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<ありがとう 和歌山静子さん①>子どもたちの心に届けたい――紙芝居


和歌山静子さん (2022年インタビューにて)

先日、私たちのもとに和歌山静子さんがご逝去されたという悲しいニュースが届きました。
83年の生涯の中で、多くの絵本、紙芝居を手がけられました。
心よりご冥福をお祈りいたします。

小学校の入学式でもらった12色のクレヨンから、私の絵を描く人生は始まりました。
来年80歳になりますが、まさか絵を描くことがここまで続くなんて、夢にも思っていませんでした。

「母のひろば」(2019年10月童心社発行)より

25作の書籍と、50作の紙芝居。
童心社から出版された和歌山さんの作品から、今回は紙芝居についてご紹介します。

和歌山さんは、紙芝居の制作についてこう書いています。

私は紙芝居の仕事が大変好きです。
私が好きという理由は、他の仕事とくらべた場合のことで、ひとことでいえば、語り手をとおしてなまに子どもたちにふれる絵をかけるからだと思います。本当にその紙芝居がおもしろければ大きな声で声援をおくったり、拍手をしてくれます。そんなふうに私の仕事が、複数の子どもたちに、同時に接するというところに、なんともいえない不安のようなものが常にありますが、その反面張り合いも感じます。

「母のひろば」(1975年1月童心社発行)より 一部抜粋

数ある紙芝居作品の中で、とっておきの1作として和歌山さんがあげたのは『こねこのしろちゃん』でした。

『こねこのしろちゃん』(脚本・堀尾青史 絵・和歌山静子)

おかあさんやほかのきょうだいたちはまっくろなのに、しろちゃんだけはまっしろ。
自分もまっくろになりたいとがんばるしろちゃんの前にあらわれたのは、まっしろでとてもりっぱなお父さん!

この作品だけは、すらすらとかけたという思い出しか残っていないのです。ああしよう、こうしようと工夫することも、絵で勝負しようと意気込むこともなかったように思います。苦労した記憶がないのです。
ただ猫が好きだという思いそのままに、しろねこちゃんを描くだけでした。
そうした素直さが、見る人の心に、すーっと入っていってくれたのではないか、そう思っています。

「母のひろば」(2019年10月童心社発行)より

『こねこのしろちゃん』を観ると、自分が自分であることが誇らしく、うれしい気持ちになります。
1983年の刊行以来、今もなお愛されつづけています。

和歌山静子さんは、高橋五山賞を受賞した『みみをすませて』(2013年)や、『ころん こっつんこ』(2018年)をはじめ、民話紙芝居からあかちゃん紙芝居まで、じつに幅広い作品を生み出しました。

『みみをすませて』(脚本/絵・和歌山静子)
『ころん こっつんこ』(脚本・こがようこ 絵・和歌山静子)

また、紙芝居の創作だけにはとどまらず、海外、特に中国へ紙芝居を広める活動にも精力的に取り組みました。

みずから足を運んで演じたり、紙芝居についての講座を開催したり……。
中国の子どもたちも、日本の子どもたちと同じように紙芝居を心から楽しんでいることを実感し、文化交流が進むことを願っていました。

そんな和歌山静子さんが最後に描いた作品もまた、紙芝居でした。
こがようこさんが脚本を手がけた『おばけの ぷーちゃん』です。

ぷーちゃんが海の中でいろいろなおともだちに出会うすがたが、なんとも愛らしく描かれています。

和歌山静子さんの力強くあたたかなスミ色の線で描かれる、紙芝居の絵。
これからも子どもたちに愛されつづけることでしょう。

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