえだろ」  少女の視線の先──机を挟んだ向かいのソファーには、悪人面の青年が座ってい

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 三

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 二

          2          某所のマンション、二〇三号室。  その中にある和室で、一人の青年が座禅を組んでいた。 「…………」  退魔師、青木衛である。  白の練功用カンフーパンツに、黒のTシャツというシンプルな出で立ちであった。  顔には無数の汗の粒が浮いており、時折、線を描くように首元へと流れていく。  凶悪な妖怪すら怖れる彼の目は今、静かに閉じられている。  彼の規則的な呼吸音のみが、和室の中に響いていた。  衛は現在、自身の気を練り高める、仙術の鍛練法を行っていた。  彼

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 二

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 一

          1  ──……マリー……マリー……──。  声が聞こえる。  女の子の明るい声が、あたしを呼んでいる。  その声を聞いて、あたしの心臓がトクンと高鳴った。  あたしの大好きな女の子。  あたしの大好きなお友達。  あの子が呼んでいる。  眠ってる場合じゃない。  眠ってなんかいられない。  今日もあの子に会いに行かなくっちゃ。  ──眠りから目覚めると、目の前に、お日様みたいに笑っている女の子がいた。  女の子は、大好きなママのまねをするように、あたしに優しく声を掛けた

          【魔拳、狂ひて】西洋人形の電話 一

          【魔拳、狂ひて】構え太刀 八(完)

          「……ッ」  ──空気が張りつめている。  双方が発する殺気が、辺りに充満していた。  衛は、構えたまま全く動かない。  三兄弟もまた、その場に佇んだまま、全く動かなかった。  ──否。一人だけ、微かな動きを見せる者がいた。  剣次郎である。  彼は今、全身をぶるぶると震わせていた。  恐怖から来る震えでもなければ、武者震いでもない。  怒りから来る震えであった。  衛の挑発により、剣次郎の腸は熱く煮えたぎり、爆発寸前であった。 「……こンの……クソガキがァ……」  剣次

          【魔拳、狂ひて】構え太刀 八(完)

          【魔拳、狂ひて】構え太刀 七

          8  三兄弟が渋谷で起こした惨劇から、今日で十日が経過していた。  時刻は丑三つ時。薄暗い闇夜に、鳥や虫の鳴き声が騒がしく木霊していた。         「ああああああ退屈だな畜生ォ! 何で退魔師が誰も来ねェんだよ!!」 「待てども待てども現れん! 退魔師は腰抜けしかおらんのか!!」 「……騒がしいぞお前達。少し静かにしたらどうだ」  子供のように癇癪を起こす剣次郎と剣三郎を、剣一郎が落ち着いた声でたしなめた。  彼らは今、とある山奥にある空き地に潜伏していた。  この十日

          【魔拳、狂ひて】構え太刀 七

          【魔拳、狂ひて】構え太刀 六

          7 「──あああああああああああああああああッ!!」  己を苛む悪夢から逃れるように、斉藤正弘は絶叫を上げながら、ベッドから跳ね起きた。  両目を見開き、全身の毛穴からは、べっとりとした嫌な汗が噴き出していた。 「はぁ……はぁ……っ」  荒く息をしながら、ゆっくりと目を閉じる。  平静を取り戻すのを待ってから、おもむろに窓の外を見た。  外はいつの間にか、土砂降りの雨が降り注いでいた。  時折雷鳴が轟き、薄暗い景色を照らしている。  風も吹き荒んでおり、開けっ放しになって

          【魔拳、狂ひて】構え太刀 六